表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/30

27:瞳に映るのは『今』だけ





   カタカタと窓を鳴らす嫌な風

   灰色の空には、何もない

   ラジオから流れるニュース

   ヒトラーがまた、国を占領したという報告だった




   きっと、ここも危ない

   もうすぐ無くなってしまうだろう

   だから、ここを離れる

   何処へ逃げても、安全なところなんて無いけど

   生きるために逃げなくてはいけない




   家族と荷物をまとめて、家を出る

   火薬の匂いのする風が、通り過ぎていく

   バタン、と閉められた玄関

   もう、ここには帰ってこられない




   あなたともお別れ

   あの楽しい日々を思い出にして

   過去を振り返ることはない

   あなたはもう、過去の人だから




   公園で遊んだことも

   街で買い物をしたことも

   誕生会を祝ったのも

   一緒にクリスマスを過ごしたことも




   全部、過去のこと

   思い出にしなくてはいけない

   だから、思い出に置き換えて、時々思い出す

   それだけで、充分

   今までのこと、全部、覚えてるから




   二度と帰ることのないあの家

   バタン、と閉まった時の音は風に消されたのに

   妙に大きく、耳に届いていた

   家を振り返って、道に生えている草を掴み、風に流した

   思い出の場所にさようなら、と告げて




   過去のことは振り返らない

   瞳に映るのは『今』だけ







別れを告げた場所は、思い出の場所。

過去のことも、思い出になる。

だから、過去は振り返らない。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ