三百九十二話 俺達が全て貰う
男からミレアナの様の美女と一緒にパーティーを組んでいる事に対しての嫉妬、女からはミレアナだけを働かせて自分んは強力な従魔に守ってもらいながら街に引きこもっていると勘違いされて、ゴミを見る様な感情を向けられるソウスケ。
確かに居心地の悪い視線ではあるが、同業者からは普段からあまり良く思われていない事は知っていたので、気にせず周囲の会話に耳を澄ませていた。
「どうやらクイーンメタルスパイダーがいてもおかしく無い状況のようですね」
「みたいだな」
拾った会話の内容にはやはり討伐した、撃退した、逃げたなど色々とあるが、メタルスパイダーに襲われたという話が多い。
中にはメタルスパイダーの上異種に襲われたという話もある。
メタルナイトスパイダー。Cランクのモンスターであり、他の蜘蛛と違って刃による攻撃を得意とする。
八本の脚が全て武器であり、その脚による攻撃だけに注意していれば粘着性等はメタルスパイダーに多少劣るとはいえ、厄介な糸の餌食になる。
(ぶっちゃけどれぐらいの数がいるんだ? ダンジョンの中で遭遇した蜘蛛系のモンスターだってそこそこ大きかった。あんまり放置してたらもしかしたら鉱山から溢れ出す……なんて事があるかもな)
昆虫系のモンスターは他のモンスターの卵と比べて比較的孵化するまでの期間が短いので、決してソウスケの考えはあり得ない内容では無い。
「……魔石は欲しいが、あんまりそういった事を考えながら戦ってたら厄介な相手かもな」
「多数のメタルスパイダーに囲まれたらそうなるかもしれませんね」
迫る無数の粘着糸、そして脚全てが凶器。
(そんでメタルって言うぐらいだから生半可な斬撃や打撃は通用しない……それって接近戦タイプの冒険者にとってはマジで鬱陶しい相手だな)
「ミレアナ、明日の飯を食べたら直ぐに鉱山へ向かうぞ」
「分かりました」
夕食を食べ終わり、ギルドから二人が出ようとしたところで一つのパーティーがギルド内の冒険者に呼び掛ける。
後日、自分達と一緒に数が多くなったメタルスパイダーを一斉討伐しないかと。
呼び掛けたパーティーのランクはBであり、ギルドの中でも実力のある冒険者達。
最近数が多くなってきたメタルスパイダーに対して面倒、厄介、鬱陶しい、恐怖。それらの感情を抱えていた冒険者達はそのパーティーの提案に乗った。
そして討伐日は三日後、明日は各冒険者が何を出来るのかを確認し合って一緒に行動する面子を決め、二日後は各自必要な道具を揃える。
三日目に討伐を開始。
(随分とのんびりと時間を掛ける……と思うのは俺が有能なアイテムボックスを習得してるからだな)
何かあれば即座に動けるソウスケ達とは違い、今回冒険者達が決めた準備期間は妥当な時間。
「ミレアナ」
「分かっています、明日中に探し出して目的のクイーンメタルスパイダーとその他のメタルスパイダーに小異種の殲滅ですね」
「そういう事だ。今回立案したあのパーティーには悪いが……俺達が全て貰う」
ソウスケが呟いた一言は他の同業者の耳に入ることは無く、気合の入った冒険者達の声にかき消された。
脅威になるかもしれない多数メタルスパイダーを討伐する為
に朝から各自の技、魔法、多少の連帯を確認する為にギルドに集まる冒険者達。
その中にソウスケは勿論、ミレアナやザハークの姿は無い。
三人は朝食を食べ終えた後、直ぐに鉱山へと向かった。
しかし正面の入り口はギルド職員が二日後の討伐に合わせ、あまり鉱山内を刺激しないようにする為に、入るのをストップしている。
「そんな事だろうと思った」
「妥当な判断なのかもしれないが、鉱山内はメタルスパイダーだけが敵ではない。その他のモンスターを少しでも討伐しておいた方が良いと思うのだが」
「人とは上手くいけば自然と欲が出てしまうものです。それこそ鉱山内に刺激を与えないように、討伐当日の戦力をうっかり消してしまわない様にしたいのでしょう」
ミレアナの考えは正しく、今回の討伐を立案したパーティーもギルド側も討伐日までに戦力が減るような事態は避けたかった。
ザハークと同じ考えを持った冒険者や職員もいたが、戦力が減ってしまうかもしれないというリスクを考えて鉱山内には討伐当日まで鉱山に入る事の禁止に賛成。
「……まっ、俺達は偶々鉱山に入ってしまった」
「ですね。偶々入ってしまいました。なので問題はありません」
「そうだな。森に入り、鉱山の外側に偶々入り口を見つけてしまい、入ってしまった」
あくまで自分達はルールを破ってはいないという体で三人は森の中へと入って行った。




