四百四話 無駄な懺悔
ミレアナの風矢とソウスケの風槍が盗賊団の村型アジトに降り注ぎ、阿鼻叫喚の状態となる。
「んじゃ、逃げる奴の狙撃を頼んだ」
「了解です」
「ザハーク、遠慮なくぶっ殺して構わない。ただ、出来れば体の原型は残しておいて欲しい」
「分かった、なるべく善処しよう」
確認を終えたソウスケとザハークはその場から勢いよく跳び、アジトの中心地へと着地する。
「さて、いきなりで悪いがお前らには死んでもらおうと思う。抵抗するのは勝手だが、逃がすつもりは無い」
完全に見下すようなセリフを吐くソウスケの見た目に盗賊達の怒りは一瞬で沸点を超えたが、その隣に立つザハークを見て徐々に冷静になっていく。
「安心しろ、なるべく一撃で終わらせてやる。寧ろ……逃げる方が辛いかもしれないぞ」
オーガ……でも無く、鬼人族に見えない異様な鬼。
しかし人の言葉を喋る以上、並みならぬ存在という事だけは理解出来た。
「もう一度言っておく、抵抗したければ遠慮なく抵抗してくれ。きっちり殺してやるから、な!」
少し前までヘラヘラとした表情から一変、表情こそ変わらないものの雰囲気が凶悪なものに変わった。
この時点で自分達が敵う様な存在では無いと本能的に解ってしまった盗賊は武器を捨ててダッシュで逃げる。
そんな仲間を呼び留めようとする盗賊を他の盗賊が止め、目の前の相手に集中するように伝える。
残った盗賊達の戦意が徐々に整っていく。
だが、ソウスケとザハークがそれをわざわざ待つ必要は無く、盗賊達の考えや心情を無視して襲い掛かる。
「嘗めんじゃねぇーーぞクソガキがーーーーーーッ!!!!!」
「言葉じゃ無くて実力で示せ、盗賊共!!!」
残った盗賊達の頭の中に逃げるという考えは既に消えており、一斉にソウスケとザハークに襲い掛かる。
「ギャーーーーーッ!!!???」
「ガハッ!!! な、んで……」
「ど、どっから降って来てんだよ!!!???」
「わ、悪かった、俺達が悪かったから止めて……」
ソウスケとザハーク達から逃げ出した盗賊達から多くの悲鳴が上がる。
中に自分の今までの行いを懺悔しようとする者もいるが、そんな事をする間も無く狙撃されてしまう。
二人と戦っている盗賊達は戦闘中にも拘わらず、僅かながらに意識がそちらに向いてしまった。
「おいおい、今の俺によそ見は良く無いぞ」
身体強化を蛇腹剣の能力を使用して重複発動しているソウスケを捉えられる盗賊はおらず、次々と盗賊達の首が、心臓が、胴体が斬り裂かれていく。
「ふむ……確かにある程度は強いのかもしれないが、俺の本気を相手にするにはまだまだ足りないな」
ザハークに向かって大剣や長槍に大斧、攻撃魔法が飛んでくるがそれを特に慌てることなく対処されてしまう。
そして赤い拳が、脚が体を砕いて抉って斬り裂く。水弾が、水槍が盗賊達をハチの巣にする。
三人が珍しい盗賊団と戦闘を始めてから五分も経たず、戦いの幕は下りた。
「……中々にマジで倒してたから相手がどれぐらい強いとか分からなかったけど、どうだった?」
「勿論個人差はあるが、やはり中々強かったのではないかと思うぞ。連携も取れていたし、一撃一撃の威力も悪くなった。一般的な冒険者では倒すのに苦労するだろう。今日ここで俺達が倒せておいて良かっただろう。冒険者の集団とここの盗賊団が戦えば、冒険者側に必ず死人が出ていたはずだ」
「そこまで強かったか。そういえば身体強化を二重で使っている俺の速さに反応した奴が数人だけいたな。もしかしたらそいつらがボスと幹部的な奴だったか?」
倒すのに数撃ほど必要だった相手を思い出し、ソウスケはその相手を鑑定で調べた。
「……あぁーーーー、こりゃ確かにそこそこ強い。冒険者のランクで言えばBはあるか。スキルのレベルも結構高い」
ザハークの考えも納得出来る程の強さを持っていた。
そしてソウスケが疑問に思っていた、何故アジトの形が村なのかも納得がいく。
(おそらくこの髭面のおっさんがボスだよな、ステータスに書いてあるし。この人の建築レベルが一番高い。他の盗賊達も何人か建築スキルを持ってる。だからここまでちゃんとした家を作れてたんだな)




