百三十七話なんとかなるだろう
商談が終わった後、二人はギルドへ向かっていた。
「それにしても、完全にオーダーメイド制にして良かったんですか？」
「ああ。良い金の実になるだろうからな。・・・・・・苦労が無いという訳では無いけどな」
「私はそこが一番心配なんです。外枠の木はそこら辺で採れますし、冒険者用に造る場合に必要なトレントの木はこの後取りに行くので大丈夫だとは思いますが、一番肝心の風を出す役割を果たす魔石の調達が一番困難な筈です」
ミレアナに言われた事はソウスケも分かっていた。
結果的に魔石を得るという事は一石二鳥に繋がるが、エアーホッケー一つを造るのに必要な魔石の量が中々にバカにならなかった。
(そこら辺は分かってるんだよ。はぁ～～～～、どうせならあのダンジョンでもっとモンスターを狩っていれば良かったな。・・・・・・野良のダンジョンでも見つかれば人目を気にせずにモンスターを狩りまくれるんだけどな)
あまり目立ちたくないソウスケにとっては、自分が次々にモンスターを狩りまくるところを見られなくなかった。
なので街や都市が管理しているダンジョンではある程度上に行くまでは、そういった真似が出来なかった。
「そこら辺はゆっくりと考えるよ。オセロやチェスはそう遠くない内に売り出されるだろうけど、エアーホッケーは完全に予約制。そこまで焦る必要は無い・・・・・・筈だ」
「・・・・・・そこで言い切らないんですね」
「造るのに必要な量がちょっとやそっとで集まらないからな。取りあえず、俺はこれからトレントの木を集めたいと思っているんだけど・・・・・・やっぱりそういう系統のモンスターが多くいるダンジョンを管理している街に行くのが妥当か？」
少し前にミレアナに聞いた話の中では、ダンジョンを管理している街に行くのが一番効率が良いとソウスケは思った。
そんなソウスケの案にミレアナも同じ考えだった為、頷きながら上機嫌に同意した。
「そうですね、それが妥当だと私も思います。ただ、私はそういった情報を持っていないのでギルドに行って情報を得た方が良いと思います」
「ギルドか・・・・・・最近は行っていなかったな。娯楽系の用事は一先ず終わった訳だし、久しぶりに行ってみるか」
夕方の一歩手前で、まだそこまで冒険者がギルド内にいないだろうと予想したソウスケはミレアナを急かし、速足でギルドに向かった。
「・・・・・・よし。予想通りで助かった」
ギルド内には仕事が昼過ぎに終わり、併設されている酒場で早めの宴会を冒険者達もいたが、冒険者の数は少なかった。
「ソウスケさんは人混みが嫌いですから都合が良かったですね」
「いや、確かに人込みは好きじゃないけどなんて言うか・・・・・・こういう場だと、人が多いと面倒事に絡まれる確率が高くなるだろ」
「・・・・・・確かにそうですね。もしもそういった状態になった光景が容易に浮かびます」
だろ、とソウスケはミレアナに言い、受付にセーレを発見すると丁度良いと思ったソウスケは人が少ない今がチャンスだと感じ、先程と同じように速足でセーレの元へ向かった。
ソウスケが速足でセーレの元へ向かうと、自分の所に向かって来るセーレはソウスケが声を掛ける前に先に声を掛けて来た。
「久しぶりですねソウスケさん。速足でこちらに来ましたが、何か急ぎの用ですか？」
「お久しぶりですセーレさん。速足で来たのは超私的な理由なので大丈夫です。Fランクの昇格試験後の私用が終わって少し聞きたい事があったので今日は来ました」
ソウスケの言葉は間違ってはいないが、ミレアナはこれからセーレに聞く内容も私用の延長なのではと思って首を傾げていた。
だが、ソウスケの中では一応商人ギルドにも登録しているのでトレントの木を集めるのは仕事になっていた。
そしてこれから自分がセーレに話す内容をあまり周りの受付嬢や冒険者に聞かれたくない為、ソウスケはミレアナがギリギリ聞こえるであろう小声で話した。
「えっと、色々あって今トレントの木がたくさん欲しいんですよ。なのでトレントが現れるダンジョンを管理している街を知っていたら教えて貰えませんか」
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