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鷹虎と凛

「こんな所にいらしたのですね。探しましたよ鷹虎様、お凛様。姫がお呼びです」



朝焼けの海が見える岸壁に筋骨隆々の身の丈2メートルはある大男が胡坐をかいて

座っている。男の名は”北條鷹虎”

そして男の隣で木に寄りかかる目つきの鋭い長い黒髪の美女は”御船凛”だ。

まるで美女と野獣といった見た目二人だが、不思議と絵になる二人だった。


二人に声を掛けたのは姫殿下付きの背の低い童顔な小姓”弥助”だ。

だが声を掛けても全く返事の無く、遠く海原の先にある島の方を見て佇んでいる。

弥助は二人の視線の先が気になり自身もそちらの方向を見てみるが

島は遠くここからではぼんやりとした輪郭しか確認できなかった。


「お二人とも何を見ているんです?あの島に何かあるんですか?」

「お前には見えないのか?弥助。あの島の先端、わずかに黒い船の穂先が見えてやがる」


「黒い船って・・・まさか!?帝国の黒船!?もう我が国の目と鼻の先に?」


「ああ、この佐神ノ國に怪しげな船影がうろついてると馴染みの漁師から

連絡を受け来てみれば、あの蛮族共あの島を足掛かりにこの海岸に上陸しよう

って魂胆らしい。大方あの無人の孤島に物資を運び込んでいるに違いないだろう」


「あの島の影に少なくとも100隻以上の船が隠れている可能性があるわ」

「100・・・・大船団じゃあないですか・・・・」


「早めに叩かないと上陸されたら民に犠牲が出るだろうな。それで姫が俺様を

呼んでいるって?ようやく重い腰を上げる気になったのか?」


「はい、隣国ビザンツが落ちました。それを受けこちらから打って出る

おつもりのようです。ただここに大船団が集結しつつあるのであれば

一刻も早くこの事を姫様にお伝えしなければ!」

「ビザンツが!?それはまことか?」


コクリと頷く真剣な表情の弥助に本当に友好国であった盟友ビザンツが

陥落したのだと鷹虎は落胆した。

実のところ、あの島に怪しい船が発見した時点で鷹虎はこの事を危惧していた。

何故なら交易船であろうが軍船であろうが、ビザンツの海峡を通過しなくては

地形的にこの国に侵入する事は不可能なのだ。

それが易々と侵入を許したということは・・・なのである。


「王は?ビザンツ王はどうなったのだ?ビザンツ正龍騎士団は?」

「申し訳ありません。そこまでは・・・」


「ふー・・・凛!急ぎ城に戻るぞ!シンザンを呼べ!」「はいはい」


凛が指笛をピ───────っと空に向かって吹くと雲の隙間から

超大型の空を駆ける雷を纏った魔獣が途轍もないスピードで姿を現した。

猿の顔に虎の体、尻尾に三又の蛇を従えた6メートルはあろうかという獣

幻獣『鵺』だ

二人はその幻獣に飛び乗るとあっという間に天高く飛び去ってしまった。

・・・・弥助を置いて。


「ちょっっ!!置いてかないで下さいよ!もう!鷹虎さまーーー!!」

弥助の叫びは潮風の吹く夏の朝の空に虚しく木霊こだまするのだった。



──その日の正午過ぎ二人は首都『千間楼』を訪れていた。


巨大な鵺で街中を飛び回る事はこの都では禁じられているので

二人は手近な広場に降り立ちそこからは徒歩で城に向かう事になった。


二人が最後にこの都市を離れてから実に九年の月日が流れており久々の

その変わらぬ街並みに凛は昔の思い出が胸を過る。

『千本長屋』と呼ばれる家が区画ごとに整然と並び、道にはゴミ一つ

落ちてない美しい町並み。何も変わっていない。

町を歩く二人を確認すると町人達が深々とお辞儀をして彼らを出迎える。

今や自由人である凛に取ってこの対応は些か居心地悪くもあったが

それもまた懐かしかった。


そんな凛に対して鷹虎は気にする風でも、懐かしむ様子も無く

その巨体を揺らしながら不機嫌そうにノッシノッシと肩で風を切り

城に向かって歩みを進めている。

この男は九年ぶりに帰ったと言うのに何も変わらないなと凛は内心呆れていた。


そうして寄り道する事も無く二人は姫殿下の待つ城の前まで来た。

聳え立つ荘厳な城、その門は巨大で『源城・千花大楼殿』と門扉の横の

城名看板に達筆な字で書かれている。

千花と城名にあるように城の壁面には色とりどりの雅な花がびっしりと

咲き乱れ、この国にしか咲かない木『櫻』と呼ばれる薄桃色の花を

咲かせた木も城の庭園のそこかしこに植えられている。


「相変らず過度に派手な城だな。風情も何もあったものでは無い」

「あら、私は好きよ。姫様の趣味」

「けっこれだから侘び寂びのわからん奴は・・・」


「北條鷹虎様、御船凛様!お待ちしておりました殿下がお待ちです。開門!!」


門を守っている守衛たちは彼らを見るなりそう言うと巨大な門扉が

ゴンゴンゴンゴンと音を立てながら開いた。

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