◆44.聡との夜
シャワーを浴びて、バスルームを出ると、既に部屋の中は真っ暗だった。
聡はもう眠ってしまったのかもしれない。
そう思うと、少し気分が楽になった。
そっと寝室のドアを開ける。
聡は既にベッドで横になっていた。
私は聡を起こさないように静かに隣に入った。
「シャワー終わったのか?」
「うん」
「いいか?」
私は黙って頷いた。
聡はそっと唇を押し当て、私の体をなぞっていく。
私にはその唇がまだ冷たく感じられた。
雅弘の暖かさとは全く違っていたからだ。
「ねえ、朝は笑顔でウチを出るって約束して」
「あぁ」
少し距離の開いてしまった私たち。
気がつけば、心だけではなく、体も離れていた。
「ねえ、これから私たち、上手くやっていけるよね?」
「あぁ。努力する」
聡の言葉にそっと頷き、私は全てを任せた。
その時私は、覆いかぶさる聡の背中の先に雅弘を求めている自分を、止めることができなかった。
また、今日の雅弘の言葉を思い出す。
「もしかしたら、ご主人に抱かれてるんじゃないかって考えると、血の気が引く」
そう、私は今聡に抱かれている。
しかも、ついさっきまでは、雅弘に全てを任たこの体を、今度は聡に委ねている。
私は、なんて女なんだろう。
こんなことが平気でできてしまう自分が恨めしく、怖かった。
私は聡の腕の中で、雅弘も同じように奥さんとの時間を過ごしていることを想像して、寂しさと不安を感じていた。




