三百五十六話 顔を駆けあがる
「俺にはまだどれ程価値があるのかいまひとつ解らないけど、セルガーの顔からして結構良い物なんだろうな」
先程セルガーから受け取ったワイン。
まだ酒類を飲んだ事が無いソウスケがいきなり飲める代物では無い。
間違いなくアルコールが頭に上り、頭がぐらぐらと揺れるように感じてしまう。
(俺が飲むにはまだ早いだろうけど、ミレアナやザハークなら飲めるか?)
ミレアナは元々食事中にほどほど程度に酒を飲んでおり、ザハークも酒に対して強い興味を持っていた。
「俺もこの世界の法律上は飲んでも問題無いんだから、少しづつ慣れていかないとな」
これから続くまだまだ長い人生。
酒を飲む事も一つの趣味になる。
宿へ戻ったソウスケはミレアナに既に蓋の空いたワイン瓶を渡す。
「どうしたんですかこのワインは?」
「ちょっと今日話した知り合い・・・・・・・というか商売相手? に新しいアイデアを出したらお礼にってくれたんだ。ザハークは飲んでも問題無さそうだから、半分だけ渡して来た。後の半分はミレアナにと思ってな」
「そ、そうですか。それは嬉しいですけど、これって中々お高いんじゃないですか?」
そこまで多くの酒を飲んで来た訳ではなくとも、匂いだけで一般的なワインなのかそれとも上物なのかが判断できる。
「さぁ? 鑑定してないからそれは解らんが、商売相手は自信満々で渡して来たからな。多分上物だと思うぞ」
ソウスケがセルガーに助言した内容は、元々ソウスケが考えた知識では無く、日本に存在していた情報なのでそれを売って金を儲けようとは考えていない。
しかしセルガーはソウスケに大恩を感じており、纏まった金が手に入ればソウスケのお陰で稼がせて貰った金額相応の礼をしようと考えている。
「それではソウスケさんも一緒に飲みましょう。おそらくそこまでアルコール度数が高い物では無いと思うので」
「そう、なのか? ・・・・・・・わかった。とりあえず飲んでみるとするよ」
アイテムボックスから二つのグラスを取り出し、ワインを注ぐ。
「んじゃ、乾杯」
「か、乾杯」
グラスに注がれている量が少量とはいえ、初めて飲むのでソウスケは身構えながらちょびっとだけ口に含み、ゆっくりと飲み込んだ。
「なんか、ほんのちょっとだけ葡萄の味がするけど、本当にちょっとだけでアルコールが殆どって感じがする。あと、こう・・・・・・・一気にアルコールが顔を駆けあがるような感覚がするんだが、これが普通なのか?」
「私も初めてお酒を飲んだ時はそんな感覚に襲われましたね。アルコールが体を侵食する様な感覚。とても懐かしいです。直ぐにはこの味に慣れませんでしたけど、だんだんと美味しく感じますよ」
「そういうものか」
もう一度ゆっくりとグラスを煽り、ほんの少しだけ口に含み、味を確認して飲み込む。
(・・・・・・・ほぼほぼ葡萄の味がしないな。それとやっぱり俺にはまだワインは早かったみたいだな。飲めることには飲めるが、何が美味しいのかいまいち解らん。ステーキと一緒に食べてるシーンを漫画で良く見たが、それだけで変わるものなのか?)
もう一口飲んでみるが、やはり味は変わらない。
しかしミレアナが言うように慣れだと思い、ビンが空になるまで二人は会話を続けた。
そして翌日、朝食を食べ終えた三人は早速街の外へと出て、目的の鉱山へと向かった。
「ソウスケさん、今回は強い相手と戦えると思うか?」
「そうだなぁ。その可能性が無いとは思えないが、あまり鉱山の中で暴れるのは良くないだろう」
「つまりモンスターが現れても、時間を掛けずに瞬殺しろってことで良いんだな」
「そういう事になるだろうな。ただ、鉱山に生息するモンスターって何となくだけど堅そうなイメージがあるんだよな」
ソウスケ達が以前戦った昆虫達の甲殻も一般的のモンスターと比べれば堅いが、岩系統のモンスターの皮膚はその堅さを上回る個体も多い。
(でも、ザハークの腕力なら問題無いか。俺とミレアナは隙間を狙って内部破壊をすれば良いだけだからな)




