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魔葬

 少し魔族の感性が披露されます。

 苦手な人は飛ばして後書きを読んでください。

「地獄の業火よ、オレの呼びかけに応じ、全てを焼き――」

「リーのお気に入りのアジトを壊す気か!」

「!」


 本当にリーのお気に入りかどうかは知らないが、マキナの突然の行動を止めるために出任せを言う。


 それにしてもなんて危なそうな魔法の詠唱を始めてるんだよ……。いきなり青空教室が火の海になるところだった。


 マキナがキレると危ないな。見境がなくなる。


「マキナちゃんの詠唱、カッコ良くなったねー」


 いや、シル……マキナを止めろ。


 魔法はイメージだ。詠唱はそのイメージをより鮮明にするために行われる。

 俺は恥ずかしくて詠唱をあまりしない……。


 例外は魔法の練習中やケルベロスに見せた魔法のように一発本番で魔法を放つ場合だ。

 実用可能レベルまで慣れたお風呂を入れる際の【ウォーター】や【ファイア】などは詠唱をせずに魔法名だけ言う。


 実は魔法名も心の中で終わらせる事ができるが、どうもあれは勇者限定の特典らしい。盗賊たちに【クリーン】をかけた時に勇者だとバレた。


「そ、そうか? 前からこんなもんだぜ?」


 めっちゃ嬉しそうだな!

 よくぞ気が付いてくれました。って顔をしている。


「おっさん、何見てんだよ。早く移動すんぞ」


 なんで俺だけ扱いが悪いんだ? やっぱりハゲだからか?

 最近魔族にモテてたから、モテ期を満喫してたのに、マキナの態度で現実に戻された。


「向こうに俺の魔法練習場がある。そこなら思う存分戦えるだろ……」

「シロウ、頑張れ」


 シルが俺の背中に飛びついてきた。仕方なく負んぶする。


「ちっ!」


 マキナは俺とシルが戯れると面白くなさそうだ。

 マキナの初手は火魔法でほぼ確定だよな。


 ゴンザスに渡した『火炎の斧』から判断しても、火が得意だと思われる。


 俺たちはいつもの森に来た。道中はマキナの威圧を浴びてモンスターが散っていく。

 俺でもモンスターを散らすほどの威圧感を出せないのに、魔族って恐ろしい。


 マキナは魔法を行使するだけだから、戦闘形態にはならないようだ。肉弾戦はほぼないと見ていいな。


「俺たちが戦ってもリーは喜ばないよ?」

「おっさんにリーの何がわかる!」


 うわー。逆効果……。


「地獄の業火よ、オレの呼びかけに応じ、全てを焼き尽くせ! 【インフェルノ】」


 両手を突き出したマキナから火炎が放たれる。

 飛来した火炎は俺の周囲に落下し、あっという間に灼熱地獄と化す。

 それに呼応して地面からもマグマが噴き出した。


 シルは空に飛んで逃げる。

 俺の魔法は制御が難しい。近くにシルがいると巻き込んでしまう。


「【ウォーター】」


 俺は自分が海に沈むイメージをしながら魔法を放つ。詠唱をしている時間はない。魔力はこの際無視だ。好きなだけ食らいやがれ!

 俺を中心に水が溢れ出す。マグマはすぐに冷え固まり、空に逃げ遅れたマキナは大津波に流されていく。



「初めて本気で魔法を放ったな……」


 今回は意識的に魔法を暴走させた。

 その結果、俺はシルに襟首を掴まれて空を移動している。


「シロウまで溺れないでよね……」

「……面目ない」


 俺は子供の頃、海で溺れた事がある。

 準備運動が足りなかったのか、沖で足を吊り生死をさ迷った。

 それ以来足のつかないところでは泳げなくなってしまった。

 俺の海のイメージは溺れてるイメージでその想像力は凄まじいものだ。


 いくら俺の魔力がすごいと言ってもここは陸地。きれいな平坦とは言えなくても俺の背丈までは水没しないと……そう思っていた。


 しかし、現実は大きく違う。

 シル(いわ)く俺を中心に七メートル以上の水の層が突如として生まれたそうだ。


 もちろん俺はすぐに魔法を解除しようとしたがすでに支払った魔力が膨大すぎて水の勢いは全然収まらない。苦い思い出が蘇った俺は体が硬直して、ただ水に流されるだけだった。


 そこをシルが拾い上げてくれたというわけだ。

 まさか初めて死にかけたのが、自分の魔法という情けなさ。


 大地は広く水の供給が止まったため、水の層は徐々に消えたのだが……。

 ここで問題が発生する。


「完全に二次災害だな……」


 シルが俺の作った水で水浴びをした結果、魔力水が魔水に変わったように、マキナが水に流されて水まみれになった事は同じルートをたどるようだ。


 動物たちが次々にモンスターに変異していく……。

 その範囲は水が広がる速度と同じ速度で広がっていくため、もはや止めようがない。


「冒険者の皆さん、確変中ですよ……」


 ハエや蝶のような小型の虫が水に触れるだけでいきなり巨大化して飛び立つ映像はなかなかにシュールだ。


「どうしたらいいと思う?」

「まずはマキナちゃんを見つけて水から拾い上げるのがいいかな」

「シル……頑張ってくれ」


 最初の予定から何も変わっていない。

 とにかくマキナを捜すのが最重要事項。

 俺はマキナの立ち位置、水の勢いを計算してマキナがいるであろうポイントを目指す。


「マキナ、発見。正面少し右に約一キロ」

「シロウ……よく見えるね」

「この体のおかげだ。それよりも時間がない。マキナが死にかけてるぞ」


 目を凝らすとステータスが表示される。

 それは点サイズの小ささでも可能だ。


――――ステータス――――

 名前 マキナーゼ

 性別 ♀

 職業 魔族

 レベル 三七


 体力 二七/五三〇

 魔力 〇/一七三二


 力  二二〇

 賢さ 四三一

 耐久 一二三

 敏捷 一〇五



 称号

・魔王軍四天王


 能力

・魔術

――――――――――


 俺が魔法を放った地点から二キロぐらい離れているにも関わらず、水深はまだ三センチ以上ある。

 俺はシルに襟首を離してもらい、地上に降りてダッシュ。


「ギリギリセーフ!」


 マキナはうつ伏せの状態で発見された。口と鼻が水に浸かり、溺死寸前。

 角に触れて魔力を回復させてやるが、体力がなかなか回復しない。どうやら大量の水を飲んでいるようだ。


 俺はマキナを抱きかかえ、下を向かせて背中を叩く。

 すぐに大量の水が口から出てきた。


「シロウ、マキナちゃんに【クリーン】を使ってあげて」

「その手があったか。【クリーン】」


 水は付着物扱いだったため、気道からも除去される。泥とかも飲んだだろうが、これで一先(ひとま)ずキレイになった。


 角を触ってからステータスを見ると体力魔力ともに最大値まで回復している。

 マキナを水から引き上げてシルに手渡した。


 これ……服濡れてるから、もう一回【クリーン】だな。


「【クリーン】」


 このままでは水が魔水のままだ。俺は水に右手を入れ魔力を流す。ポーション作りと同じ要領だ。


 シルの予想ではこれで魔水が魔力水に戻るはず。

 水のステータスを確認すると魔水→魔力水に変化した。


 用事が終わった俺たちは急いでこの地を離れる。俺はダッシュで、シルはマキナを抱えて飛行した。


「シロウ、マキナちゃんが目覚める前に『絶対服従の誓い』を終わらせるよ」

「シル……さすがにそれは……」


 移動中にシルがそんな事を言うが、幼女が気絶しているうちに終わらせるのは、何か違う気がする。


「シロウはマキナちゃんに勝った。その権利がある!」


 シルが嫌がっていた悪しき行為に近い。角を返して欲しければ俺に従えってやつだ。


「マキナちゃんはひねくれ者だから、負けたら自分が許せなくて自害しちゃう! 私の親友を救うと思って。シロウ、お願い!」


「んー。熱しやすく冷めやすい感じだったからな……。お風呂に入れれば一日で角は回復するか……」


 俺は自分に言い聞かせるように言い訳をしながら、無抵抗のマキナの角を槍で斬る。

 切断面に俺の血を塗って元に戻した。

 三度も経験するとすでにベテランの域だ。



 そして夜。盗賊のアジトの俺の部屋。


「あれ……オレ……。そうか、おっさんにケンカを売って、あっさり負けたのか。その上『絶対服従の誓い』まで……」


 目を覚ましたら魔力が失われており、すぐに体の異変に気が付いた。

 それを裏付けるように頭に触れ、角が消えている事を確認する。


「おはよう」

「おっさん……強いんだな……。オレの完敗だ。オレはもうおっさんに逆らう気はない。オレにできる事があったら何でも言ってくれ……。その……リーが嫌がる事でもオレがリーの代わりにするからよ……」


「マキナちゃんは三番目だよ。リーちゃんはすでに二番目宣言してるんだからね。そんなリーちゃんがシロウ相手に嫌がるわけないじゃない」


「そうか。リーの奴は二番目……、オレは三番目……。わかった、オレは三番目だ! おっさん、これからもよろしくな! 魔力が使えないから足手まといになっちまうけどよ……」


「その一番目とか三番目って何の話をしてるんだ?」


 結構気にはなっていたが、聞いていいものなのか判断がつかなかった。

 実は妻の順番とか勝手に決めてたとかないよな?


「えっ? シロウが死んだ後の体の分配。その優先順位だよ。シロウは人間だから、どうしても私たち魔族よりも寿命が短いでしょ?」

「…………」


 なにその物騒な取り決め……。

 予想の遥か斜め上を行ったぞ。

 魔族はやっぱり人間よりも寿命が長いのか……。


 俺が死んだ後にシルたちが少しでも寂しくならないなら、それでもいいかなと思ってしまう……。


 日本が火葬なだけで、海外では土に埋める土葬や鳥に食べさせる鳥葬なんかもあるから、体を分配するのは魔葬って事になるのかな?


「シルは……大本命の頭か?」

「実は左腕も捨てがたくて……」

「左腕?」

「うん! 私を包む左腕。あとはお風呂で座る左足も……。シロウの体は人気だから困っちゃうね!」


 今から生々しい会話はやめてくれ……。

 俺はまだまだ死ぬ気はないぞ。

 二人を残してお風呂を入れに行く。


 当たり前のように狭いお風呂に三人で入った。

 シルは俺の左足の上に、マキナは右足の上に座る。


「これが足の魅力か……リーが選ばなかったらオレは右足をもらうかな」


 お風呂を満喫した効果なのか、俺の死後、右足の予約が入ってしまった。おっさんにはまだまだ魔族の感性がよくわからん。

 足もらって嬉しいのか?

 シロウとマキナが対決。

 マキナの火魔法をシロウが水魔法で海を再現し周囲を水浸しにします。

 水魔法に飲み込まれたマキナだったが、ここで問題が発生。

 シルが水浴びをした時同様に水が魔力水→魔水になってしまう。

 なんとか水からマキナを拾い上げ、魔水→魔力水に戻します。


 気絶したマキナは敗者の烙印『絶対服従の誓い』を受ける。

 マキナの角を治すため、三人でお風呂に入りました。



『おもしろかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、


評価やブックマークをしていただけると、すごくうれしいです。


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