表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/90

共闘②

「よし、作戦は決まった。始めてもいいか?」

「いつでもいいぞ」


 さっきのは軽い準備運動だ。ここからが本番。

 俺は重心を低くしてどんな攻撃にも対処できるように棒を前に構えた。


「いくぜ!」

「こい!」


 マーニレが腕を振る。


「うわっ! マーニレ、たんま、たんま! それはズルいぞ」

「これも立派な俺様の力だ」


 鳥たちが頭上を旋回して一斉にフンを落としてきた。


「あはははは。あたふたして可愛い♪ シロウ、隙だらけだよ♪」

「まったくだぜ。大の大人が情けねー」


 俺が慌ててる間にシルとマーニレが動き出す。

『共闘でいいぞ』とは言ったけど、支配した鳥たちを使うのは反則だろ。

 生き物相手だから、下手に反撃できない。


 今回はやらないが、俺もいつかテイムモンスターを全部召喚するからな!


「【ウインド】」


 風を起こして、フンの落ちる角度を変える。

 そっちがその気なら受けて立つ。


「げっ! フンがこっちに飛んできた」


 鍛練のはずが、マーニレのズルからどんどん低レベルな争いに……。

 マーニレが横に飛んでフンを避けた。

 逃げるんじゃねー。


「【クリーン】」


 俺は体に付いたフンをキレイに消す。


「シロウ、闘いに集中して♪ 私を見て♪」


 いつの間にかシルが間合いを詰めている。


「ロリコン、勝負はな。勝てばいいんだぜ!」


 マーニレの声も聞こえたが、姿が見えない。

 あいつは何をしてくるか読めん。

 どこに隠れている?


 目の前に迫ったシルが突然上にジャンプした。俺も釣られて上を向く。

 マーニレがその隙を見逃さず、低い姿勢で陰から突貫してくる。


「そこか!」


 最初からこの状況を作り出すための演出だった。

 上と下の両方を同時に相手取らなくちゃいけない。


 シルのジャンプが……。


「あっ! 翼使うのズル!」

「これは魔族の力だよ♪」


 滞空中でも翼を使って、シルが直角に動く。


「ぐっ……」


 マーニレも見ないといけないし、シルは飛び回るし……。


 俺はマーニレの剣を払う。

 えっ? 剣を手放しやがった。


 マーニレはそのまま俺の体に抱き付いて俺の動きを封じる。

 筋力が高いから、なかなかはがせない。

 無理やり体をひね――。


「シロウの負けだよ♪」


 俺の首にシルの持つ槍の穂先がくっ付く。


「いえーい。ざまーみやがれ。魔族を舐めんなっ!」


 俺から離れたマーニレが大はしゃぎした。


 泥臭い勝ち方だが、勝利のためなら手段を選ばない。

 まさか、マーニレが捨て身を選択し、シルにトドメを譲るとは思わなかった。


 実戦ならシルが俺を殺せても、その間にマーニレは死んでる可能性が高い。


「リーレンに自慢してやるぜ。あいつの悔しがる顔が今から楽しみだ」


 シルとマーニレが戦闘形態を解除した。

 この二人、俗に言う『勝ち逃げ』をする。


「自慢するなら一対一で勝ってからにしたら?」


 シルが服を着ながらマーニレに声をかけた。

 いや、一対一ならさすがに負けないわ。


「柿の早食い勝負なら勝てっかな……?」


 マーニレがお題を捻り出す。

 あ……。その勝負内容なら勝敗はわからんが、それで勝って自慢になるのか?


「アニキが……負けた」

「あれはシルとマーニレの作戦勝ちだ。ふざけたスタートだけど、鳥たちで相手を攪乱(かくらん)する目的があったなら、充分有効だと思う」


 素直に負けを認める。

 二対一で鍛練が行えるなら、今後も続けてもいいな。

 鳥のフンで汚れた広場を【クリーン】で清掃した。


(くち)や態度は悪いが元魔王の実力はわかったと思う。主な担当区域は果樹園だ。みんな仲良くしてやってくれ」


 一度言葉を切り、マーニレを見るが、何も言わない。

『よろしくお願いします』ぐらい言えんのか……。


「マーニレが悪さをしたら、必ず俺に報告しろ」

「待て、ロリコン。俺様はいい子だぞ!」


「魔王として育てられた奴の『いい子』なんて信用できるか!」


 人間の街を滅ぼしたから『俺様、いい子』とか言われても困る。


「共同生活をする上で人間の作法を教える教育係りは……ゴンザスを予定していたがファーナムにお願いする」


「えっ? 私ですか?」

「マーニレもファーナムの方がいいだろ?」


 マーニレがリーとの約束を守って、ゴンザスを鍛えてくれるのは願ってもない機会だ。

 しかし、そうなればそうなったで関係性に不都合が出てくる。


 俺がゴンザスに決めた時は他に適任者がいなかった。


「そりゃな」


 マーニレもファーナムの第一印象が良かった分、強くは言えない。むしろ今後もファーナムにはマーニレの手綱を握り、拠点に残る者同士として、仲良くしてもらいたい。


 そして何より武芸面での接点がないので、侮る行為が芽生えなくて実にいい関係だ。


「わからない事があれば私がファーナムさんに教えますよ」

「えー、ティリアって教わる側じゃない?」

「ご主人様、それはひどいですよ!」


 ティリアが堪らず俺を叩く。

 最初に会った時より体の動きは良くなったが、まだまだだ。


 これではモンスター化した鳥のテイムは成功しないだろう。


 鍛練が終わった俺はゴンザスとファーナムの家屋を新たに建てた。

 夫婦で暮らすのに、盗賊たちと一緒というのも何か違う気がする。


 マーニレは俺の住んでいる家の空き部屋だ。


「鍛練をサボった罪滅ぼしに、街で布団を買ってくるわ。さすがに布団がないと今夜の寝床が困るだろ?」

「それは助かるけど、二日酔いは大丈夫なのか?」


 足元が覚束ないという事はないけど、昼過ぎまで立ち上がれなかった奴らだぞ……。


「薬を飲んだら治った」

「俺たちも一緒に行って、見回りをしてきます。チェルツーさんも連れて行くんで安心してください」


 翼たちが街に行こうとすると、盗賊たちも付き従った。

 俺が西領に小旅行してる間に何かあったのかな?


 ティリアはファーナムとお話するために残ったようだ。


 翼たちがいない今がチャンス。俺はモンスターボックスからシープを召喚した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ