四百十一話 慣れたようで慣れてない
「……相変わらず酔いそうな空気だな、ここは。良い意味でだけど」
トーラスとの話し合いが終わり、その他の用事が終わったソウスケは男の夢が詰まった歓楽街へとやって来ていた。
酔っている人、男を誘惑する遊女、ホテルに入る男と女、懐が暖まって太っ腹なギャンブラー。
多くの欲が混ざった場所をソウスケは慣れた顔で目的地に向かって歩き続ける。
「ねぇ、僕。もうお酒は飲める?」
「飲めるけど、今日はちょっと用事があるから無理です。また今度来ます。んじゃ」
「約束だよぉ~~」
二十代前半で巨乳のスタイルそこそこの緩い服を着た女性に声を掛けられるソウスケだが、慣れた態度で躱して歩く。
(まだ今度と言ったが、別に酒はまだそんなに飲めないし……やっぱ無理だな)
自分の嘘にちょっと悩んでしまったが、即頭から切り離す。
以前のソウスケならあまり考えられない様子だが、流石にソウスケもこういった場所に何度も来れば慣れていく。
(というか、結構耐性が付いた気が……いや、そういう訳じゃ無いか)
ソウスケに完全に可愛さや美しさが飛び抜けた女性に対する耐性が付いた訳では無く、単純に下心がある相手には慣れたという話だった。
(別に冒険者の女性に対して妙にエロい姿にムラっとする事だってあるし。でも、嬢達にはなんとなく普通に接することが出来るようになったなぁ……我ながら感心感心)
ある程度の上に対しては耐性が出来たソウスケだが、それでも嬢の中でも格が違う女性にはやはり男の本能が刺激される。
「おっ、ようやく着いた。相変わらずピンクの匂いがプンプンするな」
目的の店を見つけたソウスケは一直線に店の中に入ろうとする。
そこで一人の警備員がソウスケに近付いてきた。
(あれ、もしかして一番最初と同じでこの店に入れるかどうか試される感じなのか?)
思わずポケットに手を突っ込んでアイテムボックスの中から白金貨を取り出そうとする。
しかしソウスケの予想とは違う対応を警備員はとった。
「あの、もしかしてソウスケさんでしょうか。もしかしてセルガーさんに御用でしょうか」
「え、あぁーーーー……そうです。ちょっとセルガーさんに用があって」
思っていたのと違った対応に戸惑いながらも、事実なのでなんとか肯定する。
「そうなんですね。少々お待ちください、伝えてきますんで。中に入って待っててください」
「分かりました」
外で立ちっぱなしで待つのも不審者に思われそうなので、ソウスケは中で待つことにした。
(……相変わらずのキャストだ。なんでこうも多くのジャンルのトップクラスを集められるのか……もしかしてセルガーさんって結構評判が良い人なのか?)
知り合いの嬢から手を振られ、それに返しながらもソウスケは警備員が来るのを待つ。
平静を装いながら。
(・・・・・・なんだろうな、言い方が悪いかもしれないけど品の違い? があるからドキドキするのか???)
店の嬢達のスペックの高さにポーカーフェイスは守れているが、頬がほんのり赤くなってしまう。
「お待たせしました、セルガーさんが一時間ぐらいなら大丈夫そうです」
「そうなんですか、わざわざありがとうございます。これ、少ないっすけど」
「ッ!!?? あ、ありがとうございましゅ!! ……ッ!!!!!!??????」
(か、噛んだ……も、もしかして多すぎてびっくりして噛んじゃったのか?? あーーーらら、嬢達も笑っちゃってるよ)
警備員の声はそこそこ大きく、嬢達の耳にもしっかりと入ってしまい、クスクスと小さく笑われてしまった。
その事実に少し恥ずかしく感じるも、警備員の男は予想外の臨時収入を得た嬉しさが上回っていた。
(流石に金貨一枚は高過ぎたか……日本円で考えると百万円だしな……やっぱ金銭感覚超麻痺ってるな俺)




