我儘娘
ただ木の枝に腰掛けてぼうっとしていると木漏れ日が心地よくまぶたが重くなってきた。抵抗せずにそのまま瞼を閉じる。
しかしすぐに眠りは妨げられた。
「そんなとこで寝たら危ないよ」
心配そうな顔でフクシアが身を乗り出してリュセの顔を覗き込んでいた。リュセの方からすると彼女のその体勢の方が危なっかしくて見てられない。
彼女がバランスを崩しても支えられるように持たれていた幹から体を起こした。
「フクシアがいつまでも拗ねてるからだろ。もう帰る? 」
「やだ、リュセだけ帰れば」
フクシアが勢いよく首を振るので案の定バランスを崩して落ちそうになったのを何とか支える。
「危ないのはそっち。日没も近いし早く帰ろう」
そのまま彼女を抱きかかえて木から降りようとしたがフクシアが抵抗したため二人揃って落ちてしまった。
なんとか自分が下になるように落ちた。そんなに高さがなかったため二人とも無事だったが、もう少し高かったら危なかっただろう。
「フクシア、大丈夫か? 」
自分の上でゆっくり起き上がるフクシアに問いかけると彼女は顔を赤くして素早くリュセの上から退いた。
「だ、大丈夫よ」
「よかった。でも木の上で暴れるんじゃない」
「リュセが急に降ろそうとするのが悪いんでしょ!? 」
「フクシアが帰ろうとしないからだろ! ほら早く帰らないと日が沈む」
焦りでイライラし始めた彼の語調は自然と強くなる。しかしそれはフクシアを煽る結果となった。
「だから先に帰ればいいじゃない!? 世話なんてしてくれなくてもいいわよっ」
フクシアがそう言い切ると同時にリュセの体が光に覆われた。光が強くて目が開けられず、光がおさまってからやっと開いたリュセの目が見たのは森の奥へと走り去るフクシアの姿だった。
急いで追いかけようと立ち上がったが、目線がいつもと違う。服もぶかぶかでだいぶ袖が余っている。
自分の姿を見下ろすとーー体が小さくなっていた。