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◆89.証拠

数日後、私は医師に雅弘のことを話した。


医師は真実を知り、驚きを隠せないといった表情をしていたが、響生を助ける可能性が少しでもあるのであれば協力したいと申し出てくれた。


医師の配慮で、雅弘は、提携先の病院で骨髄が適合するかを調べることになった。

万が一適合するようであれば、その先のことは、そのときに考えればいい・・・。


もともと、骨髄移植のドナーは、移植した後も誰なのかわからないままなのである。

そこを利用していくしかないだろうと、医師は考えていたようだった。



雅弘は無事検査を終えて、私に連絡をくれた。

「無事終わったから」

「本当にありがとうございました。本当に・・・・」

私は、心から雅弘に感謝した。

「結果がわかったら、また教えてくれる?僕はどんなことでも協力するつもりだから」

「本当にありがとう。なんてお礼を言っていいのわからない」

「お礼なんていいんだよ。僕にできることがあったってことが、本当に嬉しかったから」

雅弘はそう言うと

「それじゃあ、また何かあったら連絡してね。辛いときは僕でよければ、話を聞くことくらいならできるからね」

「本当に、ありがとう」

「もういいって。じゃ、またね」

雅弘の優しさが嬉しかった。


もう二度と会わないと決めていたはずなのに、こんな風に私達は、再会してしまった。

ただ、言えることは、私達はこれまでの感情とは違う、何かを感じていた。


これまでは、お互いが別々に守るべきものを抱えていた。

そして今は、お互いが一つの守るべきものを守りたいという気持ちが、私達を動かしていた。



骨髄が適合するという結果が出たのは、しばらくしてからだった。

「1つを覗いては、全て合っています。今は白血球のほうも、悪い菌が一番少ない状態になっていますから、移植をするのであれば早いほうがいいかもしれません」

私は医師に急かされるようにして、雅弘に連絡を入れた。


「もしもし・・・・」

「玲香ちゃん、結果が出たんだね?」

「はい。五十嵐さんに骨髄移植をお願いできますか?」

「もちろんだよ。僕と響生はちゃんとつながっていたんだね。見えないもので・・・」

雅弘はそう言うと、しばらく黙っていた。

「ごめんね。玲香ちゃんの言葉を信じていなかったわけじゃないんだ。響生に初めて会ったときから、何かを感じていたんだ。でも、ちゃんとした証拠がなくて、今それをやっと手に入れることができた」

雅弘は嬉しそうだった。

「予定はいつでもいいから。ちゃんと空けるから。響生を助けたいんだ」

「本当にありがとう。詳しいことがわかったら、またお願いすることになると思います。よろしくお願いします」

私はそう言って電話を切った。

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