1/5 人から…
第一部終了です。
出現した魔物達は一斉にソウに
襲いかかる、ある魔物は錆びた剣で
ある魔物は魔術で、
無数に曝される攻撃にソウは
防戦一方でいた。
くっ、このままじゃ
じりぼうだな。
ソウは現状防御しか出来ないことに
歯痒く思うが、突破口が見つからない。
そこにトドメを指すかの如く亡者の王が言う。
「反逆者よ、その程度の実力か?
それで、我が部下を殺したのか?」
亡者の王は
もう一体の分身に魔術を唱えさせながら
言葉を紡ぎ続ける。
「そんな実力か……原初の時代から
魔術師の練度、忍耐、
を比べれば相当位が堕ちたな」
亡者の王は言う
「我ですら、原初の時代にて比べれば
格が低い方ではあったが、
まさか多重魔術や無詠唱、合属魔術、それに魔術創生。
優れた魔術師なら必ず用いていた技術なのだがな。」
亡者の王は
失望した様な声音で言った。
そして亡者の王は
肉の落ちた指をソウに向け魔術を
発動する。
「我が、貧属となれ。」
「生魔反転」
亡者の王の指先に
黒い模様が表れ、指先から浮かび上がると
真っ直ぐソウの元に放たれる。
ソウは、考える。
魔物と化してしまえば
夢を叶えるのは不可能だと
生者でないモノが元の世界で
暮らせる訳が無いと、
そして、がむしゃらにソウは
魔力を全力で暴発させる。
「魔力暴走!!」
ソウの身体から爆発的に魔力が
放出される。亡者の王
が使用した生魔反転は
溢れ出る魔力により幾分かの
呪文は打ち消されたが
掻き消しきれないモノは
ソウの身体に侵入して生き
その魔術は発動した。
「ぐあぁぁぁぁ!!!!!」
ソウは身体全体を蝕む激しい痛みに
叫び声を上げる、それでも
魔力暴走だけは
解除しない様に気を持ちながら
亡者の王を睨み付ける。
「我の魔術を微弱ながらも防ぐか、
そんな強引な方法で」
亡者の王は
カラカラと骨を震わせて陽気な声音で言う
「面白い、生魔反転は
生者を亡者に変える術式。それが
途中分散し、中途半端に使用されると
どう言う結果になるか見せてもらおうか。
それに、我が召喚した魔物ではその魔力暴走の中に踏み込んでゆけぬしな。」
亡者の王は
愉快そうに魔物の進行を止め、
下がらせる。そして椅子の様なモノを
召喚し、ソウを見始めた。
「さあ、我に見せろ、なりそこないの
亡者となるか。できそこないの生者となるか。それかその狭間のどちらともつかない、紛い物となるか。」
ソウは痛みに苦しみながら。
魔術を維持するのに気が遠くなる
様な気分を律して。
ひたすらに痛みが引くのを待つ。
やがて、どれぐらい経ったのだろうか。
ソウは痛みが引いてくるのを感じ
薄っすらと眼を開き亡者の王を見る。すると亡者の王は愉快に笑い出し言い出した。
「そうか!そうなるのか!
くくく!、反逆者よ!貴様は亡者の特徴を持ちながら、生者の身体を維持するか!だが貴様の眼と髪は限りなく亡者と同一、そうか狭間のモノとなるか!」
亡者の王は
笑うだけ笑うと、ソウに指先を向け
魔術を発動する。
「面白いぞ、反逆者よ。我は気分が良いから今回の襲撃は見逃してやろう。そしたまた再び我の前に表れ復讐しに来い。反逆者よお前は今日から生者と亡者の狭間に位置するこの世界でも珍しい種族となる。」
「さらばだ。反逆者よ。」
ソウは薄れそうな意識の中
亡者の王の言葉を聞き
負けた事を知る。
そして自分が何処か別の場所に転移
させられる事も知った。
生魔反転により
身体の造りを大幅に変化させられた事を知り
ソウは項垂れながら転移させられる。
「不特定転移」
特定転移をワザと暴発させて使用する魔術により、ソウは姿を消した