四百七十四話 それが悪いとは言わない
「はぁ……やっぱり地域によって生息しているモンスターは違いがあるんだな」
領主からの依頼を達成し、その他のモンスターも倒した四日目の初日。
移動速度が速いソウスケ達はルージュバードとバイドジャッカルを倒してからもモンスターと遭遇し、全て倒してしまう。
その夜、ソウスケは今日はあまり寝れそうに無いなと思い、夜の街……歓楽街へと繰り出した。
(別に飲もうとか思って無いけど……何となくあそこは悪くない雰囲気があるからな)
特に娼婦を抱くつもりも酒を呑むつもりも無い。
それでも人の欲望世界で一番溢れ出ている場所が、意外とソウスケは嫌いじゃ無かった。
(てか、やっぱりこういう場所歩いていたらそういう誘いは受けるよな。当たり前だけど)
まだまだ性欲盛んに見えるソウスケを店に誘うボーイや娼婦は多い。
しかし今夜は何故か娼婦を抱く気にはならないので全て断る。
(特に呑む訳でも抱くは訳でも無い。でも、こうのんびりと歩いているだけでも気分が良いんだよな)
丁度良い夜の散歩。
そう思っていると、ソウスケの視界に気になる喧騒が映る。
(片方は……酔っ払いだな。そんでもう片方は……なんでこんな場所にいるのか謎だが、助けた方が良さそうだな)
女性達を無理矢理誘うとしている酔っ払いの元へ向かい、体を掴もうとしている手を止める。
「おい、そこら辺にしといたらどうだ」
「あぁああ~~~……なんだクソガキィ~~、てめぇには用はねぇんだよ!!!」
「あっそ、でも俺はあるんだよ。だからとっと失せろ、酔っ払い」
突然現れたソウスケに戸惑う女性達。
ただ、自分達にしつこく迫ってきた酔っ払いを追っ払ってくれそうという希望が湧き、表情に安心感が出る。
「ガキが女の前だからって調子に乗ってんじゃねぇ~~ぞッ!!!!」
「その言葉が直ぐに返すよ、酔っ払いが目の前に襲いたいと思える女性がいるからって調子に乗ってんじゃねぇーよ」
ある程度の修羅場を潜り抜けてきたソウスケにとって目の前の酔っ払いどれだけ凄もうと、一ミリも恐怖感を感じない。
(酔っぱらうと思考力が落ちるって聞くけど……こりゃ重傷だな)
最近酒を呑み始めたソウスケは絶対に酔っぱらって失敗したくないと深く思った。
「おい、俺はCランクの冒険者だ。ぶっ潰されたくなかったらとっとと消えな」
その言葉通り、男はCランクの冒険者。
Cランクは冒険者にとって一人前といえる位置。そこまでたどり着けない冒険者もいる。
なのでそれを自慢するだけの実力が男には確かにある。
ただ、ソウスケからすればだから何だといった話。
男としてはCランクの冒険者というメンツもあって強気でいるが、そんなレッテルはソウスケに意味を為さない。
「だからなんだよ酔っ払い。この人達が嫌がってるんだからさっさと失せろよ」
そう言い返すとソウスケは男の腕を掴む力を強くする。
「なッ! ちょ、調子に乗んじゃ……がッ」
ソウスケの手を振りほどこうとする男だが、Cランクの冒険者程度の腕力ではソウスケの握力を振り払うことは出来ない。
「ふざ、けんなッ!!!!!」
今にも潰されそうな腕の痛みを我慢し、男は残っている手でソウスケに殴り掛かる。
だが、酔っぱらって男は自分より強いかもしれない冒険者に殴る準備が全く出来ておらず、身体強化系のスキルを一切使用していなかった。
(こいつ……いくら酔っぱらってるからって、ちょっと嘗め過ぎじゃないか? 同じ人族なんだから握力に激的差がある訳じゃ無いのに……まっ、そんだけ酔ってるってことか)
Cランクの酔っ払いパンチなどを食らってしまうソウスケでは無く、空いている片方の手でそのまま拳を掴んでしまう。
「はぁーーーー……あんたさ、嘗めずぎじゃねぇの」
「ぐ、あっ……が、わわわ悪かった。俺が悪かったから、だから離してくれ!!!!」
男は痛みに耐えきれず膝が崩れ、ソウスケにひれ伏す様な体勢になっていた。
そして自分の腕が全く動かず、拳を開放出来ない直面している現状をようやく把握した。
絶対に敵に回してはならない類の男が目の前にいる。
それを本能的に解かった男は恥もプライドも捨ててソウスケに手を離して欲しいと懇願する。
おそらく男の心が折れただろうと思ったソウスケは骨を折る前に男の望み通り手を離した。
「おい、酔っぱらうのが悪いとは言わないけど、人に迷惑掛けんな」
「わ、分かりました!!!」
そう返事すると男は千鳥足をなんとか動かいながら逃げていった。
そしてソウスケは酔っ払いから助けた女性達の方に顔を向ける。




