表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/127

◆28.夜までの時間

聡を送り出した私は、お店に出かける準備を始めた。


私は、今日の夜の打ち合わせをしていなかったことに気がつき、沙希へと電話をかけた。


「沙希ちゃん、おはよう」

「おはよう」

まだ半分寝ているような声を出して答える。

「今日の夜の予定は?どうしたらいい?」

「玲香ちゃん、元気になったみたいで、よかった」

彼女の声のトーンも上がるのがわかった。

「沙希ちゃんが、ちょっと余計なことをしてくれたからかな」

私は昨日のメールのことを思い出した。

あのメールが届かなかったら、私は聡と顔をあわせても、今朝のようにはできなかったと思った。

「ごめんね。でも、たまたま、五十嵐さんのアドレスを知ってたから」

「ありがとうね。嬉しかったよ」

そう言うと、すかさず

「どうしてアドレス知ってたか、聞かないの?」

彼女は早口で聞いてくる。

「お店にきたときでしょ?違うの?」

私の返事を聞いて

「どうしてわかっちゃったのかな?大人の余裕かな?」

私をからかっているようだった。

「玲香ちゃん、気持ち気付いたんでしょ?」

彼女に一番答えにくいところを衝かれてしまった。

私はただ黙っていた。

「あっ。黙秘権はずるいよ」

ゲラゲラと笑い出す彼女の声を聞いて、私もつられた。

「今日は、お店は5時終了。その後にそのままGOします」

「了解」

「じゃあ、超高速でお店に向かいます」

「9時にお店でね」

そう言って私達は電話を切った。


お店にはいつもよりも早く着いた。

既に沙希は散歩に出かけていた。


「おはようございます」

店長が奥から出てきた。

「おはようございます」

私の顔を見た店長は

「何かいいことありましたか?いつもよりも増して、輝いてますね」

「店長、私からは何にも出ませんから」

いつものように朝はこんな会話から始まる。


昨日の夜、あんなことがあったのに、私はごく普通に、それどころかいつもよりも明るくなっている。

彼からのメールが私をそうさせているのだと気がつくのに時間はかからなかった。


今日の仕事は途轍もなく長い時間に感じた。


これまでそんな風に思ったことはなかった。

ただ遠くからでも彼に会える。

そう思うと、嬉しくて仕方がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ