シロウ様、大好きです!
「角を舐められても同じ事が言えるかな? 夜は長いから、覚悟しておけよ……」
「!」
「いっかーい」
「ひゃあっ!」
俺は回数を数えながらリーを素直にさせるため根元から角を舐めた。
俺の気持ちと一緒に魔力を流し込む。
リーの体が火照った。
「はぁはぁはぁ。私は……悪くありません!」
「にかーい」
「んんんんっ!」
回数が増えるごとに魔力酔いの効果が上がっていく。人間と魔族では吸収の仕方が違うため、爆死の心配がない。
三回目で痙攣。
五回目で一度目の気絶する。
「シロウしゃま、もうおよめにいけましぇん」
顔の筋肉が緩み、口を閉じられなくなった。
俺は先程から何度もリーの涎を拭いている。
「その時は俺が責任を持ってもらってやる」
「……ひゃい。シロウしゃま、だいしゅきでしゅ」
「じゅーにかーい」
あ、また気絶した。
気絶してる間に、はだけた服を元に戻す。
でも、結構粘るな……。
リーの覚悟に心を鬼にして対応してるはずだが、リーが気絶するたびに俺の覚悟が先に折れそうになる。
そこまでしてゴンザスと奥さんを会わせたくないのか……。
いや、本当の理由はその先だ。
特訓に身が入らなくなり、これ以降の成長が望めなくなる。
確かにリーの言い分通り、今の状態が継続すればゴンザスは今以上に化ける可能性を秘めている。
これはゴンザスを思えばこそのリーの優しさ。
でも、俺の中のゴンザスはどんなに吐こうが特訓を続ける男だ。
「ほら。リー、起きろ」
「わたじはジロウざまのために……あるのです。そのだめなら……いぐらでもだえてみぜますよ」
「じゅーさんかーい」
「んっ……はぁはぁはぁ」
俺が悪者のような気分になってきた。
幼女を屈伏させるために何度も何度も弱点の角を舐めて……。
ゴンザスが忠臣なら、リーも忠臣だ。
「ざんかげつだけ……どうか……ざんかげつだけ……」
「じゅーななかーい」
三ヶ月……。
三ヶ月後に何かあるのか?
翌朝。
目が覚めると……。
「シロウ様、大好きです」
唇にキス。
「シロウ様、大好きです」
唇にキス。を何度も繰り返すリーがいた。
「勝負は私の勝ちですよ!」
俺が起きたのを確認したリーが宣言する。
「リーが気絶して起きなくなっただけだろ……」
「勝ちは勝ちです! ゴン太様には……」
「俺、隠し事ができない人間なんだよ。たぶんすぐに言う」
「えっ? ええええええええええ。あの勝負は何だったんですか!」
「可愛いリーが見られたから俺としては大満足だ」
「か、かわいい……?」
寝てる人間にキスをするのは照れないのに、『可愛い』と言われただけで顔が真っ赤になった。
リーの反応が楽しくて朝からからかってやろうと思ったら……。
トントンって部屋の扉がノックされた。
「アニキ、起きてますか?」
「今開ける」
俺は部屋の鍵を開けてゴンザスを招き入れた。
リーは頬を膨らませて顔を小さく左右に振っている。
「ファーナムを見つけたって」
「ちょっと! 何で言うんですか!」
リーがベッドに立ち上がって猛抗議した。
俺たちの目的を考えると、これから先も隠し通し続けるとか、無理だって……。
「実は朝一番で俺のところにも……発見の知らせが届きました。どうやら、この先の街にいるそうです」
「私の……努力は……」
リーが足の力を失い、ベッドに崩れ落ちた。
「リー嬢……?」
「リーはお前に期待してるんだ。妻子にかまけて、特訓を疎かにして欲しくないんだとよ」
ゴンザスの肩を叩きながら言う。
リーを悪者にする気はない。
「わかりました。リー嬢には『火炎の斧』をお返しします」
ゴンザスは背負っていた赤斧をリーの前に置く。
それを完璧に扱うために死ぬ思いをしながら努力してきたのに、あっさり手放す事ができるのか……。
「えっ? どうして……」
「俺がもっともっと強くなって、リー嬢が再び斧を預けてもいいと思った時に、もう一度斧を俺に渡してください」
「…………」
リーは無言で赤斧とゴンザスの顔を行ったり来たりする。
「ゴンザスはこういう男だ。マキナに聞いてないか? 魔力酔いを二〇〇回繰り返して、二〇〇回吐いても、それでもまだ特訓を繰り返す奴だぞ。その上、九年間半身麻痺と火傷の後遺症で苦しんで苦しんで苦しみ抜いてきた奴だ。一七回で気絶して起きなくなったリーと比べるか?」
リーの目から涙が零れ落ちた。
少し言い過ぎたかな。俺はリーを抱き寄せる。
「アニキ……俺は冒険者ギルドで馬車を借りてきます」
「すまん。リーが落ち着いたら行くわ。他の奴らにも声をかけておいてくれ」
「わかりました」
ゴンザスが部屋を出て……。
「冒険者ギルドに行くなら、ついでに昨日の素材の代金を受け取ってきてくれ。シルが一緒なら貰えるだろ」
「はい」
今度は部屋の扉が完全に閉まった。
「リーが俺のために行動してくれるのは嬉しい。でもな、今回はリーの負けだ」
頭を撫でながら、語りかける。
リーが俺の胸で泣いた。
三〇分後。
いつまで経っても宿屋の入口に現れないせいか、みんなが部屋に来た。
リーは泣いたおかげで、すっきりできたようだ。
ちなみに目の充血は魔力を使って治した。
「シロウ、すごい大金だったよ」
「すごい大金?」
先に金貨八枚を貰ったから、残りはそんなにないと思うが……。
「ギルド長が手を回してくれたみたいで、ランク外の素材も買い取ってもらえました」
「なるほど……それは有り難いな」
Cランクは爺さんが勝手に決めたランクだ。
高すぎて目立つ事もなく、低すぎて役に立たないわけでもない。ギリギリのラインがCランクなのだろう。
もちろん買い取り窓口の職員はそんな裏事情は知らない。
でも、ギガンテス自体がSランク設定のモンスターらしいから……、色々とデタラメだ。




