魔法ーmagicー
「さあ、拓馬君あれを倒してごらん!」
そういって彼は街中にいるカメ型のクラミティを指した。
僕らは少し上から眺めていた。
そのクラミティは二人のことを食べようとしていた、僕はそれを阻止しようとおもってのだが今現在飛ぶことしかできないのだ。
さてどうしようと僕は頭を抱え悩んでいた。
「拓馬君、早くしないと彼女らが病んじゃうし君もクラミティになってしまうよ」
「わかってるよ…でも僕今魔法つかえないから…」
そう、彼曰くクラミティに心を食べられると病んでしまうのだ。
世間のひとは大体が心を食われ、気づかぬうちに病んでしまうそうだ。クラミティの生息率はGDPを見たらわかるとおり日本はかなり高いのだ。
「まあとりあえず行きなよっ!」
そういうとみつは僕をクラミティのほうに蹴り飛ばした。
思ったより強くて僕は5秒くらいでそこまでの地点に到着した。ブレーキも聞くことなくきれいにクラミティに突撃した。
何とかカップルには被害が出なかった。しかし油断している暇はない。
次の標的は僕に変わった。
そいつは見た目以上に早かった。
一瞬で甲羅の中に体を詰め込み、その勢いで回転を始めた。
幸いなことに病んでいる人間にしか被害がないため人にあたっても透けるだけである、街の建物なども同じように僕らから見たらそれはクラミティにとってゲームでいう壊すことのできないオブジェクトのようだった。
そもそも彼らの目的はなになのだろうか。
人類滅亡?いやそれはない彼らは人の心を食べているだけだ。ただ病ませてどうするのだろうか。
多分そんなことを考えていると哲学的要素がからんでくると思うので今はそれをやめた。
それよりどうしよう、そいつは素早い回転で僕のほうに突っ込んでくる。
よけれるのはよけれるのだがまったく魔法の使い方がわからない。
人によって使える魔法、武器が異なるためその能力、武器の種類さえ見当がつかない。
ふとみつのほうを見た、彼は相変わらずないつもの笑顔を浮かべこちらを見ていた。
本当にすごい奴だなと思った。
少し悔しくなり僕に火が付いた。
魔法が使えないのならここは物理だ。
いったん上昇した。おそらくカメは僕をめがけて突っ込んでくるはずだ。それを逆手に取ることにした。
予想通りクラミティは僕をめがけて突っ込んできた。
僕はひょいと交わし僕は素早く攻撃を入れた。
そう空中にいる間のスキを狙ったのだ。我ながらいい作戦だと思う。
が、しかしクラミティの様子を見た感じぴんぴんしている。
やはり魔法じゃないとだめなのか…?
僕はダメもとでみつの真似をした。
手をかざし、適当に言葉を唱えたが特に何も起きなかった。
ここは耐久戦だ!そのまま今さっきの戦略で戦い続けた。
戦い続けてはや2時間、いい加減自分の体に疲れが出始めた。汗びっしょりで少し息が乱れていた。
クラミティは相変わらず元気で疲れを見せることなくずっと僕に攻撃を仕掛けている。
いい加減目が回る。
その時ふとみつのことが気になった。彼はいったい今何をしているのだろう。
彼が今さっきまでいた位置を見た、しかしそこに姿はなかった。
攻撃をかわし、攻撃しつつみつを探した。
先ほどより長くあたりを見回した、やけに攻撃が遅いなとクラミティのほうを見た。
「みつ!」
クラミティはすでに僕のことを標的としてみてはいなかった。
居眠りをしふらふらし、下落していたみつのほうに素早く回転していた。
間に合わない!
せめて今僕ができる大声を発した。
がしかし距離が距離だ、聞こえるはずがない。
彼と会って早一週間、こんなに早く友達をなくしたくない。
今までに出したことのない速さで飛んだ、手を伸ばした。
「みつ!」
その時だった、軌跡が起きた。
まさかの手から氷が出てきたのだ。
確信したこれが僕の魔法なんだと!手のひらを見るといつの間にか手袋が形成されていた。
今のその勢いで何度も氷の刃を放った。
その氷のほとんどが命中した、思ったより氷は鋭くクラミティの厚い皮膚を引き裂いた。
ついでに甲羅も割った。
これであいつの回転技も出せない!
クラミティがひるんでいる間みつを拾い上げた。
心配して、一応生きているか首の脈を触って確かめた。
脈が元気に動いていたし、ちゃんとみつも暖かった。
一安心だった、少し泣きそうになってしまった。
「クスっ、あっははっは!」
いきなりみつが笑い出した。びっくりした。
「君は本当に面白いね!ちゃんと魔法つかえたじゃん!」
「ああ、おかげさまでな」
僕は腹が立ち思わず手を離した。
「うわっ、ち、ょっと!」
落ちていくみつを見送って僕はクラミティのほうに向かった。甲羅のないクラミティは攻撃手段を失った。
つまり今のクラミティは無力に等しい。
僕は大きな氷を作り上げ全身の力を込めて投げつけた。
逃げ隠れできないできないクラミティにちゃんと命中した。
クラミティは息絶え、姿を無数のハートに変えた。
ハートは元の持ち主のもとへとおとなしく帰って行った。