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◆96.手紙

響生は、骨髄移植をするために、無菌室に入り治療を始めることになった。


まだ何もわからず、笑顔を振りまく響生が愛しくて仕方がなかった。

これから待ち受ける、辛い治療に耐えなければ、移植を受けることができない。

響生はきっと耐えてくれるだろう。

私はそれを、何が何でも支えていかなければならない。

それが、私にできる唯一のことなのだから・・・。



今日は、朝から、沙希が顔を出してくれた。


「響生くん、がんばってるね。私にできることあったら何でも言ってね」

沙希のやさしい言葉をただ素直に嬉しいと感じた。

「ありがとう。沙希ちゃんが顔を見せてくれるだけで、嬉しいよ」

沙希は私の言葉に少し照れたように

「余計なお世話だと思ったんだけど、今日は私がお花じゃなくて、これを届けにきました!!」

そう言うと、小さな包みを私に手渡した。

「なにこれ?開けてもいいの?」

沙希はコクリと頷いた。


綺麗に包装されたラッピングを丁寧にはがしていく。

「これは?」

中には1枚のCDが入っていた。

「あのね、五十嵐さんに、届けてほしいって言われて、持ってきちゃった」

沙希はぺろりと舌を出しておどけたような顔をした。

「・・・。ありがとう」

CDのケースを開けると、1枚の手紙が入っていた。



------------------------------------------------------------------


『ひびき』 


手の届かない場所に居て     

同じような音を奏でる       

君の存在に今気付いた     


何も知らなかったからと     

片付けられない

二人繋げる何かも   

愛しさが胸に響く       

こんな日は           


高層ビルの隙間から       

君のいる場所探して       

月明かりに照らされた      

明かりの燈った窓を見つけては 

祈るよ              


君の前では泣かない       

僕の前でほら笑って       

二人で奏でる命の響き      

大切に育んでいこう       

何も心配しないで     


   



手が届きそうな気がしても

届かない現実に

君の存在の大きさを知る


例え想いは叶わなくとも

遠くの君に響け

共に奏でた日々を

簡単には諦められない

愛してる・・・


あの時の笑顔まで

僕から奪い去ることは

できないと叫んでる

夏が来て秋が過ぎ冬を迎えて

繰り返す


君の事ならこの僕が

僕の事なら君だけが

一番分かるよ心の響き

ゆっくりと歩み寄ろう

何も怖がらないで




※1番は響生を思って、そして2番は君を思って作ったんだ

気に入ってくれるといいな

僕も、数日後には病院に入ります

遠くから響生と君が頑張ってくれることを祈っています

五十嵐 雅弘



------------------------------------------------------------


私は、雅弘からの手紙を何度も何度も読み返した。


そして、これから待ち受ける、想像のできない現実をきちんと受け止めていこうと決意した。

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