22:「所詮、この程度ってことでしょ?」
『鬼さんコチラ、手の鳴る方へ』
そう言ってからかうと、ソイツは怒りを露にした
なんて、単純なんだろう
走って、走って
曲がり角をいくつも通って
一つの細い路地に飛び込む
そして、追ってきたソイツを待ち伏せ
単純な奴だった
最初、出会ったときは、頭の良い奴だと思ってたけど
全然違った
はっきり言って、残念だった
『鬼さんコチラ、手の鳴る方へ』
小声で歌うと、つい笑みがこぼれる
わざわざ捕まりに行くような遊びの歌
だけど私は、捕まったりしない
だって、私がソイツを捕まえるんだから
『鬼さんコチラ、手の鳴る方へ』
鬼は私で、ソイツの足音を聞いて追いかけていく
ジャリッ、と砂を踏むを音がした
ソイツが路地に入ってきた音
そして、ソイツはこの世から消えた
私はため息をついた
『所詮、この程度ってことでしょ?』
何も聞こえないソイツに、私はそう言った
弱い奴は、強い奴に負ける。
だけど、たまに逆の場合がある。
それは、すごいことですか?




