29:脚を奪って、逃げられないように
前を歩くあなたを見て、ふと思った
何処でも自由に動くことの出来る脚が
もし無かったら、どうなるだろう?
もし脚を奪ったら、自由に動けるだろうか
手と体だけで這いずり回ることを
自由といえるだろうか
脚が無かったら、何処へも行けない
誰にも会えない
自由になることもない
だったら・・・・・・・・
私はあなたの脚を奪うよ
勝手に行かないように
離れていかないように
自由を奪って、逃げられないように
出逢いがあれば、別れもある
だから、別れがないようにしないと意味がない
私から逃げようとすることは
許されない行為なんだから
のこぎり、ナイフ・・・・
切断できるモノなら何でもいい
それであなたの脚を奪うことが出来るなら
なんて簡単なことなんだろう
逃げる前に奪うだけ
それだけで、幸せが手に入る
私だけが望む幸せが
あなたの脚を奪って、逃げられないように
どんな手を使ってでも
あなたをモノにする
それが、私の一つの仕事
遠ざかっていく音を何度も聞いた
離れていく姿を何度も見た
そして、逃げていく人を何度も知った
だから、あなたの脚を奪って
逃げられないようにしなくちゃいけなかった
幸せのためだけにする仕事
あなたは私から逃げられるの?
脚がないあなたは
一生、手と体で地を這いずり回り
私から逃げることはできない
奪うことで得ることが出来る。
幸せを得るための、仕事の一つ。