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外が大変な事になってます!

 翌朝。


「アニキ! アニキ! 起きてください! 外が大変な事になってます!」

「そんなに慌ててどうした?」


 夜勤に慣れていたせいで、夜型を朝型に直すのに苦労したが、最近は寝るのが早くなったおかげで、朝型にシフトされた。


 朝型と言っても、洞窟の外に出るまでは、日差しを感じる事ができないため朝・昼・晩の区別が付かない。


 俺は布団から出て、ゴンザスの呼びかけに応じる。

 布団の中ではマキナの角が治っていたし、大丈夫だろう。

 また体が軽くなった。さすがに三度も続けば偶然じゃないか……。


 今は考察を後回しにして、部屋の扉を開ける。

 目の前には箒を持ったゴンザスがいた。


 体感ではまだ朝日が顔を出した直後だ。

 こんな朝早くから掃除をしているのか……。


「説明するより見てもらった方が早いです!」


 ゴンザスの慌てようから、外がとんでもない事になっているようなので急いで洞窟の外へ行く。


「えっ? ジャングル?」


 俺たちのアジトは山側にあるため森に飲み込まれていないが、高台から見下ろした限り、原始時代さながらだ。


「うわー。プテラノドンが飛んでる」

「アニキ、あれは鳥型のモンスターですよ」

「まさか……こんな事になるなんて……」


 関係各所の皆様、ごめんなさい。

 きっと俺の【ウォーター】が原因です……。


 魔水でモンスターが溢れ、魔力水で自然が一気に育った。俺の本気の魔力を含んだ水は世界を一夜で一変させてしまう。


「なぜか角が治ったし、オレ忙しいから帰るわ。おっさん……その……オレもおっさんの体が気に入った。三番目に立候補するかんな!」


 それは昨日聞いた。

 マキナは景色が変わった事に気が付いているのか、いないのか不明だが、そのまま飛び立っていく。

 この天変地異はマキナにも原因の一端はあるよな?

 逃げるなや……。その背を恨めしく睨み付ける。


「あ、そうだ。おっさん、これやるよ」

「なんだこれ? 魔核?」


 マキナが体を少し反転させて小石サイズの魔核を放ってきた。

 明滅(めいめつ)を繰り返し、まるで魔核が鼓動しているようだ。


「アニキ、それ早く投げないと爆発しますよ」

「えっ?」


 忠告しながらゴンザスが俺から離れる。

 次の瞬間、輝きが強まりピカッと光ると手の上の魔核がパンッと破裂した。


 一瞬熱を感じたけど火傷はしていない。しかし、音だけはかなりのものだ。


 マキナの奴、帰る前にイタズラをして帰るとは許せん。

 空で一人笑って今度こそ帰っていく。


 洞窟内にももちろん音が響いたようで、盗賊たちが一斉に外に飛び出してきた。

 音について怒るかと思ったが、世界の変貌に唖然として言葉を失っている。


「アニキ! 保存食を作りましょ!」

「これ……国は機能しているのか?」


「コックの野郎に見に行かせますか? きっと数分で引き返してきますよ」

「そうだよな……。まず道がない。それにそこかしこでモンスターが溢れている」


 それなりに通りやすい時で片道三〇分かかっていた。方角を見失いそうな密林の中を歩いて、果たして街にたどり着けるのか……。


「アニキ、あの木が見えますか?」

「木? あの葉の感じ……あれって薬草か? 育ちすぎた薬草は木になるんだな。草じゃないのか……」


 木には緑色の実が複数付いている。あれがマナの実か。初めて見た。


「あとあっちの木の天辺に赤い実が付いてますよ」

「あれは……先に回収するか……」


 赤い実はラティアンの実だ。

 起きてきたシルに飛んで回収してもらう。


 広大なジャングルに二つしか実ってない貴重な実だ。


「森全体が喜んでたよ! 魔力に満ちてる!」

「そりゃあ……一時的にせよ、魔力水の大海原になったからな……」


――――――――――


《リーカナ王国:王様》


「大地の神が我々に恵みをもたらした! 民に余の行いが正しかったと触れて回るのだ!」

「王様の仰せのままに!」

「「「王様の仰せのままに!」」」


――――――――――


《冒険者ギルド:ギルドマスター》


「ギルド長! ギルド長!」

「どうした騒がしい。俺は昨日のモンスターの大量発生の処理で徹夜で働いたんだ。少し寝かせてくれ」


 城壁の調査は兵士に止められるし、昼下がりの森では再びモンスターが溢れ出るし……。

 これ本当に魔法か?

 自分で立てた仮説を疑いたくなる。


「寝ている暇はありませんよ」

「はぁ。聞きたくないが、今度はなんだ?」


「引き続きモンスターの大量発生。それに加え森が急成長し街道を飲み込んでしまいました。この国は今や陸の孤島も同然です。急ぎ冒険者を派遣し、モンスターの討伐、ならびに食料の確保が重要かと存じます」


「……そんなに緊迫しているのか?」

「穀物を育てていた区域も森に飲み込まれ、モンスターの領域に変わってしまったため、穀物の備蓄がなくなるという話です。このままではもってあと六日。人口に対してもともと生産量が追いついていないところに拍車をかけました」


 この街の自給率は限りなく低い。

 穀物に関しては五〇パーセントを越えている事になっているが、実状は五パーセントもないだろう。公表している情報はデマばかりだ。


 肉はモンスターを倒せばいくらでも供給できると言っても限度がある。だから主食はあくまでも穀物だ。


「国はなんと? あ、やっぱり必要ない」


 どうせ自分たちの手柄にしようとするだろう。


「まずは周辺諸国への移動経路の確保を優先したい。何としても飢え死にする者を一人でも減らすぞ!」

「はっ!」


 原因は昨日の水だ。

 数日前にモンスターが発生する水を発見したと報告があった。


 眉唾物だったが、実際に目の前で動物がモンスターに変わるところを目撃したから疑いようもない事実だ。

 その情報が冒険者に恐怖を植え付け、この街から多くの冒険者を失う事に繋がった。


 今回の水もあのポイントから噴き出したと予想されている。

 もしそれが正しいとなると、地形の起伏の関係で街道の通行止めはかなり深刻な問題になる。


 あの場所は街のほぼ正面にあり、三つの街道を数キロに渡り塞いでしまう。


「こんな状況では護送のクエストは中止だ」

「わかりました」


 今朝から出発する手筈だったが、道が使えなければとてもじゃないが、護送はできない。


――――――――――


「あー」

「アニキ……これは……」

「コックのせいでもあり、コックのおかげでもあるな……」


 俺たちの食料はコックが買い出しに行く。

 その時、アイツは必ず買い食いをする。


 ガリガリだった面影はすでになく、数日でポッチャリ体型に足を踏み入れようとしていた。


 そんな情報はどっちでもいいんだ。

 アイツの食べ歩きのゴミや輸送時の落下物が驚きの結果を招いてしまった。


 シルクロードと呼ばれた道が歴史の教科書に出ていたが、内容は俺の頭からすでに抜け落ち本来の意味はわからない。きっとその道を通って商売をしていたのだろう。


 今俺たちの眼前に広がるのはベジタブルロード、野菜の道だ。


 ジャガイモ、ピーマン、ニンジン、トウモロコシ、豆、モヤシ、カブなど季節を無視して実っている。


 さらにオレンジ、リンゴ、ブドウなどの果物まで……。っというよりアイツは果物を持ち帰った事はないぞ?

 種を地面に捨てたから……育ったのか……。


 あとは、見たこともない野菜や果物たちだ。

 この森は今や食べ物の宝庫!


 俺たちは手当たり次第回収しアイテムボックスにしまっていく。植物は根ごと掘り起こし、同じく回収した。


「野菜を育てる時は魔力水を与えると成長が早かったのか……」


 一夜で実を付けるほど成長するんだから効果は絶大だろう。

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