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読んで下さって有り難うございます!

予想外に沢山の方に読んでいただいているみたいで吃驚しています。


2016.11.16 誤字修正しました。




 自重しないと決めてからは、本当に魔法の連発をして向かってくる魔物を倒しまくった。肉を美味しく頂き、魔物の核であり魔法や魔法陣に役に立つ魔核も乱獲しまくった。

 植物促進の魔法陣は完成したものの、万全とは言えなかったために土地に副作用が起き、一つの植物促進で数メートル範囲の土を砂と化しながら旅を進めていく。無理矢理植物を成長させているのだから、それなりの副作用があっても可笑しくないよね?他にも一度促進で実を付けたら、その実は親の実と同じものが出来るのだけど、次の促進に耐えきれず灰となってしまうこともわかった。

 それらを改善したくて2.3日、森に籠もって研究していたら、辺り一面砂漠となってしまったこともあるけど、それはそれ、私の所為だけど私にとっては必要なことなんだから仕方が無い。

 あの人達と同じことをやっただけよ。あの少女が必要だから男達は必要でなくなった私を切り捨てたと同じ。

でもまぁ、森に住む動物たちに悪いので、適当に土と光、水魔法で整えてきたけど、数年は元に戻らないかも知れない・・・

 今度は場所を考えて研究に打ち込もう。うん、だって砂漠にしただけでなく――


『アリアは本当に出鱈目な人間だな』


 無視をしても付いてくる変な奴が出来てしまったのだから。


「なんで付いてくるのよ!」

『アリアはオレの主となったのだからついて行くに決まっているだろう』

「なった覚えはないわよ!」

『オレを打ち負かしたじゃないか』

「・・・・・・」


 そう、砂漠と化した森の中から、この付いてくる生き物・・・真っ黒な毛並みを持ち青い瞳をした特大の狼が封じられた祠があったみたいなのだ。私はそれに気づかずに、砂漠と化したために動物が散り、餌を探して集まってきた魔物に手当たり次第大技を連発して封印を壊してしまったらしい。

 そして封印を壊してしまったために復活した黒狼と戦い勝ってしまった。

こいつは負けたと言っているけど、私は殺すつもりで魔法を連発したのに、こいつ生きているんだよね。んで、何故か気に入られて付きまとわれている。

 ワンコももふもふも好きだけど、この黒狼は魔物だ。それも人を簡単に噛み切る牙を持っているのだから油断できない。付いてこられても鬱陶しいだけだ。


「あなた強いのでしょう?だったら私なんかに構ってないで、他にすることあるんじゃない?というか、魔物なのになんで人間の言葉を話すことが出来るのよ」


 ぼろっちい祠に封印されていたんだから、それなりの年月を費やしているはず。その恨みがあるでしょう!

恨みを晴らしに行きなさいよと進めるのは、同じ人間として考えたら復讐に向かわせるのは非道だと思うけど、私にとっては関係ないことだ。

その意味をきちんと理解した黒狼は器用にフンと一笑いして一蹴する。


『オレを倒すことが出来ずに封印しか出来なかった人間達に、長年の眠りの復讐することか?それも考えたが、アリアの魔法で面白いほど黒焦げになる魔物や飛んでいく魔物に、あっという間に森や川が無くなるのを見てしまった後ではオレの復讐がつまらなく感じる。何より何をしでかすか分からないアリアといるほうが楽しそうだしな。ああ、そうそうオレは魔物だが上位だから念話で言葉を話すことが出来るんだよ』


「・・・・・・」


 さよでございますか。

 別に黒狼を楽しませるためにやっているんじゃないんだけど。


『ところでさぁ、いい加減名前を付けてくれよ』


 付きまとわれてずっと自分に名前を付けて欲しいと言い続けている。どうやら最後に名前を主に付けてもらうことによって契約が成立するらしい。本当に鬱陶しいわ。


「・・・・・・・・・ポチ・・・・・・」

『それ、なんだか馬鹿にしている響きにしか聞こえないから却下』

「贅沢なやつ・・・・・・じゃ、クロ」

『同じ意味で却下』

「なんで私が名前を考えなきゃならないのよ!そんなことよりどっかに行ってよ!」

『アリアを主と決めたからには付いていくし、名前を付けてけるまでは大人しくしないぞオレは』

「勝手に私を主にしないで!」

『オレの主はオレが決める』


 ここ数日こんな感じで本当にうんざりしているのだ。


『誰を主にするのかはオレの自由だろう』


 その黒狼の言葉にはっと息を止めてしまった。


「・・・・・・・・・」


 確かに心の有り様は皆が皆自由だ。

 私は今まで心さえも強制されていて自由でなかったのだから、魔物だからと心の自由を奪う権利は私にはないし、自由を求める気持ちも分かる。


「・・・・・・ルプス」


 気を許したわけじゃないわよ。煩く付きまとわれるのが鬱陶しいから仕方なく考えただけよ?


『それは名前か?』

「・・・・・・何語か忘れたけれど、狼って意味だったと思うわ」

『ルプス・・・なんだか今ひとつのような気もするが、今までのよりはマシだからな、よしとしよう。オレの名前はルプスだ。主アリアよ、何でもオレに言うと良い。叶えられることは叶えようと約束する』


 今ひとつで悪かったわね。でも、簡単に私を主にして良いのかしら?後で後悔しても知らないわよ。

 てか、最後の契約が名前を与えることだったんだよね?みたところ身体が光るとか、私との繋がりが出来るとか、そんな感じが一切しないんだけど、主従の契約が出来ているの?

 でもまぁ、本人が契約終了というのなら


「まずは私に危害を加えないことを約束して、そして貴方しか出来ないことを後々頼むことになるわ」


 私が主と言うことになり、命令してもいいのよね?勝手に付いてくるんだからこき使うわよ?


『もちろん、アリアにオレが危害を加えることはない。アリアが天命を迎えるまで守ると約束しよう。早速オレにしか出来ないことを用意できるとは流石はアリアだ』


 青い目を細め喜びを表しているけれど、本当に知らないわよ、後で激怒しても。




『アリア!!オレは馬ではないぞ!この扱いは酷い、酷すぎる!』


 ほら見なさい。激怒しているじゃない。


 ルプスと旅を初めて一月ほどたった後、ようやく資金が出来たので念願の足を手に入れることが出来た。

 そう、それは小さな荷車。御者台には二人座れるかどうかで、後ろの荷台は幌はついて無く畳2畳分の広さしかない。それでも車輪は4っつ付いていて安定している。文句なしの代物だ。

 ただ、馬を飼うお金がなくて、ルプスに引いてもらわなければならないのだ。


「何を言っているの。あなた最初に叶えられることは叶えてくれるって言ったじゃない。私に嘘をついたの?」

『うぐっ・・・・・・森の長とも呼ばれたオレが馬のまねごとなんて・・・・・・』

「馬だと危険を察知しても機転を利かせて迂回してくれないし、私は安心して研究に没頭出来ないじゃない。これは貴方にしか出来ないことなのよ」

『そ、それはオレを信頼してくれているってことか』

「さぁ、どうでしょう?信頼して欲しかったら態度で示すことね」

『・・・・・・よし、アリアの安全はオレが守ってやる。安心して研究とやらに打ち込むがいい』


 一月も一緒にいれば、主従関係は出来上がってくる。つまりルプスの扱いも分かってくるというもの。唯単にルプスは馬鹿という種類に分類されるかもしれない。

 ちょろい。魔物の上位と言うだけあって破壊力は相当なものだというのに、封印される結果になったのはルプスの性格になるのだろうと、ここ最近は思う。


 こうして目的地に進みながら、荷車で研究をする時間を確保できた。

最初は鬱陶しいだけだったルプスだけど、話し相手にもなってくれるし、何よりもふもふ・・・毛皮が暖かくて夜は便利だ。

人間じゃないから嘘はつかないみたいだし。扱いが分かれば魔物であっても可愛いものよ。


 荷車を手に入れてからは、旅がまた一段と楽になり、目的地である迷いの森に到着する頃には、植物促進の改善まで出来、空間魔法の魔法陣まで完成できたのである。


 もしかして私って天才?

 って頭をよぎったけれど、空間魔法の完成までに失敗は何度もあり、私とルプスには結界を張ってあったから大丈夫だったけれど、クレーターを幾つも作ってしまったのを考えると、天才にはほど遠い課程であることに至る。


 努力も天才の一種だよね。と無理矢理クレーターのこととその都度、ルプスに『オレを殺すきか!』と怒られたことをなかったことにした。



 そして、到着した迷いの森は、実はエルフとドワーフの住む森だった。

 一度入ると二度と帰ってこない迷いの森は、エルフが魔法で方向感覚を狂わせ、人間は森で彷徨い力果ててしまうからだそうだ。他にも色々仕掛けがあって、魔素が強いから普通の人には耐えられないとか、ドワーフとエルフで作った罠が仕掛けてあったりもするらしい。


 罠っていっても落とし穴や、矢が飛んできたりとそんなもんだし、方向感覚を狂わされても、森に留まることに苦痛を感じないから平気だった。


自分の住む場所になるのだからと、快適にしようと地面をならし、水源を掘り当て、畑も作れるようにと木を伐採しようとしたところに、エルフから待ったの声が飛んできたのだ。


 な~んだ、誰もいないと思っていたのに住んでんじゃん。これじゃ、私の住む場所はないわね。


 エルフ150人、ドワーフ300人ぐらいの結構な大所帯が森の真ん中を占めている。

 私がその周りで開拓を始めたら、人間達に見つかってしまうからやめて欲しいと言われてしまった。


 彼らの村に例外中の例外として招かれて赴くと、ドワーフはただの穴としか思えないところが住処の入り口で、地下に家があるそうな。そしてエルフは大木の上に隠れるように作られているので、下を通るだけなら誰かが住んでいるとは分からないよういなっている。

そこまでは幾重の結界が張ってあるので、たどり着くのは森に入ってきた人数の十分の一ぐらいだとか。

 ドワーフの作る細工と皆が皆美形であるエルフを狙って人間が蹂躙してくるからそこまでの安全を確保しないといけないらしい。


 人間世界に住んでいる私みたいに理不尽な目にあう人もいるぐらいなんだし、人より飛び抜けているというのも生きにくいものなんだね。

 歴史的にこんなことがあったあんなことがあったと話されても、別に彼らに興味は無いのでどうでもよい。ただで泊まらせてくれるというのなら一日ぐらいは泊まるけど。この地に住むことが出来ないのなら、即出て行くよ。


「ダメだ。我らのことを他に知られる可能性があるから、出て行くことは許さない!」


 とか、言われてルプスと実力行使しようと構えたところに、ドワーフの一人が間に入ってきた。


「ならば、儂が彼女たちと一緒に行こう。誰にも口外しないように儂が見張る」

「しかし!」

「儂だと不安だというのかエルフの長老よ」

「主に不安はない。だが、何も主がついて行かなくとも・・・」

「妻には先立たれ、子供はもう独り立ちしている、弟子達にはもう教えることがない、後は隠居するだけの儂じゃ。うってつけだろう。それに彼女が作り出す魔法陣に興味があるのじゃ。素晴しい腕前というのに、その土台に使っている荷台が残念すぎる!あれは酷い!儂がなんとかしたいと、職人魂がうずうずするのじゃ!」


 久々に沸き上がる情熱に、これは運命の出会いなのかも知れない。と、私抜きで話進めるドワーフとエルフの長老達。

 勝手に決めないで欲しいし、荷車が酷すぎるって・・・ショック・・・なけなしのお金でぼろい荷車を譲ってもらい、森で木を切り、何処かの村で勝ったぼろ布を幌として継ぎ足しているんだから、仕方ないでしょう!つうか結構力作だと思っているんですけど?

 道中はルプスが荷車を引いてくれるから、私は揺れを少なくする魔法陣や、外気に関係なく適温になる魔法陣、空間を切り裂き異空間に部屋を作れる魔法陣などを開発して荷車に書き込んでいる。見た目はぼろいけど、かなり居心地が良い空間が出来上がっている。それを酷いなんて・・・・・・そんなに酷いのかな・・・?

 ルプスにそれを確認すると、ゆっくりと目をそらされた。が~ん・・・・・・

 前世ではミシンは使えても縫い物は苦手だったわよ。お妃修行でもお裁縫は毎回、先生にため息をつかれたわよ。屋根や補修をやりたいと思っても、そういうのは前世で読んでいた本には書いてなかったのだから、やり方が分からないんだから仕方ないじゃない!

 いじいじといじけている間に、長老達の話がまとまったのかドワーフの長老が私達と一緒に旅に出ることになった。他にどういう訳かハーフエルフの女の子も付いてくることも決まったようだ。


 そういえば、このハーフエルフの女の子はエルフの中では異端とされ村人からは嫌われ嫌悪されていたみたいで、この短い逗留の間に、今の私のようにいじけているところに出くわしたのよね。

 励ますつもりじゃなく「人は生きていこうと思えば一人でも生きていけるわよ。だた、他者を切り捨てる覚悟があれば、だけどね」と彼女に言った。その後から懐かれたのか、寝るときも一緒だった。

 たったあれだけで?本気なのか?と疑いの目を向けてしまう。

 見た目は10歳ぐらいの女の子だけど、エルフは長寿だ。見た目の年齢とは限らない。それなりに考えての決断なんだろうけど、何故に人が増える!?私は一人でひっそりと暮らしたいと思って誰も住んでいない土地を求めて旅をしているというのに!

 ドワーフとハーフエルフに向かって「付いてくるな!私は認めていない!」と怒鳴り散らしても、彼らは一向に聞かず馬に跨がって付いてくる。


 本当に何でこうなるのよ!


 だけど、旅をしていて、この二人に助けてもらえることがあるのだ。正直、いてくれて良かったと思うようになってきている。

 ハーフエルフの女の子の実年齢は現世の私と同じ17歳、名前はリアーヌといい、料理がとっても上手なのだ。素材を焼く煮るだけでない調理法で味付けも絶妙だった。

 ドワーフは私の傑作である荷車を酷いと言うだけあって、すきま風が入ってこないように板を綺麗に合わせ、でこぼこがない綺麗なすっきりとした荷車をあっという間に作ってしまった。

 ルプス曰く、余計な物がなくなり偏った重量もなくなって引きやすくなったそうな。


「・・・・・・」


 なにそれ、初めて聞いたんですけど?そんなに酷かったの?

 でも、ま、荷車の表だけでなく中もすっきりして作業がしやすくなったのは認めるけどね。


 いくら怒鳴ろうが私の態度が悪くても、ドワーフの目的は、私が他者に迷いの森のことを話さないように監視することと、私が作る魔法陣が能力に似合ったものに刻まれることを望んでいるみたいなので一向に気にしてないみたい。職人魂って恐ろしいものだ。

 ハーフエルフの女の子、リアーヌは一人でも生きてけると言った私の言葉を実践できるかどうかを見極めるために付いてきたから、何を言われても付いていくと決めていると返事が返ってくる。それに、私が言った言葉なんて毎日浴びせられる罵倒に比べたら可愛い物らしい。

 ちなみにドワーフのおっちゃんは、グフタスという名前だ。



 迷いの森が新天地になり得なかったので、次に向かうのは魔物が多く生息しているという深魔の山だ。ここは中級ランク以上の冒険者達が一攫千金を狙い訪れる場所でも有名である。

 人の出入りが多いと思われるけれど、中級以上となるとなかなか育たないのが現状で、不便な土地だからなかなか訪れようとはしないらしい。中級以上となると依頼料だけで生活に困らないというのも理由らしい。


 ひっそりと暮らすにはもってこいだ。

 ただ問題なのは魔物がどれ程多いかにもよるだろう。一攫千金を狙えるぐらいの大物も住んでいるらしいし、安全に住むことが出来るのかをまず調べようと思う。


 このことをグフタスとリアーヌに話せば里に戻ると言い出すだろうと思ったのだが、彼らの意志は強く、死ぬかも知れないのに私とともに行くという。


「アリアが作ろうとする新天地に興味がある」

「私も同じ。一人の力で何処まで出来るのか見届けたい」


 とのこと。なんなのこの強い意志は!死ぬかも知れない危険地帯なのよ!その即決は可笑しいでしょう!!もう、呆れて何も言う気力が無いわよ。


 ルプスに私から離れなくていいの?と聞かなかったのは、ルプスは上位魔物であり、そんじょそこらの魔物ではやられないのを知っているからである。何処かに行けといって聞くようなタマじゃないしね。

 どうやらこの二人もルプスと同じらしい。まったく、王都から離れて変な人ばかりに出会うわ。正式には人じゃなく、魔物とドワーフ、ハーフエルフだけど。


 と考えていたのが悪かったのか、とある町のギルドに薬草や魔物の肉を換金に行ったら、一人の阿呆な冒険者につきまとわれることとなった。


 私が今一番に嫌う人間の男である。


 彼の名前はオズヴァルト、冒険者ランクはAでかなりの実力者だ。それもたった一人で剣と火の魔法だけでそこまで到達したという化け物じみた押し切り強引タイプ。いわゆる脳筋。

 そんな誰もが一目をおくオズヴァルトが私をつけ回す理由は、


「俺はアリアに一目惚れをした!俺の嫁になってくれ!」


 だ。私が心底嫌う理由である。



次で終わるはず・・・・・・多分・・・

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