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第五話 ビヨンドザソード ⑦

「――随分薄情なんだな」

 腹に食い込ませている右腕にかかる重みが急激に増していくのを感じながら、ジョナサンが首だけ振りかえらせてダニエルに言った。ゴードンはピクリとも動かない。

 だがダニエルは挑発まがいのセリフを受けても、飛んできた破片が全身に当っても、自身のポーズを崩すことはなかった。友人の惨状を前にしても顔色一つ変えずに、ダニエルがジョナサンに言った。

「まあ、巻き添えを食うのはごめんだからね」

「お前本当にヒーローかよ?お友達の命より自分の方が大切だってのか?」

 腕を解き、肩をすくめながらダニエルが言い返す。

「ああ、まあ、加勢したいのは山々なんだが、その」

「言い訳たあ見苦しいぜ。素直に俺が怖いって言えばいいじゃねえか。スッキリするぜ?」

「話は最後まで聞けって」

 自分の台詞に割って入るジョナサンを制しながら、ダニエルが腰に手を当てて言った。

「僕だって加勢したいさ。本当さ。仲間のピンチは助けたい。でも、そのさ」

 不意に手首を圧迫されるような鈍い痛みを感じ、ジョナサンが顔をしかめた。

「途中で横槍いれて、巻き添え食らいたくないからね」

 背後で砂利がこぼれ落ちる音。危険を感じ向き直ったジョナサンの細首を、ゴードンが右手で締め上げる。

「――ッ!」

「……」

「……が……え……?」

 死んだ男の手が、鉤爪のように喉に食い込む。ジョナサンは発声はおろか、満足に呼吸も出来なかった。やがて腹からジョナサンの腕が離れ、ゴードンが両足で着地する。反対に今度は、ジョナサンが首に食い込む右腕一本で持ち上げられた格好になっていた。予想外の出来事に、ジョナサンはまともな思考が出来なくなっていた。

「目には目をだ」

 ゴードンが絶対零度の戦慄を与える語調で静かに言い放つ。そして右手を大きく振りかぶり、口を開きかけたジョナサンの頭を頭頂部から壁に激突させた。咄嗟にダニエルが腕で目を覆う。

 鬱憤を晴らすように、何度も何度もぶち当てる。悲鳴が衝撃音でかき消される。

「……あいつの攻撃、容赦ないから」

 苦々しげにダニエルが呟く。それを聞いたゴードンが、右手に持った物体を引きずりながら冷ややかに言った。

「無駄だ。奴はもう終わりだ。何も聞こえん」

「殺したのか?」

「まさか」

 ジョナサンの顔は頭頂部から流れる血で真っ赤になっていた。その首を掴んで持ち上げながら、ゴードンがジョナサンにも聞こえるように言った。

「こいつにはまだまだ使い道がある」


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