表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

我が道を逝く

作者: 亜ヰ美-aivi-

気がついたら見知らぬ場所にいた。

どこぞの王宮かと言いたくなるような塵一つない光を反射する床に、大人3人が手を繋いでも囲えないような太い柱。

私達を取り囲んでいるローブを着た異様な人達。少し高い位置にある華美な椅子に何様だと言いたくなるような偉そうな男。その男を護るように剣を持った人達が大勢。


はぁ……なんか嫌な予感しかしないわぁ。

これは絶対巻き込まれ系の面倒なヤツですね、わかりたくありません。

でもそう言うわけにはいかないので、あの偉そうな男が話しているのを簡単に纏めてみる。


要は、小説とかに良くある召喚もの。この世界は魔物がいるようで、定期的に異世界人を召喚して異世界人にしか使えない術で結界を張り人々を護るそうだ。それに加えて異世界人は武力もこの世界の人よりも優れているらしく、魔物の一掃とはいかなくても間引いてもらう。全てを一人では行えない為に複数人を召喚するらしい。


今ここには私の他にハイスペック俺様な生徒会長、学校一可愛いと称されるマドンナ副会長、頭脳明晰(鬼畜)眼鏡な会計。この面子にダサい眼鏡でおさげな私こと敦賀華蓮とくれば巻き込まれ系意外にあり得ない。

ここに来る前に丁度部活で必要な書類を生徒会に提出していた際の出来事だったので、間違いないだろう。

別に私は物凄く美人ではないし(普通にお洒落すれば可愛い部類には入るかも知れないが)、頭脳明晰でもないし(理科だけは学年でも3位以内に入るが)、運動神経が良いわけでもない(危機察知能力だけは昔から良い方ではある…何故今回発動しなかった…)。

こんなんで、ハイスペックな生徒会の面々と一緒にされてはこちらが困る。


その時に一人の豪華なローブを着たおじさんが前に出てきて一人一人目の前の水晶に手を当てろと言ってきた。

生徒会長は赤い光、副会長は白い光、会計は青い光。

そして共通したのは誰もが煌々と目を開ているのも辛いくらいの光を放っていた。

どうやら色は属性、光の度合いが魔力量といった感じらしい。

そして私だが、巻き込まれ系の私がなんかあるわけがない。

色もなく、一般人と対して変わらない魔力量だったらしい。


そして予想道り私だけが別室に通され、入り口付近にいた人達にブツブツ文句を言われていた。

曰く「なんでこんな何も役に立た無い奴が彼らに着いてきているんだ」「使えない奴がしゃしゃり出てくるな」等々素晴らしいお言葉を頂きました。

凄いね。勝手に呼び出しといてこの言いぐさ。

まぁ、怒るでもなく今は文句をスルーして情報収集せねば。


色々我慢に我慢を重ねて収集した事によると、この世界の人ヘタレ過ぎじゃね?

いや召喚の時も思ったけど、まず他の世界の人頼り過ぎだよ?君達の世界だよね?

「これで魔物の驚異が」とか「この国は安泰だ」とか言ってるけど、自分達で倒そうぜ?んな腹に贅肉蓄える暇あったら剣の一つも持って鍛練しろよ。


なんて心の中で毒づいていたら一人の男が部屋に入って私に近付いてきた。服を着ていてもわかるほどの鍛えぬかれた身体をしている。

そう。こういうのを待っていたんだ。


「私はヴァンウォーレン。君の世話を任された。これからよろしく頼む。」


高身長のがたいのいい身体をした男に威圧的に見下ろされるとか…

なんのご褒美ですか。悶えてしまう(勿論顔に出さず心の中で)。


私が心の中で悶えてる時に、入り口付近にいた奴らが「それはいい」「こんな奴にはこいつがお似合いだ」とかなんとかなんとか。

この人は嫌われものなのか?


「華蓮です。こちらこそよろしくお願いします。」


ペコリ頭を下げ、顔を上げると苦笑いしたヴァンウォーレンと目があった。


「取り敢えず、色々聞きたいこともあるだろうが、場所を移そう。」


そう言って今までいた王宮を出て、こじんまりとした(周りと比べればだし、でも庭は広い)郊外の屋敷の前に来た。

ここまでヴァンウォーレンの馬に乗せてもらってきた。


「ここは私の家だ。こんなムサイ男と一緒は嫌かもしれないが、君にはここに住んでもらうことになる。」


…この家に住む?一緒に?

神様なんのご褒美ですか?さっきの王宮でのお詫びなのかしら(またしても顔に出さずに心の中で悶えてしまう)


私は問題ないと言い、ヴァンウォーレンの家に招き入れてもらった。

応接間に通されて、二人でソファーに落ち着いてからヴァンウォーレンから口を開いた。


「まず君の質問に答えよう。あと俺の事はヴァンと呼んでくれ。」


ヴァンウォーレンって長かったから有り難くヴァンと呼ばせてもらうことにして、聞きたかったことを聞いていく。

一、この世界から帰ることは多分出来ない。多分なのは帰ったと聞いた人がいないから。

二、私のこれからの立場は彼ら三人の邪魔をしないこと。王宮の加護は貰えないこと。一ヶ月ヴァンにお世話されながらこの世界を学び、その後はその時に指示する(ヴァンは凄い言いにくそうだったが教えてくれた)。

三、彼らは勇者、聖女、魔法使いとして一ヶ月鍛練し、数人の仲間を連れてとある結界を張る神殿まで赴く。


こんなものか。

あ、あとヴァンについても聞いておかなければ。


「王宮にいたとき私にはヴァンがお似合いって言ってたけどどうして?」


ド直球に聞いてみれば、ヴァンは言いにくそうに、そして申し訳なさそうに教えてくれた。


「この世界はほとんどの者が魔力を持っていて、暮らしていくにも魔力を使って生活している。だが、希に魔力の無いものが生まれる。それが俺だ。だから、華蓮に魔法の使い方を俺は教えられない。」


ふむふむ。

魔力なしとして見下されてきたヴァンと不必要にここに来てしまった私はお似合いだと。

なんかすっごいイライラする。

魔力があっても異世界人に頼るしか能の無い奴らが何をほざくか。

まぁ、そこはおいおいなんとかしてやろうじゃないか。

今はこれからについて考えよう。


「ちなみにその身体つきからしてヴァンは武術が得意なのよね?」


「まぁ、魔法が使えないからな。剣、槍、斧、一通りの武器は使えるように訓練している。」


なるほど、色々手を出せるってことは相当の実力者か飽き性なアホってことだな。

でもこの身体つきでアホは無いだろう。てことは前者か。

ヴァンがどんだけ強いか見てみたいなぁ。でもそれもおいおいだな。


ならまずやることは、ここでの生活についてのことだな。

間借りさせてもらうんだから、色々守らねばいけないこととかあるだろうし、家事くらいはしないとね。

その後に魔法が使えるかと、簡単な体力作りかな。

身を守る術があるって大事だよね。ここには武術の出来るヴァンがいるんだし、護身術くらいは習っておきたいし。


なんて事をヴァンに相談。

一、家でのルールはお互いの私室には無断で入らないこと。

二、現状での私ではまだ外を出歩くのは難しいので一緒に。

三、護身術は問題なく教えるし、魔法は初心者用の本を用意してくれるとのこと。独学で頑張ろう。


基本的に好きなようにしていいって言われたし、ヴァンは私の世話が仕事だから一ヶ月は側にいてくれるので、声をかけてくれれば勉強でも護身術でもいつでも付き合ってくれるらしい。

あんな良い身体を一ヶ月眺め放題とか悶え死にそうだけど、それは勿体ないので我慢我慢。

これからの計画を立てながらうふふふっと上機嫌に異世界初めての日を終えた。


ちなみに夕飯はヴァンの家に何もないから食べに連れていってもらった。

異世界って食が合わないとか色々な小説でもあるけど、そんなこともなく美味しく頂きました。

お買い物は明日二人で行くことになったので、その事も考えながら就寝。

良い夢見れそうである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いやー、良い夢見れた。内容覚えて無いけど、良い目覚めだ。

まだ日が出たばかりの朝の清々しい空気が、これまた気分を良くする。

ちょっと庭に出て体操でもしようかな。


って事で裏庭に出てきたのですが…。

ヴァンをバカにしていた。強いんだろうなとか思ってたけど、想像とのレベルが違う。

裏庭で先に来ていたヴァンが素振りをしていた。

多分戦闘を想像しながらなんだろうが、気迫と言うかなんと言うか、本当に凄いとしか言えない。

額に浮かぶ汗とか、鋭い目とか、殺気とか…。

かっこ良過ぎる。鼻血出そう…。

体操なんて忘れて、ただただ見いってしまった。

10分くらいそうしていたら、ヴァンが此方に気付いたらしく近寄ってきた。


「おはよう。こんな朝早くにどうした?」


「はっ…お、おはよう。目が覚めちゃったから体操でもしようかと思って。でもヴァンがあんまりにも凄いから見いっちゃった。」


この時照れ隠しのフリして涎と鼻血をチェックした私は悪くない。かっこいいヴァンが悪いのだ。


ヴァンは苦笑いで謙遜しつつ頭を撫でてくれた。

そしてもう少ししたら朝御飯を食べに行って、買い物に行こうと誘ってくれた。

ヴァンはそのままシャワーをしに向かい、私は当初の予定通り体操。

さっきのヴァンを思い出し、ニヤニヤしながら体操していたのを誰にも見られていなくて本当に良かった。


ご飯も食べて、さぁ買い物。

今日は食料と私の衣服、それに魔法の本。

まず服を買いにいったが然程拘りもないので普通の町娘が着るようなものを選んだ。ただあまり目立ちたくないので色は地味に。

魔法の本はまずは初級ってことで、これも時間がかからず終わった。

一番困ったのは食料。

此方の食べ物と元の世界の食べ物では名前が違うし、始めてみるようなものばかりだ。

一つ一つヴァンにどんなものかを聞きながら、どんな料理を作れるか考えながら購入。

ただ買うだけでなく、お金についてや、物価なども教わりながらゆっくり買い物をして家路についた。


ここの世界は紙幣は無いので硬貨のみ。

基本は銅貨で3種類。大中小あって一つ一つに描かれている花が違う。

小が十円、中が百円、大が千円って感じかな。

庶民で使うのはほぼこれ。

それ以上になると銀、金貨などがあるらしいが、銀貨が1万円、金貨が十万円と庶民には手がでない。

ついでに教えてもらったのが、庶民の一月の給料は平均二万円くらいらしい。

一般的に食される丸パンが五個で二十円、野菜類も何個か纏まって五十円など物価が安いからなんとかなるが二万て…少ない。

騎士になると平均十万円と一気に羽上がるけど、魔物退治とかで危険もあるかららしく、保険のないこの世界では妥当なのだろう。


そんなこんなで家につき、お昼を模索しながら作ってる。

一つ一つ味見しながらだから遅いが、要は慣れだと割りきって作っていく。

いつもの三倍近く時間をかけて作ったご飯は、まぁまぁかなって感じ。これから頑張ります…。

ヴァンはどれも美味しいと平らげていってくれる。

人に食べてもらえるって良いよね。次への意欲がわく。


午後からは魔法の本を読んでみることにした。

異世界召喚の恩恵か字は読めるし書けるので問題ない。

初めての魔法とかワクワクするね。

ただ、何があるかはわからないので裏庭で日向ぼっこしながらの読書。


【まずは魔力を感じましょう。心を落ち着けて体内を巡る魔力を感じてみてください。】


体内を巡る?血液みたいなのかな?

取り敢えず心を落ち着けるために座禅を組んでみる。

ん……。

あ、なんかハッキリとって感じではないけど、血液じゃない何て言うか気?みたいのが巡ってるのがわかった。

凄い。これが魔力なんだ。なんかドキドキする。


【この時魔力がハッキリわかる人ほど魔力が強いと言われています。】


なるほどなるほど。

私は一般人並だからハッキリとしないのか。

そんな事を考えながら読み進めていく。


【オーブで色分けされたものは自分に適正があるだけで、基本的には誰しもがどの属性も使うことが出来る。】


ほうほう。

オーブってあの王宮で触ったやつね。適正ってことはその色が一番自分に合ってて扱いやすいってことかな。

ん?全属性使えるってことは……まさか?

これは実験が必要ですね。

理科好きな私への挑戦とみた。受けてたとう。


多分私は今不適な笑みを浮かべながらニヤニヤしていたと思うが、それを見ていた人がいなくて本当に良かった。


この後一通りの初級魔法は使えるようになった。

初めて火の(ファイヤーボール)を出せたときは感動した。


ルンルン気分で夕食作りをする。

ヴァンが上機嫌な私に首を掲げるが魔法が上手くいったからかと頭を一撫でしていった。

昼である程度模索したので夕食はそんなに時間をかけずに出来上がった。といってもいつもの二倍かからない程度だが。


夕食後、腹ごなしにとヴァンに軽く護身術を習う。

狙う場所は前の世界と変わらず、鼻、顎、鳩尾、金的、脛、足の甲。

試しにとヴァンの鳩尾を殴らされたが、私の拳が負傷した。どんな鳩尾してんのさ。


汗を流して就寝。

なんとも充実した一日だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時間とは過ぎるのが早いですねー。

家事して、魔法練習して、護身術習って、ヴァンに悶えて…。

充実した一ヶ月だった。


そして今王宮に呼ばれている。

なんでも生徒会の彼らは、明日から神殿に向けて旅立つとのこと。

それで私とヴァンにもそれについていけと。

…なんで?


簡潔に言えばまぁ盾になってこいと。

生徒会長も会計も他のお仲間さんも足手まといはいらないとか言っていたが、副会長が仲間は多い方が皆が怪我せずに済むから良いじゃないかと。

これ仲間が怪我するのが嫌だから私とヴァンが色々やれば良いよね?って聞こえるのは私の心が荒んでるのか?


まぁ、そんなわけで明日から旅に出ます。

私もヴァンも行くことに不満はない。いや、あるけどない。

そろそろ色々な計画を実行すべき時でしょ。

と言うことで初めての旅に胸ワクで就寝。


翌朝、必要なものに忘れはないかをチェックして出発。

魔物を間引いていく為か、徒歩で野宿しながら五日かけていくらしい。

案の定私とヴァンが先頭を歩いている。

「そんな低級魔物お前らでも退治できるだろ」等々後ろから雑音が聞こえるが、一々答えるのも面倒なのでスルー。


一日目は殆どヴァンが倒しながら進んだ。

私はヴァンを労いながら美味しいご飯を作る。

今日楽させてもらったのだからこの位せねばバチが当たる。

だが、なんでヴァンの為に作ったご飯を彼らが奪っていくのかが不満でしょうがない。

曰く「野宿の準備はお前らの仕事だろ」「その為に来たんだから」とのこと。

初耳なんですけど?

夜も何もせず疲れてもいない彼らがぐーすか寝てる中、夜の見張りをヴァンがやっていた。

本当に何なんだこいつら。


二日目寝不足もあり、ヴァンに少し疲れが出てきたと感じたときに十数匹の魔物の群れに襲われた。

流石に奴等もこれには対処するようだが、見ている此方がため息をつきたくなる程…弱い。

異世界人って強いんじゃなかったの?

流石にヴァンが可哀想だし、そろそろ良いよねとヴァンに視線を送る。

苦笑いしながらも頷いてくれたので、計画を発動。


私は右手に風、左手に火の初級魔法を出す。

ちなみに他属性の魔法を同時に駆使するのはある程度の訓練が必要。

てか、使える人を見たことがない。

しかし、その意味を知らないらしい奴等は「初級魔法とかありえねぇ」「邪魔だから下がっていろ」等とのたまっている。

勿論スルーで魔法を使う。

風は竜巻のように放出し、その流れに乗せて火を放つ。

初級魔法とは言え、風で増幅された火が魔物を囲み、炎になり炎上。

これには奴等も唖然としている。してやったり。


私は魔力が少ないことを知っていた。だから、魔力の質を上げる訓練をした。体内にある魔力を練り上げて、同じ魔力量でも威力の変わるものを。(どこぞの漫画のように気練り上げるとか良くある話よね。)

本当は量を増やそうと模索もしたのだがそれは出来なかったので、こちらを試したら正解。

魔力量がない為上級などは使えないが、初級で上級の威力を出す事には成功したのだ。

それに加えてどの属性とどの属性が相性が良いのかなども色々実験に実験を重ねてきた。

この一ヶ月無駄に過ごしたわけではない。

魔法を使えないがヴァンの相棒となるべく鍛練したのだ。

二人で実験(魔物退治)にも行ってね。


そして私が2体3体と倒していても、まだ奴等は唖然としている。

いつまで働かないつもりだ。

そろそろ我慢の時間は終わっても良いよね?


「ねぇ?あなた達強いのよね?早く倒したら?それとも怖いとか言わないわよね?」


分かりやすい挑発にバカ達は簡単に乗ってくれた。

結果、七割を私とヴァンが倒した。


「弱っ。今まで一ヶ月何してたの?異世界人って強いんじゃなかったの?」


茶化すでもなく真面目な顔で言ってやることに意味がある。

ヴァンが後ろで苦笑いしてるのがわかるが、言ってやらねば気が収まらない。

私は別に物静かでもなんでもない。

言いたいことは言わせてもらわないとね。


「散々今まで私達に色々言ってたのにそれって。あぁ、自分達への自虐の為に言ってたのか。納得だわ。」


自己完結しヴァンの元へと行く。

何やら後ろでギャーギャー言っているけど、負け犬の遠吠えほど情けないものはない。

本当にこの世界とうか、あの国の行く末が心配…なんてしないけどね。

破滅でもなんでもすれば良い。私達の計画に狂いはない。


「しゃべってる暇があるならさっさっと歩いたら?あと四日で神殿に着かないわよ?」


私達は変わらず先頭を歩きながら、後ろから聞こえる雑音をBGMに神殿を目指した。


いや、本当に弱かった。誰がって奴等が。

まさか、王宮を出て一週間かかるとは…。ため息しか出ない。

でも無事に神殿に着いたわけだから、これで任務終了だ。

後は私達の計画を遂行するのみ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


結界を張り直すのも無事終了し、今は夜。

神殿ではお祭り騒ぎの如く宴会だ。

まぁそんなものに出るつもりはなく、私は借りている部屋で寛いでいた。

その時ドアをノックする音が聞こえた。

いよいよか、と高揚する気持ちを抑えて扉を開ける。

そこにはヴァンがいて、私は彼を部屋に招き入れた。


「華蓮。本当に良いんだな?」


不安そうなヴァンに苦笑いしながらも私は答える。


「うん。私はヴァンと一緒に生きたい。私も連れていってくれるんでしょ?」


疑問を投げ掛けているが私の中では、もうついていくと決めている。

そんな私の表情を見たヴァンは私の前に跪き、私の手を取って、下から見上げてきた。


「俺はこの先華蓮を護り、支え、慈しむと誓う。だからこれから先ずっと俺の隣にいてくれ。」


言い終わると握っていた私の指先に口吻た。

真面目にも誓いをたててきたヴァンに赤くなりながらも、嬉しくて嬉しくて、見上げてくるヴァンを見つめる。


「はい。もうヴァンの隣は私のものなんだから逃がさないわよ。」


少し茶化したのは照れ隠しだとわかってほしい。

その返事にヴァンが破顔した瞬間、私は鼻を押さえた。

何この生き物可愛いんだけど。本気で鼻血出すかと思った。


「華蓮。荷物の準備は出来てるな?行こう。」


私は頷いて、荷物を持ってヴァンに着いていく。


私達はこれから世界中旅をする事にしていたのだ。

この国で虐げられていたヴァン。無理やり召喚されたのにぞんざいな扱いを受けた私。

この国への未練はない。

私達は国に縛られず自由に生きていくことを望んだのだ。

これからの未来、波瀾万丈かもしれないが、二人でいればなにも怖くない。



これから先ずっとヴァンに悶え続けられるのならば、どんな屈強も乗り越えられる(本音)。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ