◆91.2通のメール
携帯のランプがメールの届いたことを知らせている。
誰からだろう・・・?
私は携帯を開き、中を確認する。
もう季節は夏を迎えようとしている。
何時も同じ温度の病室で、季節の変化など気になることはなかった。
唯一、病院の窓から見える景色でしかそれを知りうることはできなかった。
メールは2件。
1件は沙希からのメールだった。
今年の冬、金沢で会ってから、沙希とは連絡を取ることもなかった。
”玲香ちゃん、元気にしてますか?私は何とか生きてるよ!!彰人をようやく見つけました!!
でも、まだまだ話をしなくちゃいけないことが沢山あって、ちょっと落ち込んでるよぉ。でもでも、がんばるぞ!!また金沢に遊びに行くよぉぉ”
メールの内容から、以前の沙希を取り戻しつつあることは、すぐにわかった。
私は慌ててメールを送る。
”沙希ちゃんが元気になってくれてよかった!!心配してたんだけど、なかなかメールできなくてごめんね。今東京に来ています。響生が入院しているので、ずっと病院に缶詰です。回復することを信じてがんばっています。何にもしてあげられないけど、沙希ちゃんもがんばって!!”
できる限りの沙希への応援。
そして自分自身への励まし・・・。
久しぶりに沙希との楽しかった思い出が蘇る。
そしてもう1通。
”急遽金沢に戻らないといけなくなった。とりあえず今日はそっちに顔を出す”
聡からのメールだった。
金沢に戻るってどういうことなんだろう?
私は何がなんだかわからなくなった。
”金沢に戻るってどういうことなの?”
短いメールを送る。
この状態で金沢に戻ることなんてできない。
私は現状が把握できずに途方にくれていた。




