進む先には
その日も、何一つ手掛かりは見つからなかった。
途中の川で水は補給でき、歩きながら食べられる確信のあるものは手に入れた。
ロークはまた取られては敵わないとしっかりと鞄をだきかかえて眠りに落ちた。
また長い一日が始まり、森をさまよい続けた。
薄暗い森を進むにつれて少しずつ明るくなっていくのはロークを励まし、さらに歩を進めた。
しかしその日はやけに暑く、木々の隙間から見える日が真上に登る頃には水が残りわずかになっていた。
まず水を手に入れなければと思いながらも進んでいくと、かすかに水の流れる音が聞こえた。
そちらの方向へ引き寄せられるように歩いていくと、急に明るくなりそれまであった木々の圧迫感が嘘のように消えた。
あたりは人の手がいれられているようだ。
期待に胸を膨らませていると、不意に背後の人の気配を感じた。
「あなたが今日のお客さんね?」
心地良いその女性の声に聞き惚れ、返事もできずに頷いた。
「こちらにどうぞ」
ロークの手を取り先導する彼女に従い歩きながら、彼女は魔女の弟子か何かであろうかと考えた。
魔族は長寿だと聞くがそれにしても彼女が齢300を超えるという魔女だとは思えない。
そんなに歩かないうちにロークはおそらく魔女の家と思われる所に招かれた。
進められるままに飲んだ紅茶は今まで飲んだどのものよりも美味しかった。
少し落ち着いたところでロークは魔女について尋ねた。
「噂の森の魔女はどこにいるんですか?」
クスッと笑う彼女の反応に何か変なことでも聞いたのかと焦ったが、続く言葉に驚いた。
「私がその魔女よ」
「え……。でも噂では齢300を超える魔女だと……」
「魔族は長寿なのよ。流石に300を超えると人間の中年くらいかしら?そのくらいの外見になるようだけど、私は150年くらい前から見た目が変わってないの」
到底信じられず、呆然としていたロークに彼女は証明だと彼の目の前で掌から火を出した。
熱気が彼の頬を撫でる。
「これでは納得できないかもしれないけど、こればかりは信じてもらわないと仕方ないわね」
ここまできて引き返すわけにはいかない。
まだ半信半疑ではあったが、願いを叶えてもらえるのであればなんでも良かった。
「どんな願いでも叶えてくれるんですよね⁉」
「もちろん。ここにこれた人ならね」
そう言って彼女はロークの言葉を促した。