二百七十七話おそらくそろそろ
ダンジョンから地上へ戻って来たソウスケ達。
時刻は既に夕食時を過ぎていたのでこの街に来てから泊まり続けている宿屋へ向かう。
宿の宿泊人数が限界まで達していなかったので、ソウスケとミレアナはある程度広い部屋をとる事が出来た。
「最終目標は定まっていますが、次にダンジョンへ潜る時までの予定はどう致しますか？」
「どうすると言ってもな・・・・・・休日はいつも通りに過ごそうと思う。各自やりたい事をやってのんびりと過ごす。体が鈍らない様に動くのは別に良いけど、あまりハードにするなよ。一応休日なんだから」
ソウスケとしては二日ほど体を休め、それからギルドで自身のランクに合った依頼を複数受けようと考えている。
(ただ、やっぱりザハークを従魔用の小屋？ に一日中居させるのはちょっとなぁ・・・・・・昼過ぎぐらいには晩飯ぐらいまで散歩に行くか)
しっかりとした自我を持ち、自分と同じ言葉を話すザハークをあまり不自由な状態にしたくないというのがソウスケの本音。
(ぶっちゃけ大体人・・・・・・鬼人族に近いんだから部屋で泊まっても・・・・・・っていうのは他の客の事を考えると良くないのか)
ソウスケやミレアナにとっては信頼できる仲間であっても、一般客や冒険者にとっては寧ろ普通のオーガより得たいがしれないという印象を持つ。
言葉が通じると分ればその印象は変わるかもしれないが、やはりモンスターという事は変わらないので万に一つという警戒心を持たせてしまう。
(この宿屋の店員さんは随分と慣れてくれたみたいだけどな)
ソウスケからの頼みでザハークに食堂で食事を取る宿泊客と同じ飯を持っていく店員はザハークと既に打ち解けており、多少の会話をすることもある。
「分りました。ところで、ソウスケさんはそろそろランクが上がるのではないですか？」
「・・・・・・そうなのか？ そこら辺は知らないからいまいち分らんが。てか、俺がランクアップするならミレアナもランクアップする筈だろ」
ソウスケ達はFランクへの昇格試験以来、間隔を開けながら依頼を受けている。
その中には採集依頼もあるが、討伐依頼もそこそこ含まれている。
そのため二人はEランクへと昇格する条件をほぼ満たしていた。
「もし俺達がランクアップする事が可能なら、次にギルドへ行ったときにそこら辺の説明を受けるかもな」
「・・・・・・よろしいのですか」
「何がだ？」
「ランクアップを果たせば必然的に目立つかと思ったので」
まだFからEランクへのランクアップだが、それでもソウスケの昇格を快く思わない同業者もいる。
その醜い嫉妬から面倒事に発生するのでは？ とミレアナは心配していた。
「あぁーーー。まぁ、それはなくもしれないけどそれが大きくなるのはDかCにランクアップする時じゃないか？ あいつがランクアップできたのは希少種のオーガとハイ・エルフの仲間がいるからだ。あいつ自身は対して強くは無いって言われるんだろう」
たが、そもそもソウスケはそこまでランクを上げるかどうか悩んでいた。
自身も含め、三人の力がFやEランクに留まっているのは異常。
ギルドもいずれ何らかの理由を付けて最低限のランクまで上げようとするかもしれない。
(・・・・・・・・・・・・まっ、上がってもCランクまでだな。それ以上は上がりたくない。BやAに上がろうものならミレアナの言う通り本当に面倒な事になりそうだ)
まだ物理的解決以外の解決方法を持っていないソウスケとしてそれは避けたい問題。
「・・・・・・私はなるべく感情を抑える努力をします」
「ふふ、ありがとな。さっ、腹も丁度減って来たしから下に降りて晩飯を食べよう」
相変わらず自分の事を考えてくれているミレアナの思いを聞いてソウスケは自然と笑みを浮かべる。
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