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第六話 LD ②

 T字路を左折した先、まぶしいほどに漂白された通路の向こうから、銃弾が雨あられと降りかかってくる。通路の長さは今いる位置からおよそ百七十メートル、高さは四メートル、横幅は大の男三人分。その奥には二メートルほどの大きさの鉛色の自動ドア。そしてドアの前には執事五人とメイド三人。メイドは二丁拳銃、執事は突撃銃を持ち、容赦なく引き金を引いてくる。

 ジョナサンを潰した俺たちは、その後通路を通る度に執事やメイド連中の攻撃に出くわした。その通路の出口を守るかのようにそれぞれが方陣を組み銃を構え、俺たちに対して執拗に攻撃を繰り返してきたのだった。

「くそ、これじゃ近づきようがない」

 T字路中央の左折側の角に隠れながら、俺の前で背を屈めているダニエルが毒づく。ダニエルの後ろには気を失ったジョナサンがくずおれていた。この男には最短ルートを通って目的地に着くよう言い聞かせておいたが、今になって考えると頼らなかった方が良かったかもしれないとも思い始めていた。

「ああもドカドカ撃たれたら、いくらなんでも前に進めないぞ」

「このまま弾切れを待つか?」

「それもいいかもな。いや、そんなことしたらさっきのあいつみたいな奴が出てきたりするのか?」

 銃弾が壁や床を抉り、硬質な音を辺りに響かせる。しかし俺の言葉に対してそう返し首をひねったダニエルからは、この状況をまるで問題にしていないように見えた。

「随分余裕だな」

「あの程度の雑魚に後れを取るような僕じゃないさ」

「だったら速く行け。次はお前の番だ」

 そこで通路の向こうから投げ込まれた手榴弾が反対側のドアにぶつかり、派手な爆音と煙を撒き散らす。その巻き添えを食らい軽く咳き込みながらも、ダニエルは己のペースを崩さなかった。

「ええ?やだよ」

「ガキの様な声を出すな。弾丸より速く動けばいいだけだろう。出来る筈だ」

「面倒なんだよ。すごい神経使うし、疲れるし」

「いい加減にしろダニエル。速く行って来い」

「何で僕が行くこと前提になってるんだ?おかしいだろ」

「おい」

「それより君が行けばいいじゃないか。悪は許さないんだろ?」

 この野郎。サングラスの向こうからダニエルを睨みつける。傲岸不遜な悪め、お前から正義の道を教えてやろうか。本気で俺がそう思い始めた時、不意に通路の向こうが静かになった。

「……?」

「これは……」

 銃声が消えた。それまでやかましくがなりたてていた分、いざ収まるとその後来る静寂がより強く感じられた。わずかな残響も強く耳に響いてくる。

 それも無くなり、かわりに通路の向こうから乾いた靴音が響いてくる。音からして、四人。

「来るか?」

「こいつと同じ連中だろう」

 俺がそう言って気絶したジョナサンの額を叩くと、ダニエルが意地の悪い笑みを浮かべながら立ちあがった。

「わかったよ。僕が行ってくる」

「殊勝な心がけだ」

「少しは労ってくれよ……」

 リズムのずれた、複数の足音が大きくなっていく。ため息をもらしながら、平静を保ったままダニエルが角から躍り出た。

「さ、来いよ」

 足音が鳴りやんだ。


 遮るように目の前に現れた一人のダニエルとかいう男を見て、執事二人とメイド二人は失笑と軽い屈辱を覚えた。

 たった一人で何が出来る?思わず口元を緩めると、それに気付いたのか、男が左手をこちらに伸ばし、指だけを曲げて手招きをしてくる。それが四人の逆鱗に触れたのは言うまでも無かった。

「上等だ」

「ミンチにしてやる」

 執事二人が正面から男に飛びかかり、メイドが斜めに飛び上がって壁を蹴り、左右から挟み撃ちにするよう襲いかかる。執事の手にはナイフ、メイドには拳銃が両手に一丁ずつ握られていた。

 先に男に牙をむいたのはメイド二人だった。握りしめた銃把のはみ出した部分を使い、ほぼ同じタイミングで左右の鎖骨めがけて殴りかかる。

 しかしダニエルは余裕の表情で一歩飛びのいてそれをかわす。そして最初の一撃をかわされたメイド二人は、両手と片膝をついてその場に跪く格好になった。二人が跪くと同時に、今度は執事二人がメイドを飛び越えて猛然とダニエルに襲いかかる。

「なんて連携だ。隙が無い」

 ダニエルが呟く。執事二人が同じスピード、同じタイミングでダニエルの左右の首筋へとナイフを伸ばす。

「躊躇も無い」

 二本の刃が左右の首筋に同時に触れようとした刹那、ダニエルが両手を伸ばしてそれぞれのナイフを持った腕を掴む。

 間髪をいれずにメイドが上方から二人同時に襲いかかる。

「まるで機械だな!」

 ダニエルがそう叫ぶと、執事の腕を掴んだまま、ダニエルが両腕を高々と掲げた。そして上半身をわずかに後ろに反らす。

「しま……!」

 ダニエルが何をしようとしているのか、ここでメイドが気付いた。しかし今更減速も出来ない。

「シャラアアアァァ!」

 ダニエルが勢いよく腕を振り下ろす。

 自らの懐に飛びかかってくるメイドめがけて、ハンマーと化した執事がその背中から直撃する。

 自身の体重にダニエルの腕力。

 四人の意識が刈られるのは造作も無かった。


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