1/1転移後、希望の消失。
頭に強い衝撃を受け
起き上がると、見慣れた街の
景色では無く木々が生い茂り
謎の声が響き渡っていた。
青年は暫く周囲を見渡した後に
惚けた顔で一言呟いた。
「……ここ、どこだ?」
周りを見れば木々で周囲が狭く観え
足元はぬかるみ、オマケに薄暗い。
極め付けはテレビでも聞いたことや
観たこともない植物や動物の鳴き声。
「取り敢えず、歩いてみるか。」
青年はそう呟き歩き出した
そして暫く歩いてる途中、拓けた場所に
出て、少し歩き疲れたので座り込んだ。
「ふう……にしても歩けど歩けど
森が続くな。」
にしてもホントに森が続くな、
果たして森の出口はどのくらい
歩けばつくんだろうか。
そんな事を考えながら
青年が休憩してると、青年が歩いて
来た方から爆音が聴こえてきた
「なんだ?」
青年は急に騒がしくなった方に
目を向けると、
そこにはローブを着た少年と
熊なのだけど大きさが桁違いの熊が
走って来ていた。
「はぁ!?なんだよ!」
青年は急いで立ち上がり逃げようと
するが、足がうまく動かず立ち上がれなかった。
そこに少年がこっちに気付き
少し険しい顔をして、
小声で何かを呟いた。
すると、追い掛けている熊が
突然何かにぶつかった様にして怯んだ。
少年はそのまま熊の様な生物から
距離を取り、青年の前まで来ると
話しかけてきた。
「ねえ、君は此処でなにしてるの?」
少年は矢継ぎ早にそのまま言った
「此処は魂の樹海だよ」
「君みたいな魔力は有るけど
魔力を練れない様な、魔術師の卵が
来る様な場所じゃ無いんだけど」
怪訝そうな顔をして少年は言い
更に言おうとした。
だが青年は怯んでいた熊の様な生物が
獰猛な顔をして此方を睨み付けて
いたので少年に言った。
「さっきのやつこっちみてるぞ!」
そう青年が言うと少年は後ろを
振り向き熊の様な生物を観ながら言った。
「まあいいや、取り敢えず
ヘルベアーを倒してから話しを聞くよ」
そう言いながら少年は
手を前に向け、一言呟いた。
「衝撃」
すると少年の身体が薄っすらと光り
その光りが掌に集まると透明の玉になり
ヘルベアーの方に飛び出した。
飛び出した透明の玉は真っ直ぐ
ヘルベアーの顔にぶつかり、巨体の熊は勢い良く吹っ飛んだ。
「すげぇ、あの熊が吹っ飛んだ」
青年は我を忘れて言うと少年は
呆れた様な顔をして言った。
「魔術を使ってるんだから当たり前でしょ、むしろ詠唱破棄でこの威力と練度の方を褒めてほしいよ。」
少し此方の方を見ながら
少年は呆れた顔をしかめっ面にして
言った。
「そんな事言われてもわかんねーよ
っておい!なんだあれ!?」
青年は少しふてくされながら
言い返すと、いつのまにか起き上がっていたヘルベアーの口に炎が収束してるのを見た。
少年は青年に促されて前を見ると
前に向けていた、手をいったん元に戻し
続けて手を再び前に向け
一言呟いた。
「守護」
少年がそう言うと
光りの粒がまた少年の身体から出て行き
今度は規則正しく上空から地面に向かって
並び、一際輝いたと思ったら
点と点の合間に薄い光りの壁が
できていた。
それを見越したかの様にヘルベアーの口から収束した炎がレーザーの様に飛んできて
少年のはった障壁にぶつかり相殺した。
そして、ヘルベアーの炎攻撃が終ると
少年は直ぐ様手を元に戻し
口元にもっていくと
そのまま詠唱を始めた。
「原初の光りの剣」
そう少年が言うと
ヘルベアーの上空周囲に光りの剣が無数に表れ突き刺すと、ヘルベアーは倒れこんだ。
「これで終り、なんてこと無い雑魚だね
さあ話しを聞かせてよ。」
少年は何て事無い様に言いながら
青年の方に振り返ると続けて言った。
「ところでさ、君ってもしかして異邦人?」
少年は一転してキラキラした顔で言った
そんな少年の顔をああ、年相応の顔だな
と思いながら答えた。
「異邦人の意味が解らないし、
てゆーかさっき言ってた魂の樹海って
なんだよ」
青年はしかめっ面で少年に聞いた
すると少年は的を得た様に言い出した
「じゃあ説明するよ」
少年は話し出した
此処は、七つ有る大陸の一つの
カーデル大陸って場所だよ
この大陸は未開拓の荒地や
前人未踏のダンジョンがあったりと
他の大陸と比べて原初の世界に近いんだ
あ、原初の世界って言うのはね
手短かに説明するけど
まだ人間種が繁栄する前の世界で
魔術と呼ばれる文化が発見される前の
世界の事を指すんだ。
その頃は今の世界と比べて
魔物と呼ばれている生物が世界を
牛耳していて、まあさっきみたいのやつの
遥かに強い奴が沢山いたんだけど
認識としては人間種が魔物に虐げられて
た時代の事を指すんだよ
僕等の種族、と言うよりまあ他の
種族もだけど人間種以外の種族は
それぞれ種族間で魔術が発達していたから問題はないんだけど。
で、話しがずれたけど
魂の樹海ってのは僕等の種族間では
有名でさ、魂の還る場所。魂の出ずる場所
そう言う意味合いが有って
僕等はこの場所を周期的に回ってるんだよ
なんか質問ある?
「カーデル大陸?魂の樹海?意味わかんねーし、家は何処だよ!」
わけも解らず青年が困惑していると
少年は困った様に言い出した。
「最初は、無知で無謀な魔術師の卵が
命知らずに森に踏み込んで来たのかと思ったけど、戦闘中に君の様子を見てたらそうじゃ無かったからさ、それに今の言葉で確信したけど……」
少年は少し悲しそうに顔を伏せ
残酷な言葉を言い放った。
「良い?、よく聞いて?」
そして少年は真っ直ぐ
困惑してる青年の眼を見て、
「ーーー此処は君の居た世界じゃない。正真正銘、君から見たら異世界のカーデル大陸の外れにある、人間種が定めた危険度Aランクの未開拓ダンジョンだよーーー」
少年の口から一縷の望みで有った希望が
打ち砕かれた、青年は放心した状態で
言った。
「なんだよ……カーデルって、魂の樹海って、異世界って、あいつは?、あいつはどうなる?、一緒に生きてきたんだ、これからも生きるっていったんだ、なのにどうしてだよ、何で俺なんだよ、」
青年は涙を流しながら
ポツリと呟いた
「やっぱり世界は残酷で理不尽だ」
そう言い、青年は崩れる様に
その場に倒れこんだ。
倒れこんだ青年を見ながら
少年は呟く。
「僕は、これで有ってたのかな」
青年を見るのを辞め、空を見る
辺りはもう暗くなり星々のみが照らす
闇の時間が世界を包んでいた。
少し話しがとびます。