コック暴走
盗賊のアジトに帰還した。
「ただいま」
「アニキ、お帰り」
「すげぇ探して服を買ってきましたよ!」
「おう、そうか。すまんな。さっそく出してくれ!」
食堂に行き、アイテムボックスから長テーブルを出した。
コックのカバンから出てきた服を見て俺は愕然とする。
上等な生地ではないが、盗賊たちが着ていたようなボロ切れ一歩手前でもない。
「なんで全部ツナギなんだよ……。普通のを買ってこい! ラフな服装があっただろ? もう一度だ。それと口にソースが付いてるぞ。なに一人で買い食いしてんだよ!」
新人に飲み物を頼んだら別のを買ってこられた気分だ。しかもお釣りをちょろまかしていやがる。
「屋台で売ってた、ラーメン、串焼き五本、それから……」
何を食ったか聞いたわけじゃないんだが……。
このコック大丈夫か?
「お土産もあったんでした」
厨房に下がったコックが木の器を人数分持ってくる。
中身はデローンとしたラーメン。
汁は麺に吸われなくなり、麺は細麺のうどんのようにのびている。
「うめーな。こんなうめーもん久しぶりに食ったぞ! アニキは食べないんですか?」
「食っていいぞ」
「ありがとうございます!」
洞窟に引きこもってる盗賊たちには大人気だった。本物のラーメンを知らなければ、そういう反応なのだろうか……。
「フード付の服の上から着れる上着みたいなのってないか?」
「アニキ、それは外套って言って雨の日に着るやつですね。今日は晴れてますよ?」
「あると頭を隠せるからな……」
「アニキはハゲですもんね」
嫌みのない感じがすごい。言うなれば足のサイズが人より大きいからね。みたいなニュアンスだ。
「アニキ、このツナギだかって服は着ないんですか?」
「あぁ。着ていいぞ」
「俺これにします」
おい! コック! 俺これにしますってカバンから新たなツナギを出してきたぞ。お前、俺の金で自分のツナギ買ってんじゃねーか!
水色で少しカッコいいし。それにパッと見ただけで生地が上等だ……。
盗賊のボスが部屋で着替えて出てきた。薄茶のツナギにボサボサの髪、無精ひげがちょいワル親父っぽくて、すげぇ似合いやがる。
コックの足だと街まで片道三〇分かかるそうだ。買い物も考えると一時間は余裕がある。
ブラウンベアのモンスターボックスをチェックし、進化画面を確認する。
ブルーベア。胸の毛皮が茶色から青色になった。
レベルは一に戻るがステータスは引き継がれる。
レベルが一になったので、レベル上げを再開。
出現モンスター【ランダム】
対戦相手の強さ【同レベル】
同時出現数【二体】
繰り返し設定【オン】
ワイルドスネークはシャドースネークに進化。
出現モンスター【獣】
対戦相手の強さ【格下】
同時出現数【一体】
繰り返し設定【オン】
ジワジワいたぶるのがこの世界のスネークの戦術だ。一体ずつ相手にしてもらおう。
下位モンスターのスネーク→ワイルドスネークに。ネズミ、ウサギ、クモ、シカ、タヌキ、キツネもそれぞれ進化させた。
「俺は森を散策してくる」
「アニキ、いってらっしゃい」
――――――――――
《リーカナ王国:王様》
「勇者たちの様子はどうだ?」
「ダメですね……並以下でした……」
「どうやらあのハゲが本物の勇者だったようです」
ルフプーレとチェルの評価を聞いて、頭を抱える。
二人の報告を聞く前から結果はわかっていた。そうだ、余は認めたくなかった。
「ダメだ。ハゲでは皆が納得しない」
そんな者を勇者だと発表すれば余の名声は地に落ちる。
「何としても勇者を鍛えあげてくれ」
「「はっ!」」




