◆80.70%
夕方になって、血液外来の医師が病室を訪ねた。
「響生くん。検査がんばりましたね」
そう言うと、響生をあやしてくれる。
「結果が出ましたので、お話をさせていただきたいのですが、よろしいですか?」
私はごくりと唾を飲み込み、黙って頷いた。
「ご主人は、いつごろいらっしゃいますか?」
医師は表情を曇らせて、そう言った。
「仕事でこちらにはいつこれるのかわかりません」
「そうですか・・・」
医師はそう言うと
「では、お母さんに一人でお話させていただいてもいいですか?」
「・・・はい」
私はただ返事をすることしかできないでいた。
コンコン・・・
ノックの音だけが、静かな病室に響き渡る。
「はい」
私が返事をする前に、ドアは少しづつ開かれた。
「響生どうね?」
そこには、母と優生の姿があった。
「ひびき、どこかいたいの?」
優生も母も心配そうに響生のベッドに近づいていく。
「私、これから先生のお話を聞くから、響生お願いしてもいい?」
「いいよ、いってらっしゃい」
私は母に響生を任せ、医師の後を歩いていた。
「それじゃあ、こちらにおかけください」
小さな部屋で、先ほどの外来の医師が先に座って待っていた。
私は言われるがままに、椅子に腰をかける。
「結果ですが、病名は『急性リンパ性白血病』です」
私の頭の中は真っ白になっていた。
「・・・・。」
「リンパ性ですので、治癒率は70%と高いものです。しっかりと治療していきましょう」
その後、二人の医師が交互に説明をしてくれたが、私はほとんどの言葉を聞くことができなかった。
「死んじゃうんですか?」
私は涙でにじむ医師の顔を見つめながら、そう訪ねることだけで精一杯だった。
「きちんと治療していけば、よい結果がえられるとおもいますので、がんばって治療していきましょう」
私にはそれがただの気休めにしか聞こえなかった。
「ありがとうございました。よろしくおねがいします」
私はそう言うと、病室に戻った。




