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◆26.メール

マンションの前に来ると、足が重くなるのが感じた。


(帰りたくない・・・・。)


見上げたマンションの部屋の明かりは、既に消えていた。


聡はもう眠ってしまったのだろうか。

私が一人で家を出ても心配したりしないのだろうか?


そう思うと、寂しさと悲しさで胸が一杯になっていた。


(二人で過ごしてきた約10年。私達は一体何をしていたのだろう・・・・。)


私は首が痛くなるほど、部屋のある場所を見上げていた。


その時、鞄の中の携帯がブルブルと震え、メールが来たことを知らせた。


(聡からか・・・・)


携帯をゆっくりと取り出し、画面を開いた。


見覚えのないアドレスから送られたメールの件名は


”お元気ですか?”


となっていた。


(誰からだろう?怪しいメールかな?)


本文を読みはじめると私の心は優しさに満たされていった。


”玲香ちゃん。突然のメールごめんね。沙希ちゃんから、メールをもらって、君が落ち込んでいるようだと知りました。何があったのかはわからないけれど、どうか元気を出してください。

本当ならば、側で優しい言葉の一つでもかけてあげられたらいいんだけど、今日は動きが取れません。僕でよければメールを下さい。力不足だけど、話を聞くことくらいはできるはずだから。五十嵐”


私は彼からのメールを何度も読み直した。


あの時の電話で、沙希は私が泣いていることに気がついたのだろう。


そして、彼にそれを伝えたのだ。


私は思いのままをメールにした。


”五十嵐さん、メールありがとうございます。五十嵐さんの優しい気持ちが嬉しかったです。

ありがとうございます。色々なことがあったから、少しブルーになっただけです。どうか、心配しないで下さい。それから、お花を沢山ありがとうございました。五十嵐さんの気持ちが嬉しかったです。明日、忙しいのに私のことで時間を割いてしまってごめんなさい。どうかゆっくり休んでください。松本玲香”


私は大きく深呼吸をしてから、送信ボタンを押した。

そして携帯を手に持ったまま、一歩ずつゆっくりとマンションの階段を登った。


ドアの前まで進むと、私は携帯を鞄の奥に仕舞い、ドアノブを音を立てないようにして回そうとした。


が・・・ドアには鍵がかかっていた。


私は鍵を取り出し、ドアを開けてゆっくりと中に入った。


中に入ると、私は真っ先に、聡が眠っているであろう寝室へ向かう。


でも、そこに聡の姿はなかった。


聡もどこかへ出て行ったのだろうか?

それとも私を探しにいってくれているのだろうか?


私は、真っ暗な部屋の中で、すっーと力が抜けたように座り込んだ。


時計の秒針の音だけが部屋中になり響く。



ブルルルル・・・・・


再び携帯がメールのきたことを知らせる。

さっきと同じように携帯を取り出し、画面を開く。


”大丈夫?僕のことは気にしないでね。君のほうこそ、まだ病み上がりなんだから、ゆっくりと眠ってください。明日、君が来てくれることを楽しみにしています。五十嵐”


メールを読み終え、私の今まで曖昧だった彼への気持ちが、確信の持てるものに変わったのを感じた。

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