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怪獣狩らないと滅ぶ世界について  作者: ザイトウ
【第二章】妖精憑き高校生から始まる別視点リスタート
36/50

・第10話・幕間幕下取組前

 世界を滅ぼす獣が来ます。貴方が倒さないとたくさんの人が死ぬでしょう。

 こんなことを言われたら相手の頭がおかしいか相手の思想が危険かのどちらかを疑う。

 疑うだけで済めばよかったのに。


「んん………」


 台所で空の鍋を前に悩む。

 家の中には誰もいない。やたら忙しそうに面々は散っていき、九薙はどっかへ、瀝青ちゃんは交喙さん達と共に民族大移動。金髪猫眼の馬宮(まみや) (たつ)()は守上のおっさんと共にどっか行ってしまいました。

 みそっかすです。そうです俺ってっみそっかすです。

最終兵器? いやぁ何を期待していたのでしょうか? 

察するところベンチウォーマーの最終兵器ですか?

 戦闘時くらいしか役に立たないので、こんな扱いですかそうですか。

 いや、異能覚醒したばかりの高校生とかなんもできないのは確かですけどね。

 あれだ、こういった時ってラスダン前の好感度MAXヒロインとのイベントとかないのか。

 そう考えてはみたものの好感度高い人誰もいねぇけどな!

 瀝青ちゃんにセクハラしたのが精々だよ!

 まぁ、考えてみればどうやっても主人公なんてツラや立場じゃあないものな。

 だってここまでやってきたことって基本的にメシを作っていたのと、なんか妖精に憑かれたりしたくらいで、何時の間にか世界の命運を背負っているあたりが頭痛ぇ。どこをどう間違えばこんなことになるのか。 

 その妖精はといえばずっと眠りこけたままで、起きようとする様子もない。

 なんか面倒くさくなって部屋に置いてきたよ。

 謎生物だなあの生き物も。

 ソファーにどっかりと腰かけてぼんやりしていると、玄関で音が聞こえる。足音の質から靴はヒール、瀝青ちゃんか。ちなみに九薙嬢はローファーで交喙さんはパンプスと、靴はバラッバラです。

 あ、また玄関が開いた。今度はローファーだから九薙さん。

 玄関で足音が止まると、話し声が聞こえてくる。

 いや、盗聴じゃないよ? むしろ自分の家でくつろいでいるだけだから。

 身体能力がアップデートされているから、家どころか集中すれば近隣数件の物音全て拾えるかもしれないヤバさによる影響ですね。


『おかえり』

『だたいまぁ』

『………………』

『なにか?』

『おかえり、と言ったことに驚いた』

『え、あー、んー』


何の話なのだろうか?

 いや、そういやそうだ。ここは彼女達の家ではなかったのだから。


『朝起きると、台所から音が聞こえる。帰ってくると迎えてくれる誰かが居る』


誰もいない家。

 音と言えばTVくらいの夜。

 自分が動かさなければ、何一つ変わらない環境。

 それがどれだけ寂しいかはなんとなく覚えている。

 数週間前まで、瀝青ちゃんや、九薙嬢が来るまでの自分だ。


『ソファーで寝ていたら、気にしていないふりをして、そのくせ毛布を用意したりなんかして』

『あぁ、世話焼きだから』

『作り立ての料理が、味がしないとか、卵焼きが焦げているとかで、くだらない話をして』

『あぁ、結構、おっちょこちょいだから』


誰かが居るのが暖かった。

 朝聞こえるくだらない会話が楽しかった。


 一人じゃないことが嬉しかったんだ。


 今更だ。

 あぁ今更だ。


『嘘をついた。それでも受け入れてくれて』

『自殺まがいのダウナーの駄目人間の私がいてもよかったんだもの』


 皆そうだったんだ。

 そしてそれが壊れてしまうかもしれないから、全員が、必死こいて。


 のそりと椅子から体を起こす。

 目の前には、宙を浮き、真正面からこちらを見つめるアランヤタが居た。

 その目は黒く、深淵じみたもので、こちらの心を透徹でもしようかという様子で。

 彼女になんとはなしに頷くと、深く呼吸を吸い込んだ。

 理由も出来た。力もある。

 あとはビビらなければなんとかなるだろうさ。

 なんとなくそういった気分だ。こう、全能感というかヤル気みたいなもものだけはMAXだ。

 さて、イベント戦の相手はラスボスなんじゃねぇかと思うレベルだが、やってみようか。


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