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絶対服従の誓い

 シルと初めて出会った森に到着した。

 月明かりに照らされた魔法訓練場にシルが立っている。


「シロウが現れない事を願ってたんだけどな……」

「俺は約束を守る男だ」

「そっか」


 シルの体から魔力が溢れ出す。

 戦闘モードに入ったシルは幼女の姿から大人の姿になった。

 腰まであった長い髪は、背が伸びた事で背中までになる。


 ビキニのようだった鎧はハイレグのような鎧に変わりより際どいラインしか隠せていない。

 顔立ちもシャープになり、幼かった顔が大人びる。それでも一目でシルだとわかるぐらいには幼少期の顔を引き継いでいた。


「子供の姿じゃないと一緒にお風呂に入ってくれないみたいだから、この姿を見せたくなかったんだよね……」

「シルは超美人だな」

「惚れた?」

「ああ。年甲斐もなく一目惚れした」

「でも、駄~目♪ 私がシロウを飼うんだから♪ ウフフ」


 大人になると口調まで魅力的に変わるようだ。

 能力『誘惑』だったか。

 シルの声を聞いてるだけで、心が洗われる。

 すでに術中にはまっているのかな?


「シルから仕掛けていいぞ」

「そういうシロウも素敵よ♪」


 地面を蹴って一直線に突っ込んで来た。手には俺と同じく槍が握られている。真っ黒い槍だが、月明かりを反射して光っている。

 四天王というだけあって、シルの実力は相当なものだろう。

 俺が今まで出会った誰よりも速い。


 だが、俺の本気の前では赤子と同じだ。

 近付いてきたシルの横をすり抜けて、槍で角を一閃。角はシルから切り離され俺の手に落ちた。


「うそ……。シロウの動きが見えなかった」


 魔力の使用ができなくなったシルは地面に膝をつき、幼女の姿に戻る。


「どうして……どうして角を狙ったのよ。角を失ったら魔力を失うって教えたよね……? 私、シロウの事好きになってたのに……」


 シルは戦闘に負けた事よりも俺に裏切られた気持ちでいっぱいのようだ。涙を流して顔をぐちゃぐちゃにしている。


 俺は槍で自分の指を斬った。


「シル? 血はどこに塗ればいいんだ?」

「え? 角を返してくれるの?」

「これでシルは俺の物になるんだろ?」

「うん、なる。シロウ……大好き♪」


 シルは立ち上がろうとして転ける。魔力が使えないと女児レベルまで力がなくなるようだ。

 俺はシルを抱き起こす。


「角の切断面にシロウの血を塗って……」

「おう」


 言われた通りに角に血を塗る。角の切断面は結構キレイに斬れたな。ツルツルしている。


「次は?」

「頭に角の根元が残ってるはずだから、それにくっつけて」

「えーっと角度は……」


 左右の角が対称になるように睨めっこしながら、慎重にくっつけた。

 修復作業に入るため、魔族の角、翼、尻尾、鎧は体の中に吸い込まれる。

 鎧が消えるとシルは裸だ。


 俺は慌ててアイテムボックスの中から服を出して着せた。

 子供に大人の服は大きすぎて裾が膝まできている。これではズボンは無理だな。


「これで私はシロウの物です。一ヶ月間魔力が使えませんが……」

「俺がきちんと養ってやる、心配するな」

「お願いします」


 頭を撫でながら言うと抱きついてきた。


「帰ったら、もう一回お風呂に入るかな……」

「是非ご一緒させてください!」

「強制じゃないぞ?」

「……馬鹿!」


 俺は力を失ったシルをお姫様抱っこして盗賊のアジトに向かう。

 お風呂に入る前に酒盛りをしていたみんなにシルを紹介する。


「アニキ……さすがに幼女に手を出したら駄目ですよ……」


 っと盗賊のボスに言われた。

 大丈夫だ。俺にロリコン趣味はない。

 シルが魔族である証明もできなくなったし、ロリコン趣味は否定はするけど、証明できるまでは甘んじて受け入れよう。


 一緒にお風呂に入るが、鎧を装備していたシルと違って、ハードルがかなり上がった。

 それにシルの大人モードを見てしまったからな……。正直あれは反則だ。


「……シロウ?」

「なんでもない」

「ウフフ♪ その顔は私の魅力に当てられた?」

「俺に幼女趣味はないぞ!」

「そう言っていられるのも一ヶ月間だけだよ?」


 ヤバい。主導権をシルに奪われている。

 俺が一目惚れした相手が目の前の幼女の成長した姿であったとしても、幼女のシルなら一緒にお風呂に入っても大丈夫だ。


「シルが不埒な事をするなら、お風呂は別々にします!」

「意気地なし!」


 この日から俺はお風呂でシルにからかわれ続ける事になる。


 転生二日目終了。


――――――――――


《勇者:斉藤翼》


「かったりーな」

「ちょっと、翼。兵士に聞こえるわよ」


 王宮のイメージ通り、部屋の前には兵士やメイド服を着た侍女が立っている。

 呼べばすぐ来るが、目つきや表情でわかる。

 コイツ等は味方じゃねー。ただの監視役だ。


 コンコンッと部屋がノックされて侍女が扉越しに声をかけてくる。


「勇者様、今よろしいでしょうか?」

「なんだ?」


 了承と受け取った侍女が部屋に入ってきた。


「王様より、勇者様方四名にモンスターの討伐要請が届いております」

「モンスター討伐だってよ。王宮の中で稽古ばっかりじゃつまんねーよ。城の外に行こうぜ!」


 和哉の意見は一理ある。

 どこもかしこも監視ばかりで息が詰まる。


 稽古という名のイビリも最悪だった。

 自分たちはお前たちより強いんだと言わんばかりだ。


「場所はどこだ?」

「案内の者を付けますので、城門でお待ちください」


 やはり監視は付くんだな。

 初めてのモンスター討伐、ワクワクしてきたぜ。


 俺たちはそれぞれの部屋で装備を身に付ける。

 俺が今持っている剣は二本目だ。

 一本目は試し斬りで部屋の石壁を斬りつけたら、あっさり折れやがった……。

 勇者様、勇者様という割にはショボい装備しか渡されてないんじゃないか?



「あの壁……。すごいよね」


 中庭に出るとどうしても目につくのは、崩れ去った城壁だ。

 突然崩壊して原因不明って事になっているが、鉄筋の入った壁がそう簡単に崩れるか?


 タイミング的におっさんが絡んでるんだろうが。

 どうやったらあんな風に壁を壊せるんだよ。


「おせーし。もう先に行こーぜ」

「さんせー」

「「二人とも!」」


 城門を警備する門番に王様からモンスター討伐の要請があった旨を伝えたのに、確認して参りますと言って通しやがらねー。


「勇者様方、お待たせしました。それでは参りましょうか」


 ガチャガチャ鎧のぶつかる音をさせる奴が、先頭を歩く。訓練の時に顔を見たな。隊長だったか?

 門番が城に確認に行ってるのに、コイツがいると、門番は道をあける。


「気に食わねーな」

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