四百五十九話 謎が多い子供
店員にミリウスから勧められた酒を迷わず頼んだソウスケ。
(随分とあっさり頼んだわね。勿論飲みやすい部類のお酒で味も保証するけど……この子がどんな子なのか読めないわね)
本人は冒険者だと言っている。
ただ、ゼルートの見た目や年齢を考えれば金貨二枚をサラっと払える程、ランクが高いようには見えない。
だからと言って、貴族の子息に見えることいえば……それも否だ。
「お待たせしました」
店員が持ってきたボトルは既に空いており、それをミリウスがグラスに注いで行く。
「それじゃ、乾杯」
「乾杯」
グラスを軽く合わせ、ソウスケは人生で初めての酒を飲む。
「……おぉっ!? へぇ~~~……こんな感じなんだ」
酒が喉を通った瞬間、アルコールが徐々に頭の上に上がっていき、一瞬で顔が熱くなったかのように感じる。
「どうかしら、初めてのお酒の味は」
「なんというか……度数はあんまり高く無いからか飲みやすいけど、顔がじんわりと暖かくなった気がします」
「ふふ、私も初めてお酒を飲んだ時、同じような感覚を感じたわ」
ミリウスは今でこそそこら辺の酒豪以上に酒を飲むことが出来るが、初めからそれほど飲めた訳では無い。
「でも、慣れればこれぐらいのお酒じゃ酔うことは無くなるわ。人によってはある程度お酒に強くなっても、どんな度数のお酒でも酔いを感じる人もいるけどね」
「なるほど……それはそれで安上がりになりそうですね」
そう言いながらソウスケはもう一度グラスに口を付けて酒を飲む。
そして火照った顔にもう一度熱がやって来る。
(うん……確かに悪い感覚では無い。特にハマりそうという訳じゃ無いけど、ハマる人はハマってしまいそうだな。アルコール中毒者が出てしまうのも仕方が無いって話か)
人によっては一種の麻薬にもなりうる酒。
ただ、ソウスケは大量の酒を飲んだとしてもあまり酔わない様な感覚があった。
「冒険者ってやっぱり大変なの?」
「そうですねぇ……まぁ、覚えなければいけない事は多いですね。依頼を受けて成功して報酬を受け取っても、それを全て自由に使える訳では無いんで」
「あらそうなの?」
冒険者について殆ど知らない様な素振りをしているミリウスだが、実はある程度の事は知っていた。
理由は簡単で、過去に何度も冒険者の客と飲んだことがあるからだ。
「その得た報酬金額や魔石、その他の素材を売って手に入れたお金はパーティーの宿泊費や次の依頼を受けるための準備費、自分達の実力を上げる為に武器や防具、スキル書を買う経費……それらを引くとあんまり個人の資産としては残らないんですよ」
「そうなのねぇ~~~……それなら、あんまりこういった場所に来るお金も貯まらないんじゃないの?」
ミリウスは一般的な嬢とは違い、客を金生る木としか見ていない訳では無い。
あまりソウスケの様な若い子にはこういった場所に来るには早いと思っているし、溺れないで欲しいとも思っている。
だが、目の前にいる少年はそこら辺に転がっているルーキーとは訳が違う。
「俺は……まぁ、一緒にいる仲間が凄いんですよ。だから俺がそのサポートをして仲間が戦う事以外に意識を割かなくても良いようにする。必要経費に関しては自分の力でどうにか出来る事が多いんで」
前半は嘘だが、後半は事実。
モンスター、盗賊との戦闘になればソウスケもバリバリ戦いに参加する。
だが必要経費が殆ど自分の手で何とかしてしまうのは正しい。
魔力を回復し、傷を癒すポーションは自作で作ることが出来、新しい武器も自分の手で作ることが出来る。
宿泊費に関しては盗賊達が貯め込んでいたお金だけで十分に事足りる。
「あらそうなの、もしかいてソウスケ君が所属しているパーティーは結構有名なの?」
自身が住んでいるこの街の冒険者達ならばある程度知っているが、他の街に属する冒険者やパーティーの名はあまり知らない。
なのでソウスケもそういう分類に当てはまるのかとミリウスは思ったが……実際のところソウスケ達のパーティーはそこまで存在が広まってはいなかった。




