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◆54.難題

あれから、並木道の葉は全て落ち、東京にも冬が訪れる事を知らせていた。


聡は毎日のように忙しそうに仕事をこなしている。

ただ、以前と違うこと、それは、どんなに忙しくても、私達を気にかけてくれることだった。


優生もすっかり明るさを取り戻し元気に幼稚園に行っている。


私も毎日お店に行って、仕事をしている。


2週間に一度は、母が東京にやってきては、優生の面倒を見てくれる。

そして私は、母に優生を預け、雅弘との時間を過ごす。


この数ヶ月、同じようなことを繰り返し、時間は過ぎていった。


私達は会うたびに一つになり、会えない時間の淋しさを埋めようとしていた。

そして、またお互いへの想いを強く深いものにしていった。



テレビでは、東京にも今晩には初雪が降りそうだと伝えていた。


聡はいつもより早く帰ってきた。

「優生、誕生日おめでとう」

聡はリボンの付いたプレゼントを優生に差し出した。

「パパ、ありがとう」

優生はそれを受け取ると

「開けていい?」

キラキラした目で私達に聞いてくる。

「いいよ。開けてごらんよ」

聡は嬉しそうに優生を見つめている。


どこにでもいる幸せな家族の時間。

私が幼いときから夢に描いていた光景がここにあった。


私は、聡と優生を眺めながら、夕食の準備をする。


「お正月はちゃんとお休みを取るからな」

聡は優生と楽しそうに話している。

「じゃあ、おばあちゃんとこにいこうよ」

「おぉ、いいぞ」

私は二人の会話を聞きながら、冷蔵庫のカレンダーに目をやった。


ふと、思い出したように私は指を折って数を数えた。


来るはずのものが来ていない!!


私は何度も指を折って数え直してみた。

もう10日も遅れている。


私は、聡たちに気付かれないように、自分の記憶をゆっくりと辿ってみた。


あれから聡とは何度か一緒に夜を過ごしたことがあった。

でも、生理が遅れるようなことになる日ではなかった。


だとしたら・・・・。


私の頭に雅弘の顔が浮かんだ。


(どうしよう・・・・。)


その日の夜、聡は私を自分のベッドへと誘った。


「ごめんね。今日は無理そう」

私の言葉に戸惑いながらも

「イヤなら別にいいけど・・・」

聡は私に背中を向け、それを丸めた。

「聡、ごめんね。今日はどうしても無理かもしれない」

「いいよ」

聡は淋しそうだった。

でも私は、聡の誘いをどうしても受け入れることができなかった。


モヤモヤとした、結果の見えない難題を抱えてしまった私は、この日一睡もする事なく、朝を迎えた。

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