第一話 朝の風景
俺とアイツは、いわゆる幼馴染の関係だ。
幼稚園、中学校、高校の現在にいたるまで、ずーっといっしょ。
そして俺はアイツのことが大好きだ。likeではなくloveの意味で。
少女漫画でよくありそうな環境だが、ちょっとした…いや、かなり致命的な問題がある。
俺、田中翔太 性別 男。俺の想い人、瀬戸大河 性別 男。
残念だ、とても残念だ。神様、もう少しどうにかできなかったのでしょうか?
ある日、目覚めたら突然女の体になっていましたなんて、奇跡的展開を望むあまりに
朝起きるとまず、股間と胸を確認するというあまりにも馬鹿馬鹿しい習慣が出来てしまったのは、
俺だけの秘密だ。
今朝もこの空しい習慣を終え、リビングに降りて行くとそこには俺の想い人が優雅にコーヒーを飲んでいた。
「やっと起きてきたか、この寝ぼすけ」
「…まだ全然時間大丈夫じゃん。大河が早すぎるんだよ」
朝一番に大河の顔を見れたことに少し浮かれながら俺はそう答えた。
「翔太が言い出したんだろう、クラス発表きっと混むだろうから少し早めに行こうって。
忘れたのか?」
「あー。そうだったそうだった。ゴメンうっかりしてた」
「いいから早く顔洗ってこいよ。朝飯一緒に食おうぜ」
「りょうかーい」
少し呆れた顔をした大河に促されるままに俺は洗面所に向かった。
俺が身支度を整えて、リビングに戻るとすでに二人分の朝食の用意がされていた。
「あれ?そういえば母さんたちは?」
「おじさんもおばさんも、俺が来るのと入れ違いで出かけた。
要と翼は俺の家でまだ寝てる」
「結局、翼のやつ昨日泊ったんだ」
「ああ。かなり遅くまでゲームで盛り上がってたみたいだぞ」
要に負けたのがくやしくて、勝つまでやるんだとか言ってたっけ
普段は生意気な弟だが、結果的に大河と二人きりで朝の時間を
過ごせてるんだから、翼に感謝だな。
「負けず嫌いだからな、翼は」
「要も似たようなもんだから、かなり遅くまで延々とやってたみたいだな」
焼きたてのトーストをかじりながら、大河と他愛もない話をするなんて幸せな時間だろうか。
「また、同じクラスになれるといいな」
だが、この大河の一言で、俺は今日という日の重要性を再認識させられた。
そうだった、今日から2年の新学期、それすなわちクラス替えを意味するのだ。
1年のときは幸運にも大河と同じクラスになることができたのだが、問題はこの2年のクラス替えだ。
俺も大河も文系のクラスを選択したから、当然同じクラスになる可能性はある。
1年の時と違い、文系3クラスと理系2クラスに分かれるから、1年の時より同じクラスになる確率は当然高くなる。
だがしかし、この2年生のクラスは卒業まで変わらない。3年ではクラス替えがないのだ。
ここで大河とクラスが離れてしまうと、卒業まで離れ離れになってしまう。
それはあまりにも悲しすぎる。悲劇的な展開だ。それだけはなんとしても避けたい。
更に修学旅行も控えているのだから、このクラス替えはまさに運命の分かれ道。
天国か地獄か、DEAD OR ALLIVE なのだ。
「おい、翔太聞いてんのか。なにぼけっとしてるんだよ」
「あ、ああ聞いてるよ。そうだな一緒のクラスになれるといいな」
俺は重い決意を抱きながらそう答えたのだった。