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◆81.罪と罰

病室へ続く廊下は、果てしなく長く感じられた。


私の目からは涙が溢れ、止めることができなくなっていた。


ただ真っ直ぐの続く廊下を、私は声を殺し、嗚咽を飲み込みながら、前に進んだ。



病室の前に着くと、母と優生の笑い声が聞こえてくる。

「響生は、おりこうだからね、すぐにおうちに帰れるよ」

「優生のおもちゃ貸してあげるからね」

いつもと代わりない会話が私の悲しみをさらに増していく。


コンコン・・・

私は、勢いに任せてノックをする。


「はい」

「入るね」

私は、深呼吸をしてから、部屋へと入った。


「どうやった?」

母はそう言って私の顔を見ると

「ちょっと、飲み物でも買ってきなさい。どっかに自販機あるやろ?」

そう言いながら立ち上がり、私の背中を押して、ドアに向けた。


「玲香、何があっても子供達の前で泣いたらダメやよ。いいね」

耳もとで小さく囁かれ、私はコクリと頷く。

「聡さんにも連絡入れてきなさい」

そう言って母はドアを開け私を病室の外に出した。

「泣きたいなら泣いてきてもいいから、でも、ちゃんと整理して戻ってらっしゃい」

母の言葉に私はこらえていたものが、また溢れそうになった。

「お母さんありがとう」

私はそれを言うだけで精一杯だった。



一人で歩く廊下は私の気持ちを、さらに深い悲しみへと誘っていく。


私は携帯を手に取り、聡へと連絡を入れる。

「もしもし」

「おぉ。結果わかったのか?」

「・・う・・ん」

「で、どうだった?」

「白血病だって・・・」

聡の返事がない。

「なに?白血病ってがんじゃないのか?」

「そうだよ、血液のがんだよ」

「何でだよ。何で何だよ。何でお前が気付いてやらなかったんだよ」

聡は泣いていた。

そして、私を攻めた。

「ごめんなさい。私気が付かなくて。そんなことになってるなんて」

「今すぐそっち向かうから、いいな」

「はい」

私は聡の電話を切ってから、静まり返った総合受付に並んだ椅子にポツリと一人腰掛けた。


私は聡や優生そして母までも裏切ってきた。

その罰だ。

罰なら何故私に与えてくれないのだろう。

響生には何も罪はないのに・・・。

どん底に突き落とされタ私は、ただ一人泣くことしかできずにいた。

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