願い
「僕の魔力をなくしてください」
ロークは願いを叶えてくれるという魔女に願いを告げた。
彼は紛れもなく人間だが、時々起こる先祖返りで微弱ではあるが魔力持って生まれた。
「ここまできて叶えたいことなの?」
言われた内容にはたいして驚かず、魔女は不思議そうに聞き返した。
「あって困るものではなさそうだけど」
「僕は親代わりの祖母と一緒に暮らしているんです。でも、僕の魔力のせいで"電気"が関わるものをすべて避けなければいけなくて……」
「なるほどね……」
そう言って魔女は黙って考え込んでしまった。
魔力は"電気"を壊してしまうが、それそのものだけに働くのではなく、"電気"が関わるもので作られたものさえも分解を始めてしまう。
なので魔力あるものは人間の居住区にはいることすら許されていない。
また、"電気"の関わりのあるものを完全に絶つことは難しく費用もかかるため魔力を持って生まれてしまった人間は追放されることが多かった。
ロークは祖母が郊外に住んでいたため追放されずに済み、祖母は彼を大切に育ててくれた。
「祖母が最近病気に患ってきっちりとした介護が必要なんです。でも僕は……」
「願いは叶えられるわ。でも、あなたのその"目"は見えなくなるわよ?」
「え……」
「あなたが今見てる世界はその目に集まる魔力で見ているの。あなた、実際にはっきりともののかたちを見たことがある?私の髪は何色かしら?」
ロークは呆然としてつぶやいた。
「わかり、ません……」
しばらく固まっていたが、やがてロークはあることに気づく。
「なら僕は今まで何を見ていたというんです」
「あなたが見てきたものは、生き物やものの持つ魔力や気配そのものよ。魔力を失って普通の人間のように見えるようになるかもしれないけど、全く見えなくなるかもしれないわ」
どうする?と問いかける魔女にロークはしばらく悩んで結論を出した。
「お願いします。この魔力をなくしてください」