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百八十八話何もないのが一番

「・・・・・・ふぅ、やっぱりつまらないな」


見張りを始めてから約一時間、ソウスケは欠伸をしながら愚痴っていた。

未だにソウスケ達を襲う襲撃者は現れていない。


余りに暇すぎるのでソウスケは四つの短剣でジャグリングを始める。

過去にお手玉しかやった事が無いソウスケだが、手元を見ず指を刃で切ってしまう事無く続けている。


「随分と器用だねソウスケ君。案外曲芸が趣味だったりするのかい?」


「そんな事無いですよ。ジャグリングなんて今初めてやりましたから」


ブライドは眠そうにしているソウスケが急にジャグリングを始めたのに驚き、気になり声を掛けた。

いきなり声を掛けて来たブライドに、見張りを始めてから気配感知を使い続けているソウスケは特に驚かず反応する。


「それにしては上手いね。手元も全く見ていないし。短剣も実は短剣がメインなのかな?」


「そう言う訳では無いですよ。基本は長剣で戦います。まぁ、メインの武器を失った時に予備として使える程度ですよ」


実際にソウスケはロングソード、長距離攻撃が出来て接近戦も行える蛇腹剣、格闘漫画などで何度も見た動きを思い出しながら実行する徒手空拳。


その三つがソウスケのメイン武器。勿論魔法も使うがメインで戦う事は今のところない。

短剣はせいぜい投擲ぐらいにしか使えない。


(まぁ・・・・・・鍛冶師のおっさんに造って貰った短剣ならメインで戦う事が出来そうだな)


使い捨てのつもりで頼んだ短剣が粗末に扱える物では無いと分かった時、ソウスケは嬉しくなかった訳では無いが少し残念に思ったのも事実。

今度行った時はコボルトの牙や爪で大量の短剣を造って貰おうと決めていた。


「そうなのかい? ソウスケ君なら短剣でも十分に戦えると思うけどね。まぁ、今それはどうでもいいことか。ところで初めての護衛はどうだい?」


「そうですね・・・・・・・・・・・・正直暇の一言かと。商人にとってはそれが一番良い結果だと思いますけど」


「ふっふっふ、確かにそう感じるのは無理無いかもしれないね。君の実力を考えれば。ただ、ソウスケ君の言う通りそれが商人にとっては一番良い結果だ」


商人にとってモンスターや盗賊が襲ってこないという事は商品に傷がつかないという利点だけでは無い。

護衛の度にモンスターや盗賊が現れ、冒険者達が傷を負ったや亡くなってしまったという結果が続けば依頼を受けてくれる冒険者が少なくなる。


冒険者を始めたばかりのルーキーはそういった情報を集めないが、ベテランと呼ばれる冒険者達は最低限の情報を集めているため中々腕の立つ護衛を雇えなくなってしまう。


「ブライドさんは商人の護衛中に今日襲ってきたゴブリンの様な低ランクでは無く、もう少し強く数の多いモンスターの集団や盗賊が襲って来た事は過去にありましたか?」


「・・・・・・ああ、何度かね。モンスターに襲われた時は怪我を負ったけど他のパーティーを含めて死者は出なかった。でも盗賊に襲われた時に僕たちのパーティーは大丈夫だったけど、他のパーティーの死者が出た事はあった」


どこか悲しそうな表情を浮かべるブライドを見て、もしかしてその死者は知り合いだったのかとソウスケは直感的に思った。


「まぁ、その死者が出たパーティーのリーダーが盗賊のアジトを探して潰そうと言ったんだ。普通ならそんな事はしないんだけど、その時は少し感情が正常では無かったというか・・・・・・冷静では無かったんだろう。そのリーダーの意見に僕は賛成した」


決して低くないリスクを冒す事にブライドが賛成する。

その事実に今まで自身が見て来たブライドの一面しか知らないソウスケは表情に出して驚いた。


「意外かな? これでも感情で動く事はあるよ。いくつかのパーティーから対人戦が得意な者、斥候に長けている者達でアジトを探して乗り込んだんだよ。結果は殲滅する事に成功。油断してたみたいで五分と掛からず終わったんじゃないかな。盗賊が貯めこんでいた物を持ち帰る事が出来たからかなりの臨時収入になったね」


笑いながら話すブライドだが、ソウスケは心の底から笑っておらず、その表情が仮面だと解った。


(仲間・・・・・・俺も、もしミレアナが殺されたら平常心でいられないだろうな)

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