四百七十八話 仮に、そに機会があるなら
「ソウスケさんは、その……お幾つなのですか」
「ん? 歳か? 歳は十五だ。この歳になるまでちょっと事情があって世間に疎くてな。冒険者になってから……だいたい半年経ってるか? そんなものだ」
「まだ半年……私としては、数年は冒険者として活動しているのかと思いました」
「マジ? そんな雰囲気出てる?」
ソウスケの問いに三人は揃って頷いた。
その答えにソウスケは少々嬉しさを感じた。
(初めてお会いした時は本当にミレアナさんと一緒にパーティーを組んでいるのかと疑問に思いましたが、こうして話していると……本当に何歳なのか、そして本当に人族なのかと疑ってしまいます)
酔っ払いに絡まれた時、確かにソウスケはCランクの冒険者から助けてくれた。
なので実力者だという事は伺えるが、身に纏う雰囲気がそこら辺の子供とそこまで変わらなかった。
だが、こうして喋っているとその印象がガラリと変わる。
「俺ってさ、見た目が子供っぽいから嘗められることが多くてさ……まぁ、そういう相手はだいたいミレアナとザハークがぶっ飛ばしちゃんだけどな」
「えっ!? その……オーガの希少種に殴られたら、基本的に……し、死んでしまいませんか??」
カレア・ザリザスはまだザハークと出会っておらず、その正確な実力も解らない。
希少種と呼ばれるモンスター達はそう呼ばれるための理由がある。その理由が単純な強さでは無いこともある。
ただ……希少種は通常種と比べ、身体能力が劣っているということはあり得ない。
「あぁ~~~……ははっ、別に死にはしないよ。骨は何本か罅が入るか折れてるかもしれないけど、死ぬような怪我は思わないよ」
「そ、それでもそれほどの怪我は負うのですね」
「そうだなぁ……あっ、三人はダンジョンとか潜ったりするのか?」
「学園が管理しているダンジョンには度々潜っています」
「……凄いな。学園がダンジョンを管理しているのか」
ダンジョンが生み出す利益を理解しているソウスケは街や国ではなく、学園がダンジョンを管理しているという事に心底驚いた。
(いや、貴族の令嬢が通っている学園なんだからそりゃお偉いさんが運営に関わってるんだろうけど……普通に考えればその街の冒険者ギルドが管理するよな)
ソウスケの頭の中はそこそこ混乱していた。
「そのダンジョンは学園が設立した後に急に現れたらしいのです。だから学園を設立した側に疑いを掛けられることは無かったのです。その代わり責任もって管理しろと国から通達があったらしいですが」
「ダンジョンも十階層で終わる単純な構造です。油断した生徒が亡くなることは稀にありますが、しっかりと準備をし、無理なく進めばクリア出来るダンジョンです」
「十階層か……それなら確かに問題事はあまり起らなさそうだな。でも、もし学園以外のダンジョンに潜ることがあれば、十分に注意した方が良いぞ」
これはソウスケだけの意見ではなく、冒険者全体の意見と言える。
それ程までにダンジョンと言うのは探索する者の殆どが後に恐怖感を覚える。
ソウスケはまだ本当の恐怖こそ感じてはいないが、恐ろしい場所だというのは理解している。
「特に……あんまり一般的なダンジョンに慣れていない貴族の子供なんて糞共からすれば良いカモだ」
「その……実際に体験したことがある様な口ぶりですが……」
「俺は勿論貴族の子息じゃ無いぞ。でも、ある日貴族の子息と一緒にダンジョンに潜ってたんだよ。付き合いは短かったが、弟子みたいな存在だったからな。そんで、だいたいの貴族は金を持ってる訳だから良い装備を揃えている」
「その装備を、殺して奪うという事ですか」
三人の表情が一気に険しくなる。
自分達もその様な被害にあうかもしれないと思えば、気が気でない。
「男ならそれで終わりだろうな。ただ、三人みたいに女性が対象だと……それだけじゃ終わらない。ダンジョンは人の死体を食べてしまうから証拠が残らないんだよ。基本的にダンジョン内で起こる件は自己責任だからな」
「無法地帯……そういう認識で挑んだ方が良いという事ですか」
ソウスケが何を言いたいのかを理解した三人の表情は更に険しくなる。
三人も年頃の女性なので、同年代の男達がどういった視線を自分達に送っているのか良く解っている。
「挑む機会があるならな。仮に挑むなら……案内役としてその街で信用出来る冒険者を雇う事かな? まっ、人が何で動くかは解らないから自分達がダンジョン探索に慣れておくのが一番かもしれない」
人は何で動くのか、それを百パーセント読めることは不可能に近い。
後だしなんていくらでも出来るのだから。




