百九十話地味なスキルでも
ソウスケは自身が倒したグレーウルフ二体の魔石を取り、血の匂いで他のモンスターが寄ってこない様に穴を掘って地面へと埋める。
ブライドも同じようにグレーウルフの魔石を取り、死体を穴に埋める。
「よし、これで大丈夫な筈だ」
「そうだね。多少この場に血の匂いは残ってしまうけど、穴に埋めれば血の匂いに誘われてやってくるモンスターは少なくなるだろうね。それにしても、中々の早業だったね。もしかして結構投擲のレベル高い?」
「・・・・・・どこから高いと言うのか分からないですけど、自分でも多少は高いと思いますね」
ダンジョンのセーフティーポイントで暇な時に延々と物を投げていたソウスケの投擲スキルはかなりの物になっている。
そもそも冒険者も騎士も、戦闘職に就いている者達は投擲のスキルを磨こうとしない。
そんなスキルに時間を使うなら自身がメインに扱う武器の訓練に時間を使う。
「それに状況判断も流石の一言だよ。一匹目のグレーウルフの口に投げつけ、二匹目は逃げれない様に足を地面に縫い付ける。良い判断だ」
「ありがとうございます。まだ他に仲間がいないとも限らないんで、逃げて仲間を呼ばれると面倒だなと思って」
グレーウルフの実力を考えれば、十数体来ようともソウスケの敵ではない。
ただ、それらはソウスケだけで倒す訳では無いとはいえ、つい見せるつもりが無い手を見せてしまうかもしれない為、出来れば仲間を呼ばれない方がソウスケとしては有難いと考えていた。
「確かにそうだね。仲間を呼ばれている間に他のモンスターが襲い掛かって来る可能性だってある。乱戦にならなくて良かったよ」
ブライドは心底良かったという表情で長剣の鞘を杖代わりにして寄りかかっている。
予備の短剣を取り出し、手で遊ぶソウスケは欠伸を噛み殺しながら眠たそうな表情を浮かべる。
(グレーウルフとの一戦・・・・・・いや、一戦と呼べるほど戦闘時間は長くないか。取りあえず多少は体を動かしたから眠気が消えるかと思ったけど、そんな事は無いみたいだな。まぁ、ミレアナと交代まで後二時間ぐらいだし、それまで頑張って起きていよう)
特にスマホやゲームの様な暇つぶしが出来る物が無いため、眠気が消えず睡魔が襲って来るがそれに耐え、後二時間ソウスケは見張りの役割を全うした。
(な、なんなんだよあいつ・・・・・・)
ソウスケが特に苦戦する事も無く二体のグレーウルフを倒したのを見たバックスは、ソウスケの予想外の強さに怯えていた。
(ランクFじゃねぇのかよ!? なんでそんな奴が二体のグレーウルフあんな簡単に殺せるんだよ!!??)
バックス自身もグレーウルフを倒す事は出来る。
ただ、自身がソウスケと同じFランクの時には絶対に無理だった。そもそも一人でグレーウルフを倒そうという考えすら思い浮かばなかった。
そんなモンスターをソウスケは特に焦る事無く慌てる事無く冷静に対処した。
明らかに新人離れした強さ。
自身の首に魔力の刃を突き立てた時は、まだソウスケの実力が本物だと、ランク離れした実力を持っていると認められていなかった。
しかしゴブリンを一瞬で倒した事でもしかしたらと思い始め、今回の戦いで十秒程の間で二体のグレーウルフを倒したソウスケを見てようやく理解出来た。
(お、俺は、なんて事をしてしまったんだ・・・・・・)
まだバックスがソウスケやミレアナに実害を加えた訳では無いため、ソウスケはバックスにどうこうしようという気はない。
ただ一切交流を持ちたいとは思わなかった。
そのため、普通に接していればバックス達にとっても良い縁になったかもしれなかったが、バックスの初対面での態度により、その縁は完全に無くなってしまった。
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