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怪獣狩らないと滅ぶ世界について  作者: ザイトウ
【第二章】妖精憑き高校生から始まる別視点リスタート
27/50

・第1話・誘拐犯がすでにフルボッコでした

 放置時間は約3時間。

 謎の新興宗教に誘拐から即入会。そんな状況は嫌です。

 かとって四角張った文字がつらつらと並べられた書面を見ていると、そういった言葉を口にすることは憚られ、冗談一つ口にできそうな空気ではなかった。とりあえず、宗教ではないのは解ったのだが。


よれたスウェットに黒い半袖シャツ姿の男子高校生が応接間らしき一室で軟禁とか何の撮影なのかと現実逃避するも、頭の隅では冷静な思考が異常事態に対する現状認識が始まっている。

 しかし。


「すまないね。急いでいたとはいえスタンガンなど使ってしまって」

「いや、むしろ貴方が大丈夫ですか?」


顔に内出血による赤黒い痕が刻まれたスーツ姿の青年は、痛々しく赤が滲んだティッシュを鼻息で揺らしながら穏やかに微笑んでいた。


「うん、常識的な対応ってこれほどありがたいものだとは思わなかったよ。正直、泣きそうなんだ」

「心折れてますよそれ」


多少は緊張を緩めたものの、自身の名前が印刷された書面を再び眼にすると再警戒心に薄暗い炎が点る。住民票の写しに中学生時代の卒業アルバムから引用されたのか、やたら画像の荒い顔写真。

 あぁ欝になりそうだ。


「すみません、ガラス製の灰皿ないですか?」

「未成年の喫煙はよくないな」

「振りかぶるだけです」

「………冷静になってくださいお願いします」


実際に灰皿はなかったので、流し読みにしたプリントの束を手に目の前の相手に視線を向ける。


「それで、これは冗談ですか? 本気ですか? 公務員さん」

「残念ながら本気でね。青銅妙見寺(せいどうみょうけんじ) 法一(ほういち)君」

「あ、初見で読めたんですか」

「いいや振り仮名で」

「はぁ」


プリンタは一つのタイトルから始まり、幾つかの項目で分けられている。

トライアド協定文。

締結者『乙』は同協定における締結者『甲』との協定を受諾したものとする。

妖精機関の共有。

契約者は共有における素体の搭載する妖精機関の使用を許可される。


あとは、機兵仕様書だの本体の構成素子は以下、共有者の伝達神経を元に構築され、量子的に固定されるだの、別途添付資料にも様々な内容が記載されているが、いまいち内容が掴みきれない。


「要約するとどういう意味で?」

「機械の兵士と妖精を使って我々の敵と戦って欲しい、という話です」

「機械の兵士や妖精というのは何かの通称で?」

「まぁ、そうだね」


守上(もりがみ) (すぐる)と名乗った男性が語った内容を聞いて思ったのは詐欺の可能性。

謎の侵略者が襲ってきて人を殺している。

戦う為には出鼻を押さえることが最善。

出没地区の傍では人の入れない場所が発生する。

その地区で闘い、尚且つ敵を叩きのめせるのは『妖精』の力が必要。

そして、その兵士や『妖精』を使う為には適性が必要。


「大々的なドッキリですか」

「疑い深いのは解るが君は猜疑心が強すぎやしないか?」

「証拠を出してくれなさい。証拠を」


相手が思案する時間は短かった。


「じゃあ見る? 妖精と機兵」


そこでつい頷いてしまうのが自分の悪い点だと思わないでもない。だが、ドッキリにしてはあまりに大きなスケールに対し、そろそろ本気で逃げるべきかを考えていた。

 応接室の外、窓から見えた駐車場では黒いワゴンが盛大な火柱の中で燃えていた。

 何処の世紀末ですか。ここは。



次回は02/15予定です

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