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テイムしたい。テイムしたい。テイムしたい

「副隊長は捕虜として使えます。連れて行きましょう」

「あんな危ない奴を連れて行くのか?」


 副隊長が入った繭はまだ放り投げていない。

 メインディッシュとして指示を出していた隊長のルフプーレに命中させる予定でいた。


「ご心配せずとも、武具を取り上げて再び蜘蛛の糸で縛れば逃げられませんよ」


 言うなり、ティリアがデススパイダーに捕らわれた副隊長のもとへ移動する。

 この副隊長……名前はチェルだったか? この者が逃げ出す事に関しては全く心配していない。

 ティリアは両手で繭をかき分けてチェルの顔を剥き出しにした。


「シャドースネーク、念のため痺れる系の毒をかけてくれ」


 毒の追加が終わったのを確認すると、ティリアはチェルの剣で糸を切っていく。剣の扱いが下手だ。王女だしな。


 糸を切り終えたら剣を渡してくる。

 俺はそれを受け取りアイテムボックスに仕舞った。

 続いてティリアはチェルの装備を剥ぎ取りにかかる。鎧の下に服を着ていたが、それも脱がす。

 女同士だから容赦ない。

 胸を触ったり、下着に手を入れて武器を隠していないか確認している。そんな場所には針ぐらいしか隠せないだろ。やりすぎだ。


「装備を売れば活動資金にできますね。これで貧乏な旅とはさよならですよ」

「王国のマークがあるんだから、売れないだろ……」

「あ、確かに……」


 売ったらすぐに足が付く。

 使うにしても必要な時だけアイテムボックスから取り出すしかない。豪華な装備だから知ってる人が見れば一発で近衛隊の鎧だとわかるだろう。

 売り払う場合は一ヶ月待てばいいな。国さえ滅べばマーク入りの装備を売り払っても関係ない。


 身包みを剥ぎ取られ、黒い下着姿になったチェルをデススパイダーが蜘蛛の糸で再度グルグル巻きにした。

 出来上がったそれはまさに雪だるま。

 頭から下は白い糸の集まりにしか見えないため確認できないが、その中身は体育座りのように足を畳んでいるはずだ。


「俺たちのせいで森に迷惑をかけたな」


 森の火は風の勢いに負けてすでに鎮火した。あとは栄養分代わりにバケツ一杯の魔力水を散布する。

 下手に撒きすぎると予想以上に森が成長してしまう。


 ティリアには森への配慮でめちゃくちゃ感謝された。

 愛国心のある者が王になれば、きっと国はもっともっと良くなるだろうに……もったいない。


 俺はティリアを抱えて仲間たちのもとを目指す。チェルは雪だるまから飛び出した一房の糸を持って運ぶ。


「ご主人様、モンスターをテイムしてるところを拝見したいのですが見ることは可能ですか?」

「移動しながらでいいなら別にいいぞ。どのモンスターがいいかな……」


 探してる時に限ってモンスターに出会わないのは世の常だ。

 こんな森の浅いところで遭遇するモンスターは大半が♂♀テイム済みなので、なんでもいい。


「ご主人様、あちらに鳥がいますよ」

「鳥?」


 走るのを止めて、ティリアの指差す方を見る。


「んー、あれはモンスターじゃないな。動物だ。テイムできない」


 動物は目を凝らしてもステータスが見えない。

 下手にステータスが表示して『アリ』『アリ』『アリ』と視界いっぱいに広がっても困るが……。


「残念です。自由に空を飛ぶ鳥に憧れてたのに……」


 自由にか……。ティリアにとっては王宮での暮らしは自由がなかったのだろう。その上、捨てられる前に認識阻害の首輪をはめられて、再び自由を奪われる。

 ティリアは俺と出会う事でやっと自由になれた。少しぐらい願いを叶えてやろう。


「せっかくだ。実験するぞ」

「実験ですか?」


 俺はティリアとチェルを地面に置く。

 兵士たちが索敵のために偵察ツバメなるモンスターを使役していた。

 鳥のいる場所は高く、一回ジャンプした程度では全然届かない。途中で木の幹を蹴って二段ジャンプで鳥を両手で捕まえる。


「ご主人様……鳥って手で捕まえられるんですか?」

「今の見てなかったのか?」

「いえ、見てたからこそ不思議に思っただけです」


 俺は暴れる鳥を右手で持ち、左手でアイテムボックスから魔水を取り出した。ボールに魔水を汲んでスズメのような手乗りサイズの鳥に無理やり飲ませる。


「すごいすごい! 鳥が一瞬で大きくなりましたよ」

「これが動物がモンスターになる現象だ」


 手乗りサイズからビーチボールサイズにサイズアップした。

 増えた体積は肉じゃない、水だな。


「これがそうなんですね。初めて目撃しました」

「この現象が起こるから作った魔力水は定期的に破棄する法律があるんだ」


 法律に関してはティリアの方が詳しいな。


「お城の中に居てはこんな危険な現象は見る機会はありませんでしたよ。ご主人様には感謝感謝です」


 さっきの少し根に持ってる……?


 魔水は実験用にキープした物だ。

 作り方は実に簡単。魔族領から来てすぐの魔族にお願いして魔力水に手を入れてもらうだけ。この魔水は気絶したマキナの手を入れて作った。


「モンスターのテイムの仕方は、それぞれ違う。テイムしたいと思えばテイム条件がなんとなくわかるはずだ」

「やってみてもいいですか?」

「いいぞ」

「テイムしたい。テイムしたい。テイムしたい」


 ティリアが声に出して鳥に問いかける。


「実力で勝負しろって……」

「ティリアはモンスターをテイムする才能があるのかもな。でも今のティリアでは戦闘訓練をしてないから、この鳥にすら勝てないだろう」

「そうですか……。とても残念です」


 本当に残念そうな顔を見ると心が痛い。


「ティリアのテイムモンスターにならなければ、この場でお前の首をへし折る」


 俺は右手で掴んでいる鳥の首に力を入れた。


「ピイイイイイイ!」


 俺の言葉と行動に鳥が抗議の鳴き声をあげる。


「抵抗するのか……。テイムに応じないモンスターは殺すと決めてるんだ」


 さらに手に力を入れた。

 ミシッと骨が悲鳴をあげる。


「ご主人様! 殺すのは待ってください! 皆さんと合流したら戦闘訓練を受けます。鳥さんが仕えるにたる人物だと必ず証明してみせます! それまで殺すのを保留にしてはくれませんか?」

「どうする?」


 鳥に話しかけた。(はた)から見たら馬鹿らしい光景だが、俺は至って真面目だ。

 俺が鳥を殺すと脅したせいもあるんだろうが、結局ティリアのテイム状態(仮)に落ち着いた。

 この状態をわかりやすく表現するなら、一緒に行動はするが、主人とは認めていないため、命令をきとんと聞かないテイムモンスター。


 ティリアの体力面は心配だった。最低限自衛。あわよくば、これを機に戦闘訓練を前向きに取り組んでもらいたい。というのも、小説の中のティリアは三〇分の買い出しだけで音をあげていた。


 再びティリアとチェルを抱えてみんなのもとへ移動する。


「アニキ、早かったですね。そいつは捕虜ですか?」

「ティリアが捕虜にって……」

「今の近衛隊の副隊長」

「なるほど。アニキ、鎧は回収してきました?」

「武具を外して全部アイテムボックスに入れて持ってきたぞ」

「アイテムボックスの中なら問題ないですが、近衛隊の鎧は上質なため発信器が隠されています」

「発信器か……。それって外せるのか?」

「はい。俺がやるんで、出してもらっていいですか?」

「わかった」


 胸の部分が膨らんだ女性用の鎧の出番はないと思うが、物騒な物が付いているなら外しておくべきだろう。

 俺はアイテムボックスから鎧を出してゴンザスに渡す。


 ゴンザスは裏地を探って、ナイフで軽く切ると中から薄くて小さい板を引き抜いた。


「あとは……」


 板を上に放り投げて斧で二つに切り裂く。

 元隊長なだけはあるな。鉄っぽい板を簡単に真っ二つにした。

 ゴンザス君、ポイ捨て禁止だぞ。仕事でゴミを拾ってた俺の身にもなれ。

 俺は地面に落ちた板を拾ってアイテムボックスに入れた。

 あれ……認識阻害の首輪、帰属の指輪ポイ捨てしなかったっけ?

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