森へ
小柄な少年ーーロークはある噂を頼りに迷いの森の前にやってきていた。
ーーこの森には齢300を超える魔女が住んでおり、どんな願いでも叶えるという。ただし、魔女と会うことができなければ一生その森をさまようことになるーー
街で耳にした噂。
生還した者は稀でほとんどの者は帰ってきていないらしい。
もちろん周囲の者たちは引き止めてくれた。しかし彼には切実なある願いがあった。
意を決してロークは森に一歩足を踏み入れた。
薄暗く不気味な森には生き物だけではなく、無数の妖精たちの気配も感じる。
食糧以外のものがほとんど入っていない鞄の紐を握りしめて慎重に足を進める。
時折ものかげで何かが動く音がするたびに体を強張らせながらもロークは前へ前へと歩を進めて行く。
日が落ちてきたところで運良く少し開けた場所に出たのでそこで一夜を過ごすことにした。
半日ほど薄暗い森の中を歩き続け、心身ともに疲れきっていたロークはすぐに眠りに落ちた。
日が登り始めた頃に、生き物の動く気配を感じて目を覚ました。
目の前の鞄がガサガサと中を漁るような音を立てていたので引き寄せてみると、驚いた動物か妖精かが一目散に逃げて行った。
嫌な予感がして中を見てみると持ってきていた保存食のほとんどが"消えて"いた。
食べこぼしたあとはなく、容器のもが残っているものがあるのをみると妖精の仕業のようだ。幸いなことに水は無事であったし、わずかだが食糧が残っていた。
「早く魔女のところにつかないと…」
そうつぶやいて呆然としていた自分を奮い立たせ、再びロークは行く先も知らない方へ歩き始めた。