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◆64.幸せな時間

雅弘と別れてから4ヶ月が過ぎようとしていた。


私達は、お正月を金沢で迎え、そのまま母と父と共に暮らしている。


聡は、相変わらず忙しそうに東京と金沢を往復している。

ただ、これまでと違うのは、金沢に寄ったときは必ず、一緒に過ごすようにしてくれる。

何の不自由のない生活を、当たり前のように送っている。


小さかったお腹も少しずつ大きくなり、まだ見ぬわが子への愛しさが、日に日に増していくことがとても幸せに感じる。

あれは幻だったのかもしれない。

少しずつそう思えるようになってきた。

そして、雅弘への思いも少しずつ薄れていくような気がして、私はこれからを大切にしたいと毎日思っていた。



「ママ、きょうはさくら、みにいこうよ」

優生は私の手を引き、そう言って拗ねていた。

「優生ちゃん。ママをそんな風に引っ張ったらダメやろ?おばあちゃんと一緒に行こうか?」

母は優生を本当に可愛がってくれる。

「イヤだ。ママといく!!」

優生はここではお姫様のように扱われているからか、少しわがままになってきたかもしれない。

「じゃあ、おじいちゃんと行くか?」

父も同じように優生を可愛がってくれる。

「イヤだ、ママとがいい!!」

「もう、しょうがないんだから!!ママと一緒がいいの?」

優生は小さく頷いて、私の手を掴む。


「それじゃ、お母さんちょっと行ってくるね」

私は、優生と手をつなぎ、近くの公園に出かけた。

春の風が私達のこれからを後押ししてくれている。

「ママ、このさくら、おおきいよ!!」

私は桜の木を見上げて、ふと去年のことを思い出す。


そう、あれは突然の出来事だった。

雅弘と出会い、お互いを求め合うようにして愛し合った。

そして、この子がいる。

今頃雅弘は何をしているのだろう・・・。

これまで我慢していたはずの気持ちが、抑え切れないほど大きくなって私に襲い掛かろうとしていた。


あの時、ホテルのドアの前で泣きながら誓った。

これ以上誰も苦しめないと・・・。

だから、もう私は後戻りはしない。


そう思いながら、桜の木をまた見上げた。


私の少し大きくなったお腹の中で、小さな命が「ここにいるよ」と言っているように

「動いた・・・」

私はお腹を擦りながら

「大丈夫、ママが絶対に守るから」

私は、雅弘の影を未だに負っていた自分を今度こそ捨て去ることを桜とお腹の中の子に誓った。

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