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◆33.罪悪感

あれから2週間。


私はいつものようにお店に向かっていた。



あの日から一人でいる時間は彼のことを考えることが多くなった。

でも、彼からの連絡は全くない。


聡との関係は相変わらずで、毎朝必要最低限のことを話すだけだ。

優生がいないと家の中はがらんとした空洞のような空間でしかない。

今までの私なら、ここで挫けてしまっていただろう。

でも、今の私はあの日の記憶を頼りに、毎日を過ごしている。


都合が良すぎるかもしれないけれど、家庭を壊すつもりはない。

きっと彼もそうだ。

ただ、お互いを思う気持ちを素直に伝えただけなのだ。

そして二人は結ばれた。

それでいい。

これ以上は何も望まない。

もし、このまま彼からの連絡がなくとも・・・・。


お店に着くと、店長が店の前の掃除をしていた。

「おはよう玲香ちゃん。今日は特別早いね」

店長の額から大きな汗が流れ落ちた。

「家にいてもすることがなくて、来ちゃいました」

店長はにんまり笑い

「僕と通じているのかも?」

そう言った。


「たった今、沙希ちゃんから連絡があって、今日は遅れますって」

「そうなんですか」

「だからグッドタイミング!!」

店長はそういって、私のかばんをさっと腕から引き抜き、店の奥に入っていった。


「はい、お願いします」

店長は私に散歩の仕事を持ってきた。

「いってきます」

私はそう言って、お店を後にした。


もしかしたら、彼に会うかもしれない。

そうなったら、どんな顔をして会おう。

私は色々なことを考える内に、並木道とは反対の方向を進んでいた。


アスファルトは既に熱気を帯びている。

「今日は熱くなりそうだし、早く帰ろうか?」

私はそう言いながら、来た道を戻り始めた。


「ママ、今日はパパ帰ってくるの?」

子供の声がした。

それは高台の大きな家から聞こえてきたものだった。

「明日帰ってくるって言ってたから、もう少し我慢してね」

優しい声で宥めている。


家の門を見ると、そこには『五十嵐』と書かれた表札がかかっていた。


ここは彼の家なのだ!!


私は、あの時すれ違った綺麗な女性を思い出し、罪悪感で溢れそうになる心を必死に抑えようとしていた。

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