◆16.久しぶりの再会
朝の日差しが、私の顔優しくをくすぐるように照らした。
今日は優生が東京に来る。
ようやく3人で新しい生活をスタートさせることが出来る。
昨日までの私は、少し変だったのかもしれない。
東京に来て、環境が変わり、何もかもが不安の中で送ってしまった日々。
聡の態度で、毎日を淋しく感じてしまっていた。
その淋しさが私に変な妄想を見せたのだろう。
私は布団をパッと捲り、勢いよくベッドから起き上がろうとした。
「痛っ!!」
昨日バイクとぶつかった膝が、ズキンと音を立てて痛んだ。
痛い足をかばう様に、ゆっくりと引きずりながらベッドから這い上がる。
「起きたのか?」
聡が私の姿を見てさらりと言った。
「うん。おはよう」
そう言うと私の足を見て、
「昨日転んだのか?よく転ぶんだな」
少し呆れたような顔をした。
「うん。散歩のときに逃げられそうになって・・・」
私は昨日の出来事を隠し、とっさに違うことを言う。
昨日は聡が0時を過ぎても帰らず、先に寝てしまっていたから、昨日の真実は知らないのだ。
私は聡に嘘をついた。
何故なのかはわからない。
「このままじゃ直にクビだな」
聡の言葉に私はただ笑うしかなかった。
お昼過ぎ、母から『東京駅に着いた』と連絡が入った。
私と聡は逸る気持ちを押さえながら、二人で駅まで向かった。
駅に着くと、母と優生は、辺りをキョロキョロしながら、私たちの迎えが来るのを待っていた。
「優生、なんだか大きくなった気がしない?」
聡は黙って頷いて
「優生。お母さん!!」
二人の方に手を振りながら、大きな声で呼んだ。
優生は私たちに気がついて、こっちに向かって、小刻みに左右の足を前進させながら駆けてきた。
それを見ていた聡も、優生に向かって駆けて行く。
聡は優生を抱き上げ、久しぶりの娘の柔らかい感触をしっかりと確かめているようだった。
私は二人の様子を確認すると、慌ててその場所に向かった。
久しぶりの再会。
そしてこれから始まる3人での生活。
それをこれから大切にしよう。
そう心に誓い、マンションへと戻った。




