表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんて骨体!  作者: 800
プロローグ
1/40

ロブグリエ死す

 何年か前に書き上げた小説です。

 どっか適当なコンテストに応募しようかと書いたものですが、結局ほったらかしになっていました。

 まぁ、一応書き上げたものなので、ここで日の目を見ることにしました。

 ややこしい話ではないので、適当に暇潰しにでも読んでみてください。

 草の根をかき分けつつ、男は森の中を進んでいた。

 木々が日の光を遮り、まだ昼間のはずなのに視界が悪い。

 これほどまでに日が入らないと、下草など伸びないはずなのだが、栄養がいいのか、歩くのに困難なほど茂っている。

 目的地まで道はあるのだが、これから敵地に向かおうというのに、正面の道から行くわけにも行かない。

 しかも、敵の方が数が多いのだ。だから少しでも有利にしようと、こうして気付かれないよう道無き道を進んでいるのだが……


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、


 大した速さで進んでいるわけではないが、既に疲労の色は濃く、息も荒い。

 森の中を歩くのに向いているとは到底思えない、フルプレートメイル装備に、祝福を受けた十字剣。背中に背負ったラージシールド。これならば確かに疲れはするだろうが、それだけではない。

 顔色は悪く、病気か、あるいは毒にやられたかのよう。もしくは、この森に満ちる瘴気の濃さに当てられたか。


「ぐふっ……」


 そして、その予想を肯定するかのよう、彼は何度目かの嘔吐を木の根本にぶちまけた。


「はぁ、はぁ、うぶ……」


 乱暴に口元を拭い、未だ意外なほど生気に満ちた目で前を見据えて歩き出す。

 この先に、魔族が住むとされる城がある。

 その真相は定かではないが、この近くでアンデッド・モンスターの類を見た、という証言は後を絶たない。

 その真相を確かめ、あるいは原因を排除するのが彼に与えられた職務なのだ。

 そして、その功績を持って、彼は聖騎士として認められることになる。


 その予定だったのだが……


 がくっ、とついに膝が落ちる。

 気力はともかく、体力は既に限界に達していた。

 睨みつけるその視線の先、森の切れ目から遠くにツタに覆われた古い小さな城が見える。


「く……そ……」


 魔の眷属のテリトリーは、これほどまでに人の進入を拒むのか……

 彼はそう思いつつ、木を掴んで辛うじて体を支えていた腕から力が抜けるのを感じた。


 ずる……


 ゆっくりと、倒れ伏し、草の中に埋もれる。

 ジメジメとした腐葉土に顔を突っ込んでいるが、それももはや気にはならない。

 というか、既に何かを感じたり、考えたりする余力は一片たりとも残ってはいなかった。


 ロブグリエ・バーツラフ。聖騎士見習い。ここに死す。享年24歳。

 ちーん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ