拠点造り
リンを治した翌朝。
コックがみんなの代表で街に土地を買いに行った。
モンスターが歩く森の中なら意外と安価に購入ができるそうだ。将来街が拡張されたり新しい道ができたりした時に高値で売れたりする。
俺たちの場合は単純に住む為だ。
一日の夜営ぐらいなら他人の土地で寝泊まりしてても文句を言われないだろうが、拠点を造るとなると話は変わってくる。
「土地の購入はできたんですが、開拓前の森に住むには、国の法でDランク以上の冒険者が代表者にならないと許可が下りないそうです」
そういうのがあるのか……。
「Dランクまでどのくらいあるんだ?」
「Fランクから始まるんでF→E→Dランクですね」
「いきなりDランクになる試験って受けられないのか?」
「ズルはできないっすよ。一応一ヶ月間の仮許可はもらったんで、一ヶ月以内に誰かがDランク以上にならないと正式な許可はもらえないっす。後日、森の調査が入った際に無許可で住んでた場合は盗賊とみなされて、資産が没収されますね」
俺たちの中で街に入れるのは、コックとティリアと翼たちだけだ。
その中でも断トツに強そうなのがコックだな。
理由は魔族の角や翼を瞬時に見極められる程度には実力がある。コックなら簡単にDランク以上になれると思う。
「あ、俺は冒険者登録できないんで、他の人にお願いします」
俺の視線に気が付いて即座に拒否した。
「あいつ、家出中なんで。冒険者登録すると親に居場所がバレるんですよ」
そりゃあダメだ。
っていうかお前、家出中かよ!
「私にも無理ですよ!」
まだ何も言ってないのに、ティリアの方を見ただけで、またもや拒否された。ある意味、ティリアも家出中だ。いや、勘当中か?
「消去法で翼たちしかいないな」
「俺は居場所がバレても構わねーから、冒険者になるのはいいんだけどよ。Dランク冒険者ってどの程度の実力なんだ?」
居場所がバレて、南領から翼たちを捕らえるために兵を出兵させれば、攻撃の意志有りと勘違いされて北と南の戦争に発展しかねない。
それに国境は地下道を使って誤魔化したからすぐに情報が南領まで届くとも思えん。届いた頃には地盤も出来上がっているだろう。
「ルフの野郎でBランクぐらいだから、あれより弱いぐらいかな。森のモンスターを倒せるのがDランク以上の証っすね」
「近衛隊の隊長ってBランクなの?」
そんなんで一国の防衛ラインを任せていいのか?
「アニキ、変な勘違いをしないでください。あいつが隊長クラスの平均より弱いだけですよ」
隊長クラスはもっと強いのか……。
「とにかく、俺たちが冒険者登録をして、修行しながらランクを上げればいいんだろ?」
「そうだな。ゴンザス、俺たちの拠点がかかってるんだ。頑張って翼たちを鍛え上げてくれ」
「任せてください!」
こうして俺たちの鍛練が始まった。
期日までは一ヶ月。何としても翼たちには森での居住権を勝ち取ってもらいたい。
コックが購入した土地は整備された道からも遠い森の中。
モンスターが平然と歩いてる事から考えても、Dランク冒険者以上の実力はあった方がいい。
「ご主人様、本当にこんなところで生活するんですか?」
「別にティリアだけ、一人で生活したいなら離れて暮らしてもいいんだぞ?」
「私を殺す気ですか!」
「ゴンザスに武芸を習って、自分の身は自分で守れるようにはなれよ」
「……はい」
「鳥との仮テイム期限もあるんだ。いつまでも仮主人のままじゃダメだぞ」
「頑張ります!」
鳥を仮とはいえテイムしておいて良かった。
いい起爆剤になる。
「もふもふが好きな奴! 手を上げろ!」
シルが真っ先に手を上げ、女性陣が一気に手を上げていく。チェルツーまで空気を読んで手を上げた。
「シープ・オープン」
俺は牧場でもらった七頭の羊から作った羊型モンスターを七体召喚する。
子供も大人もモンスター化させたら牛サイズまで大きくなった。
「Dランク冒険者以上の実力をつけた者には報酬として羊をプレゼントする」
女性陣の目の色が変わる。
「ただ、このままだとモンスターとして不完全だから、渡す前までには進化させておく」
「おっさん、俺たちには何かないのか? ほら、冒険者って言ったらカッコいい装備だろ?」
「自分でモンスターを倒して貯めたお金で買えよ」
「おっさんなら、クズ鉄からでも超すげー武器を作れそうじゃね?」
「今までの経験から否定できないのが辛い。でも、鍛冶は経験した事ないぞ」
「すればいいだけだ。期待してっかんな!」
一ヶ月後までに変な予定が入ってしまった。
お喋りしながら歩くとコックが購入した土地に着く。
GPSのようなものはないので、なんとなくこの辺りってだけだ。
「まさか、斜面とはな……」
絶対に騙されただろ? って場所だ。
安価な土地が平らとは限らないか……。
「とりあえず、コック。敷地の範囲だと思われるポイントに人を立たせてくれ。土魔法で……何とかする」
更地にするとは言ってないぞ。
俺はコックが指示している間にアイテムボックスから槍を取り出し、森の斜面に生えている木を切って回収していく。
プールの時に知ったが、土魔法の効果範囲にある木は全て魔法に取り込まれて消えてしまう。
「よし、準備はいいか? みんな、一〇歩ずつ下がってくれ!」
俺は土地の真ん中に立って、全体に声をかける。思ってたより広い。学校のグラウンドぐらいあるかな。
「【サンド】」
地面に手を付いて土魔法を放つ。
突然、俺の足元の土が凹んで落とし穴に落ちた感じになった。
「一回で成功するとは思ってないさ! 【サンド】」
二度目の土魔法で落とし穴が埋まり、土の高さが周りと同じになる。
さっき低くなった分が戻っただけだ。
「おっさん、水魔法を使った時みたいに徐々に侵食するイメージで土魔法を使え」
遠くから翼のアドバイスが飛んできた。
範囲を徐々に広げていくのか……。一発で終わらせる事しか考えてなかったな。
「【サンド】」
俺の周囲がゆっくり下がっていく。
下がる範囲が広がって、俺の足元の高さと同じになったところでストップする。
ジワジワ範囲を広げていく。
「慌てなくていいぞ!」
わかってるよ。
俺は魔法を放ち続けるのは得意なんだ。
途中から速度を上げるために魔力量を増やす。斜面を削って森を更地にするだけで、一〇分ぐらいかかったかな。
でも、魔法を使わずに人力でやってたらここまで何ヶ月かかるのやら……。
「次は壁を造るぞ。【サンド】」
みんなが立っている手前がゆっくりせり上がり、壁が出来ていく。
「おっさん! 入口がないと誰も内側に入れないからな!」
やってしまった。
三メートル級の高さだが、城壁と見間違う厚さの壁ができたのに、入口がない。
「どうやって、この壁に穴を空ける?」
下を掘った方が楽そうだが……。掘ったのでは行き来が面倒だ。
「【ファイア】」
俺は街の方角に入口を造る。
赤くはなるが、溶ける様子はない。
「ダメだな。【ウォーター】」
熱くなった壁を水魔法で冷やす。
「仕方ない」
普通に壁を殴った。
別に全てを魔法で行わないといけないわけじゃない。
ちょっと手が痛かったけど、一発で大穴が空く。ガタガタな部分は土魔法でアーチ型に補強。
立派な入口ができた。
今日は外壁と箱型の家屋、お風呂を造って終了。他にもやりたい事はあったが、あまり拠点造りに時間をかけるとみんなの鍛練時間がなくなる。




